レインハルト・フォン·ヴァイスリヒト③
いつも読みに来ていただいて、ありがとうございます。
なんか、思ったよりレインハルト視点が長引きましたが、
とりあえず今回で一段落です。
気を失った彼女を保健室まで運び、そばに付き添った。
医師が言うには疲れているだけよようだとの事で安心する。
すると突然、彼女は
「幸せな結婚カモーン!」
と、腕を振り上げて目を覚ました。
ブッ、何それ、さっきの『うぴょっ』といい、面白すぎる。ローレライ様にはこんな楽しい一面もあるのだなと頬が緩む。と、すぐにハッと気づく。
いけない、いけない。私のだらしない顔を見られて告白する前に幻滅されては大変だと焦る。
でも、面白すぎる。『くくく』笑顔をこらえて顔をしかめる。うん、なんとか誤魔化せそうだ。でも腹筋が痛い。
本当は今すぐにでも告白したい。だけど、彼女は体調が悪そうだし、今ではないよな。ぐっとこらえる。
そして彼女を女子寮まで送ってゆく。と、いうかまた抱き上げて連れて行ったのだが。
だって、体調悪そうなのに歩かせられないだろう。
と、いうのは建前で、本当はただ単に私がまた彼女を抱きしめたかったからだ。
温かくて、柔らかくて、いい香りがして、一度これを知ってしまったら、もう手放せなそうにない。我慢なんてできない。抱っこだけで我慢した自分を褒めてあげたいくらいだ。
彼女と別れたあとで保健室での事を思い出す。
『幸せな結婚カモーン』か。彼女は幸せな結婚を願っているのだな。
したい。ローレライ様と幸せな結婚したい。
いや、自分が彼女を幸せにしてあげるんだ。
もう、ヘタレている場合ではない。強く思う。
しかし今は金曜日の夕方。次に彼女に会えるのは月曜日かあ。
最高潮に盛りあがっている自分を月曜日までなだめなければな。
高揚したような、しかし、少し寂しい気分を抱えながら帰路についた。
◆◆◆◆◆
翌日、家から任されている仕事をするために馬車で街へ行く。
途中何気に見た外にローレライ様が『仕事斡旋所』に入ってゆくのが目に入る。
あそこは平民向けの斡旋所。子爵令嬢の彼女が何故?という疑問と
昨日の今日でまたローレライ様に会える。という期待とで、すぐに馬車を止めさせて降り、斡旋所に向かう。
斡旋所に入って、しばらく彼女の様子をうかがってみると、随分熱心に仕事募集の紙をながめていた。
それから受け付けに仕事をもらいに行く。
受付嬢の態度からローレライ様は常連のようだった。ハーゲン家はそんなに困窮していたのだろうか?
しかし、学院に通えるだけの余裕はあるはずなのだが?学院に通うのも結構なお金ガ必要なはずだ。
などと考えていると、一人の男がローレライ様に近寄ってきた。
パッと見た目は人の良さそうな笑顔を作っている善良そうな男だが、早くから家の仕事の一部を任され、多数の人間と関わってきたので僕には分かる。アイツは危ない。絶対に変な事を考えて近寄っている。
すぐにローレライ様をかばうような位置に移動して、男から彼女を隠す。
よく見ると、男はローレライ様の体を舐め回すように見ているではないか。怒りで頭ガ沸騰しそうだった。
こんな所に1秒たりともローレライ様を置いてはおけない。すぐさま彼女を斡旋所から連れ出した。
だが、彼女は困ったようにしている。まだ他に用事もあるのだと言う。
今日は僕ももう仕事に行かねばならない。明日、明日なら付き添える。彼女を一人にはしておけない。
すると彼女も明日、一緒でいいと応えてくれたので安心してタウンハウスまで送った。
◆◆◆◆
翌日、街歩き用に簡素な服装をした彼女は、素敵だった。服の簡素さが、彼女の魅力をこれでもかと引き立てている。さらさらストレートの青味がかった美しい銀髪。キラキラ輝くアイスブルーの瞳、世の流行りの華奢ではない豊満な体。でも引き締まる所はちゃんと引き締まっている。彼女の全てが輝いて見える。
今日、絶対に今日、告白するんだ。決意をあらたにぐっとと手を握りしめる。
話しを聞くと、病気の母親の薬代の為に内職をしているという。
そんな苦労をしているというのにおくびにも出さず、学院では明るく振る舞っていた。もちろん、成績も首位をキープしている。芯の強い人なのだな。惚れ直してしまう。
そんな彼女の為に僕が出来る事は…これしかない。
「婚約して下さい。」
考えるより先に言葉ガ出た。告白から暴走して婚約をお願いしてしまった。もう、想いがあふれて出て止まらない。
でも、ここまできたら絶対に受けて欲しい。もう、あとには引けない。だって愛しているんだ。
『お願い』心の中で拝み倒していると、奇跡的に受けてもらえた。
彼女が今の僕と同じ熱量ではないのは明らかだが、今はそれでもいい。これからたっぷり愛そう。おぼれるくらいに。
婚約を受けてもらえた。それだけで天にも昇る気分だ。16年間生きてきて、今が一番幸せだ。
おととい、父母に無理を言って婚約の書類を用意してもらっておいて本当に良かった。早くこれを提出して、もう後戻りできないようにするんだ。気がはやる。
書類にサインをもらうため、ローレライ様の母に会った。ローレライ様と同じ青味がかった銀髪にアイスブルーの瞳。同じたれ目がちな目。ローレライ様は母親に瓜二つの美人だった。
そして、かなり辛そうだった。笑顔が痛々しかった。
ヴァイスリヒト家との婚約で、ハーゲン家に公然と援助ができる。それでローレライ様が内職しなくても済むと思ったのだが、彼女は考えさせて欲しいと言う。
なんとなくそう言われそうな気もしていた。でも、僕にも頼って欲しい。
この初めてもらったプレゼントの紐のように、青と黄色の石が一つの紐になっているように、あなたと私はもう一つなのだから。
これからは僕が彼女を守る。彼女を支える。そして愛そう。
そう自分に誓った。




