はじめての…
いつも読みに来ていだだいて、ありがとうございます。
それはレインハルト様に突き飛ばされるイジメがバレてしまった2日後だった。
いつものようにエルマとおしゃべりしながら廊下を歩いていたら、いつものように後ろから突き飛ばされて、情けなく床にべちょっと潰れたカエルのようにのびていると、すぐさまいつもと違う声がした。
「あなた、私は見たわよ。あなたがローレライ様を突き飛ばす所を。」
と、勇ましい女性の声。
のろのろと起き上がって見てみると、見知らぬ女生徒が3人連れの中の一人の女性の腕をつかみ上げていた。
「なっ、なんの事ですの、知りませんわ。その女が勝手に転んだだけでしょう。手を離して下さい。」
腕をつかまれた女性はふてぶてしく返す。しかし、
「残念ながら、私もしっかり見た。君が突き飛ばしていたところをね。」
と、やってきたのはレインハルト様だった。
「君、フレイヤの取巻きの1人だね。仲間の2人もそうだね。見覚えがあるよ。」
途端に取巻き令嬢達の表情が青くなり無言になる。
「よくも私のロリーにこんな事をしてくれたね。今までのも君達の仕業だろう?
誰の差し金だ?素直に話せ。」
「ち、ちょっと魔が差しただけですわ。今までのなんて知りませんし、誰かの差し金でもありませんわ。」
レインハルト様の表情が氷の表情になる
「ふうん、嘘はつかない方がいいよ。この後でしっかり先生を交えて話しを聞かせてもらうけど、もし、それがウソだったら、君達は私、ヴァイスリヒト家に嘘をついたことになるし、ヴァイスリヒト家の婚約者に害を与えた人物となるのだからね。ヴァイスリヒト侯爵家家を敵に回して、君達の家が無事であると思うなよ?」
3人の令嬢達は青ざめてふるえ出した。
たまらず腕をつかまれた令嬢が泣きながら謝り出した。
「も、申し訳ありません。今までのも私達です。でも、私1人がやったわけじゃありません。3人で交代でやってたんです。」
「ち、ちょつと何を言い出すのよ!私達まで巻き込まないで!」
隣の2人が慌てて否定する。
「何よ、私1人に罪を被せる気?ズルいわよ。あなた達だって喜んでやってたじゃない。」
ちょっと収拾のつかない仲間割れに発展しだした。
「その辺も職員室でゆっくり聞かせてもらおう。そんな事より、一体誰の差し金だ。」
レインハルト様が氷の目で問い詰める。怖い。私に対して怒っているわけではないけれど、そばにいるだけで怖い。
3人組もすっかり縮こまってしまい、諦めたように小声でつぶやく。
「フレイヤ様です。フレイヤ·フォン·ヴァーグナー様に頼まれてやりました。」
ああ、やっぱりね。
3人は犯行現場をおさえた女生徒と、エミール様に連れられて行った。ただではすまないだろう。ヴァーグナー侯爵家の娘に頼まれれば、断れないというのもあっただろう。お取り巻きだしね。
でも同情しないよ。私も痛かったもん。
放課後、いつものように勉強会をしながら事の顛末をレインハルト様に聞いた。
なんでも犯行現場をおさえてくれた女生徒は騎士科の生徒で、卒業したらヴァイスリヒト家に仕える予定の女生徒なんだって。レインハルト様がそばについていると犯行は行われないので、
レインハルト様が彼女に頼んで、昨日から私のそばについていてくれていたそうな。
相手もついているのが女性なら油断するだろうって。でも心配だから、レインハルト様も離れた所から可能な限りずっと見守ってくれていたそうな。
そして彼女達は2週間の停学処分が下ったそうだ。フレイヤ様、2週間もお取り巻き3人がいなくなる事になり、怒るだろうなあー。
フレイヤ様も学院からは厳重注意が、ヴァイスリヒト家からヴァーグナー家には抗議が送られる事になった。しかし、フレイヤ様はもちろん『私は指示していない。濡れ衣よ。知らないわ。』とふんぞり返っていたとかいないとか。やれやれだ。これで完全に平和になるとは、とても思えない。
だが、とりあえずの危機は去った。レインハルト様ありがとうございます。心の中で手を合わせる。
……、違うよ!心の中でだけじゃダメだよ。ハンカチの刺繍も出来たじゃない。
女は度胸、勇気を出せ。今だよ。
よしっ、と、手をギュッと握りしめ立ち上がる。
「レイン、今回の事、本当にありがとう。
ううん、今回だけじゃなくて、いつもたくさんありがとう。
私もレインの事が好きです。レインの事をとても大切に思います。
…これ、良かったら受け取って下さい。」
勇気をしぼり出したけど、声が震える。
震える手でハンカチを差し出す。
「え?え?うん。え?」
見る間にレインハルト様の顔が赤くなる。
「好き?ロリーも僕の事が好き?そして僕の事が大切!?
本当に、夢じゃなくて?」
ふふふ、なんかかわいいかも。
「はい、ちゃんと好きですよ。そしてとても大切な人です。
そしてハンカチ、受け取って下さいな。」
と、改めてハンカチを差し出す。
ハンカチを受け取るレインハルト様の手も震えている。
「あ、うちの家紋だ。もしかしてロリーが刺繍してくれたの?」
「はい、そうですよ。」
ガバリとレインハルト様も立ち上がり私に抱きつく。
「どうしよう。嬉しい。すごく嬉しい。」
その金色の瞳が潤んでいる。
「ロリー、愛している。」
ふいに潤んだ金色が近づいてくる。
あっ、と思った時には唇に温かくて柔らかいものが触れた。
思わず目を閉じる。
そして2度、3度と、ついばむようなキスが続いた。
初めてのキスだ。身体中が熱くなる。
キスのあともしばらくギュウギュウに抱きしめられた。
いやー、いいんだけどね、ここ、カフェテリアですよ。
公衆の面前ですよ。レインハルト様、完全に忘れてますよね。
心の隅で冷静な私が突っ込みを入れる。
いやあねえ、中身アラフォーのオバサンはこれだから。
「忘れてないよ。わざとやったんだよ。
みんなにちゃんとわからせないとね。」
とか後で言ってたけど、絶対嘘だ。
今回は甘々シーンでした。
楽しく書けました。




