レインハルト・フォン·ヴァイスリヒト②
いつも読みに来ていただいて、ありがとうございます。
レインハルト視点その②です。
私はレインハルト・フォン·ヴァイスリヒト16才ヴァイスリヒト侯爵家の嫡男。成人したてだ。
私には年の離れた姉2人と妹一人がいるのだが、これがまあなんというのか、ウザい。
姉妹達はしょっちゅう『お茶会ごっこ』なる遊びをしていて、それ自体は構わないのだが、何故か必ず私を巻き込む。姉達は淑女らしくとツーンとして、ニコリともせずにいながらこう言う。
「あなたは女性をエスコートして、女性を楽しませなければならないのよ。さあ、私達をどうやって楽しませるの?」
そんなの知るか!
渋々エスコートしても、エスコートの仕方にも細々と文句をつけるわ、
何か話せと言うので話せば『つまらないわ。もっと楽しい話題にしなさい。』と凄む。
しまいには、男は見目麗しくないといけないわ。そんな髪型じゃだめよ。と、勝手に髪を切らせられる。私には髪型を選ぶ自由もなかった。
「ほら、ここで笑うのよ。もっと魅力的に、優しい笑顔で。」
お前達に優しい笑顔なんか作れるかよ。
結局、笑顔が作れないと、
「あなたの笑顔、壊滅的にダメねえ。そんな笑顔を向けるのは女性に失礼よ。」
と、散々言われた。姉妹達の言う事なんて信用していなかったが、小さい頃から笑顔がだらしない。ダメだとダメ出しをされ続けたお陰で、いつしか自分の笑顔に自身がなくなっていった。
女性に私の笑顔を向けてはいけない。大体あいつらに笑顔なんか向けたくない。
世の貴族の女性なんて、みんな姉妹達と大して変わらないように見えた。
プライドばっかり高くて、笑顔は貼り付けたような作り笑顔で、何かと男性に求めてくるばかり。
王立学院に入学してからも、寄ってくる女は姉妹達同様に私が何をしてくれるのか、何を話してくれるのかと値踏みする、期待する視線で見てくる。全部男任せだ。辟易する。
いつしか私は氷の君と呼ばれるようになり、あまり女性に絡まれなくなっていった。平和でいい事だ。
そんな風に女性に対しては距離感のあった私だが、例外があった。ローレライ·フォン·ハーゲンその人だ。
入学式で初めて彼女を見かけた時、彼女は友人と笑顔で笑い合っていた。その笑顔が姉妹達や他の貴族女性とは全く違って、心から楽しくて笑っているのが良く分かる笑顔だった。
そしてそのアイスブルーの瞳はいつもキラキラ輝いていた。
その笑顔と瞳に私の心は撃ち抜かれてしまった。
彼女しかいない。彼女がいい。
幼少の頃から散々、姉妹達に教え込まれた甘い言葉。今までは現実にそんな言葉をかけたくなるような女性に出会わなかったが、彼女にはささやきたい。しかし、いきなりそんな言葉をささやいてドン引かれされないだろうか?そして、どの言葉から話せばいいのか、いざと話そうと決心しても言葉ガ上手く出てこない。
2年間、彼女と同じクラスだった。最終学年の今年も幸いな事に同じクラスだった。
だのに、ついぞ彼女に声をかける勇気が出なかった。
いっそ、婚約を申し込みたい。しかし、彼女は子爵家。侯爵家から婚約の申し込みが来たら、受けざるを得なくなるだろう。そんな形で彼女と結ばれたくない。
今年こそ、今年こそ、なんとか彼女と接点を持ち、話しかけ、私の気持ちを知ってもらって、お付き合いをしていただきたい。
そんな私を友人のエミールは『ヘタレ』と呼ぶ。認めざるを得ない。
しかし、ヘタレでもやる時はやる。
ローレライ様は笑顔もキラキラの瞳も魅力的だが、その豊満な体に目が釘付けになる男どもも多数いた。
やめろ、そんな目で彼女を見るな!
ローレライ様の魅力は笑顔だけじゃない、体な訳でもない。2年間連続学年首席でとても優秀なのに、それをひけらかす事も鼻にかける事もない。侯爵家嫡男として恥ずかしくないよう私も首席目指して頑張って勉強しているのだが、どうやっても彼女にはかなわない。テストでたまに私も1位を取れる事ガあるが、勝率は2割だ。
そして、立ち居振る舞いも、とても子爵家とは思えない程、優美なのだ。実は公爵家出身でしたと言われても納得するくらいのレベルだ。よほど小さい頃から厳しくしつけられていないと、あれだけの所作にはならない。
キラキラの瞳、学年首席の優秀さ、そして所作の美しさ。ローレライ様、女神だろう。
そんか彼女に想いを寄せる男は私だけではなく何人もいた。私と同じ瞳に熱を持っているのですぐ分かる。
嫌だ。ローレライ様を他の男に渡したくない。
私は迷わず侯爵家の権力も使って、そんな男どもの心を陰から折ってきた。
『ヘタレのくせにやる事エグっ』とエミールにドン引かれたが、これだけは譲れない。
そこまでましたのだ、今年こそローレライ様に声をかけて、なんとしてもお付き合いに持ち込みたい。と、最近の私は思い詰めていた。
そんな折、廊下を歩いていたら突然、彼女が私の胸に飛び込んできてくれてた。
彼女は私に抱きついて、私の顔を見て『うぴょっ』て言って気を失った。
うぴょって何?そんな言葉をかけられたのは初めてだよ。面白すぎる。思わず笑いがこみ上げてくるが、ハッと思い出す。私の笑顔はよくないと。必死に笑いをこらえる。
それから私は慌てた。具合が悪いのなら大変だと。迷わずすぐに抱き上げた。
やわらかくて、温かくて、何やらいい匂いもする。最高の抱き心地に心臓がはねる。
ああ、これを知ってしまったら、もう我慢なんて出来ない。ヘタレなんかどっかにふっ飛ばされた。
告白しよう。そして、絶対に受けてもらうんだ。その為なら土下座しても構わない。
エミールはそんな私を見て『ヘタレから暴走に変わった』と呆れていた。
呆れられてもいい、言葉も飾れなくていい。真っ直ぐに想いを伝えよう。
そう、深く決心したのだった。




