おまけ:お忍びの村娘
なにかしら。妙に汚く見える人がいるわね。あっちの人は特に醜いわ。
というか、容姿はふつうなのよ。それなのに、どうしてだか汚く感じるのよね。
……違うわ。みんなよ。人がみんな汚く感じるのだわ。どういうことよ。これもガーゴ様のお力なのかしら。
アルフは…… いつもどおりね。というか、とっても優しくて温かい雰囲気に包まれて見えるわよ。動物も変わっていないわ。
一体あたしには、なにが見えているのよ。ガルマさんは、ガーゴ様の影響については説明してくださらなかったわ。あたしが考えるべきことなのよね。
でもどうしてなのかしら、答えを知りたくないわ。恐ろしい答えになりそうな気がするというか……
しばらくは気にしないほうがよさそうね。機会が訪れるまでは様子を見るわよ。
町に着いたわ。いつもなら嬉しいところよ。でも今回ばかりは緊張するわね。ティアラを隠さずに、大勢の人前に出るのよ。
もともと魅了の問題があったから隠していたのよね。おまけに魅力は増幅されているであろう状況なのよ。どれだけの迷惑をかけてしまうのやら想像がつかないわ。
道中で、すれ違った人々が魅了された様子はなかったのよ。
見惚れたように呆然とする人や、拝みだす人や、怯えていそうな人はいたわね。でも、自我を失ったような様子はなかったわ。
ガーゴ様のおっしゃるとおりなのかしら。宝石に魅了されても、われに返るほどの威圧感があるのかもしれないわ。
まずは、町の入口の警備兵の様子を……
こっちを見ていないわ。緊張して目を逸らしているみたいね。まるで、ガルマさんに気づいた人の反応みたいよ。
「ハァ。ガルマさんの気持ちが少しだけ、わかるような気がするわ」
なにもしていないし、する気もないのに、勝手におそれて避けようとするのよ。気持ちのいいものではないわ。
「お前のほうがつらいと思うぞ。ガルマさんはもともと立場が違うから、おそれられて当然だしな」
「……そうね。人もトカゲも大差ないと言っておられたし。でも、つらいほど鍛錬の効果はあるわよね」
では町へ入るわよ。
次々に人々の動きが止まるわね。ここまでは今までと大差ないわ。遠くからでもティアラの光で目立つから、注目を浴びるのよ。問題はここから魅了されるかどうかよね。散策しながら人々の様子を観察するわよ。
なにかしら。人に付いた変な影が見えるわ。
見えるといっても、視界に入った途端に消えちゃうのよね。だからよく確認できないわ。
特に気になるのは、変な影の付いていた人ほど、汚く見えるのよね。あの影が人を汚しているのかしら。だとしても、見えた途端に消えるのは変よね。気のせいなのかしら。とりあえずは様子見よ。
魅了のほうは大丈夫みたいね。注目をされてはいるわ。それでも、魅了された様子の人は見当たらないわよ。
今までとの大きな違いといえば、すべての人が距離を取るようになっていることかしら。威圧感のせいよね。あたしには近づきがたい雰囲気になっているのよ。
何人かの欲深そうな商人や貴族、それに領主にも見られたわ。彼らですらも近づいてはこないほどなのよ。
「ガーゴ様のおっしゃったとおりね。人の欲には限りがないらしいし、一層強引になると思っていたわ」
手を出すのが怖くなるほどの魅力があるということなのよ。自分で鏡を見ても怖かったくらいだものね。
「だな。たぶんだけれども、あいつらはティアラそのものじゃなくて、お前を格上だと感じて動けないんだろうな」
「なによそれ。装飾品ひとつで、装着者を格上とみなすなんて、ありえないわよ」
あまりにも脈絡がないわ。そんな説明はガルマさんからもされていないわよ。
「俺も現状を見るまでは、そう思っていたけれどもさ」
「うーん。たしかにティアラの魅力を上げただけで諦めるのは変だとも思うわ」
魅了された人は、死をも恐れずに奪いに来ると伺ったわね。なら、いくら怖くても諦めないかしら。
「考えてもみろよ。大精霊様と、最上位に属する精霊様の合作だぞ。それもガルマさんが笑うほどの傑作だ」
ケルピー様からティアラを授かったときにも、ガルマさんはおもしろいとおっしゃったわ。でも今回は、堪えきれずに大笑いされたほどなのよね。おそらくは桁違いのなにかがあると考えるべきだわ。
「……そうよね。そもそも装飾品ひとつで魅了しちゃうなんてことが、本来ならありえないのよね」
「あいつらでも格上の王様に王冠をよこせとは言わないだろ。同じ感じになっているのかと思う」
王様や貴族の人たちは、いつもこんな感じで見られているということかしら。
……なんて寂しいのよ。
「貴族の人たちが、高慢になりやすい理由が、わかる気がするわ」
「お前も高慢になるのか」
「やめてよ。でも貴族が人々を差別するというより、人々が自ら差別されるように振るまって見えるのよ」
「たしかにな。貴族が幼いころから、こんな風に周囲から扱われていたら、敬われて当然に感じるか」
貴族も社会の犠牲者なのかもしれないわね。
人々が勝手に卑屈になって下手に出るのよ。そんな状況で育てば、自然と高慢に仕立てあげられてしまうのだわ。
これじゃ信じられる仲間に巡り会うような機会もないわよね。身内も敵となる謀略の中で、荒んだ心のまま孤独に朽ち果てる、だなんてお話にも現実味があるわ。
貴族に生まれただけで経済的には恵まれるわよ。でも果たして、それを幸せと呼べるのかしら。
「あんたの礼儀知らずには頭が痛かったのよ。でも、間違っていたのはあたしのほうだったのね」
誰に対しても平等に接する意義を痛感するわ。
居丈高になることも、卑屈になることも、同等に好ましくないのよね。
「いやいや。それは早計だろ。ケースバイケースだと思うぞ」
ふむ。礼儀はコミュニケーションを円滑にする手段のひとつよ。すべてを否定するべきでもないということね。
程度の問題なのかしら。その基準が人によって曖昧なのよね。だからむずかしいのよ。
「そうね。決めつけもよくなかったわ。でも決まりがないというのは不安ね。どうすればいいのやら」
「そっか?」
ケースバイケースだなんて言われてもねぇ。具体的に、どういうときにどうすればいいのかがわからないのよ。
「たとえば初対面の人には、どう接すればいいかがわからないわ」
「相手次第だけれども。こっちから接する場合はそうか。そういうときの限定だったら礼儀を守ればいいんじゃね」
あんたから、そんな答えが聞けるとは思わなかったわ。
「そう思うのなら、あんたもそうしてよ」
「え。しているだろ。初めてガルマさんに話しかけたときだって」
していたら、つっこまないわよ。
「あのときの挨拶の一言だけだわ。それにあれは、本に書いてあったまねをしてみたかっただけよね」
「なんで知っているんだ」
なんでもへったくれもないわ。
「自分で言っていたわよ」
「え~? そうだったかなぁ。参考にしたと言った覚えはあるんだけれども」
あたしも言い回しまでは覚えていないわ。アルフはどうでもいいところで記憶力がいい感じよね。
「そんなに前のことを覚えているのに、どうしてあたしに会う前のことを全然覚えていないのよ」
「俺に聞くなよ」
あんたのことを、あんたに聞かずにどうするのかしら。
「じゃぁ誰に聞くのよ」
「……あっち?」
呼び主ね。そっちも正体不明のままだわ。
「結局この旅が、あんたの記憶に関係するのかも、いまだにわからないのよね」
「今のところは、戻った記憶は皆無だな」
あいかわらず他人事のように言うわ。
「少しは思いだそうとしなさいよ」
「思いださないほうがいいことかもしれないぞ。気にしても仕方がないって」
あぁ、もう。あんたが気にしないでどうするのよ。
「それ当人のセリフじゃないから。他人事にしちゃダメよ」
「落ちつけ。なんで俺の記憶の話になっているんだよ。他人事と言うんだったら、まずはお前のティアラの話だろ」
ハ。
なんでって…… どうしてかしら。今話すようなことではなかったわ。
「あれ。そういえばティアラの話をしていたのよね」
「すぐ熱くなるのも精神の脆さかな。いやこれは違うか? いずれにせよ冷静さを失うのはよくねぇな」
気にしだすと止まらないのも、あたしの欠点ということよね。アルフは今の会話の中でも指摘をしてくれていたわ。それでも止まらなかったほどに根が深いのよね。
過度に気にしても仕方がないのよ。言葉ではわかっているつもりだわ。でも実際には気にしてしまっているのよ。
「本当に欠点だらけよね、あたしって。ひとつずつ潰していかないとなぁ」
課題が多すぎて、すべてを気にしてはいられないのよ。それなのに気にし過ぎと言われても困っちゃうわ。
「ひとつずつってのはいいな。既に並行していくつもやっているから、まずはそれを終わらせてからだな」
「う。終わるのかしら。精神耐性の成長は確認できたとはいえ、どこまで上げればいいのかもわからないし」
課題は増える一方よね。いまだに、なにも成せてはいないのよ。
「そうだな。長期目標の鍛錬とは別に、短期目標の課題をひとつずつ用意するといいのかもな」
なるほどね。まずは課題を減らさないと、すべてを意識するだけでもむずかしいのよ。すぐに終わらせられそうな課題から優先して取り組むべきということだわ。
「あんた、ときどき格好いいことを言うわよね。要は現状に短期目標をひとつ加えればいいのよね。なにがいいかしら」
「さぁ」
く。
頼りになると期待させておいて、なによその無責任な答えは。
「盛りあげておいて、いきなり落とさないでよね」
「いや、だって俺は、思ったことを口にするだけだからさ。そんな先のことまでは考えていねぇよ」
アルフはそうだったわね。気が焦っていたわ。
「長所なんだか短所なんだか、わからないわね。でもまぁ、これはあたしが考えるべきことね」
あたしが決めるべき課題を、アルフに選んでもらおうとしていたのよ。恥ずべきことだわ。
アドバイスはもらえるとしても、選んで決めるのは、あたし自身なのよね。
「当面の課題は他人との接触かな。下手に近づくと逃げそうだ。解決するまでは俺だけでやっておくか」
「うぅ。あんたは無礼すぎるからあたしに任せろ、と言ったことを思いだして恥ずかしいわ」
記憶のないアルフを教育してきたつもりよ。でも思い返すと、恥ずかしいことばかりをしていたのかもしれないわ。
「気にすんな。それは俺も間違っているとは思わない。ケースバイケースだ」
「ありがと。でも当面の課題と言われてもな。隠すわけにもいかないし、説得して回るのも変よね」
せめて人々が逃げないように、リュックに説明の張り紙でもしようかしら。
でもティアラが注目されるのよね。リュックに張っても意味がないわ。そもそも、どう書けばいいのかもわからないわね。
「この状況で、どう人と接するべきかだろうな」
避けられている状況なのよね。追いかけたりしたら、危ない人になっちゃうわ。
「うーん。似た立場の人はどうしているのかしら。貴族の人は、町人とほとんど接しないから参考にはならないし」
「おそれられる立場で町人に接するといえば王様じゃね」
異論はないわ。でも、おかしいわよね。
「……村娘が王様の立場で考えなきゃならないとは。理不尽な世界ね」
「理不尽な力に囲まれているんだから仕方がない」
そうね。そっちのほうが、ありえないほどに理不尽だわ。改めて意識すると、どっと疲れるわね。
つい先日までは、ただの村娘だったのよ。今は本当に異常な状況だわ。
「そういえば王様は、貴族よりも特別視されて育ったはずなのに、大衆の視点で見て考えておられるわよね」
王様の生き様は、王は民のためにある、と行動で示しておられるようなものよ。
最も高慢になりやすい立場に生まれ育ちながらも、高慢さの欠片も持ち合わせておられないように見えるわ。
「周囲に恵まれていたんだろうな。ガキのころから罠アイテム研究のじいさんらが相手をしていたんだろ」
「あ~。代々王家に仕えているって言っていたわね。やっぱり育った環境次第か」
王様には、ふつうに接して教育してくれる人たちがいたのね。
「でも王様と町人の接触は、基本的に兵を介していたか。やっぱ参考にはならないかもな」
求められれば誰とでも話されるとは思うわ。でも、王様から一般人に話しかけられる機会は、実質的にないわよね。
「まさかもう誰とも話せないのかしら」
いかに精神鍛錬のためとはいえ、誰とも話せなくなるというのは辛すぎるわ。
「さすがに捕まえれば話すだろうけれども。どうしてもってときだけは、ティアラを隠してもいいんじゃね」
「あ、そうか。精神鍛錬のために見せているだけだから、話すときは隠してもいいのよね」
考えこむと視野が狭くなるとは言われていたのよ。こんな当然のことにまで気づかなくなるだなんて怖いわ。
「嫌な予感がしないでもないけれども」
「へ。どういうこと? 今まではずっと隠していたし、問題なんてあるはずがないわ」
実績がある方法なのよ。今更懸念するまでもないわ。
「んじゃ試しに隠してみな」
「そこまで言うなら。でも気にする要素なんてないと思うわよ」
いつものように、この手拭で鉢巻を――
「きゃぁ。なに? 手拭が消えちゃった?」
「やっぱな」
アルフはこれを予想していたというの?
あたしには、さっぱりわからないわ。
「どういうことよ」
「ガーゴのいた建物を汚せなかっただろ。同じように、手拭はティアラを汚すものとみなしたんじゃね」
土を消していたのと同じということね。あたしの手拭が汚いとおっしゃるのですか。
「ガ、ガーゴ様…… 潔癖すぎですよ……」
ようやく見つけた解決策を、問答無用で粉砕されてしまったわ。もう、どうすればいいのよ。
「寝るときに枕が消えたりはしていないから、隠そうとしなければ大丈夫なんだろうとは思うけれどもな」
「クイズでもやっている気分ね。隠そうとせずに隠せか」
汚くなくても、隠そうとすることが問題になるのかもしれないというのよね。どういう理屈かはわからないわ。でもこの結果を予想したアルフを信じてみるわよ。
とはいえ、思いつかないわね……
「話すときだけだったら、正面の宝石周辺を手で隠せば十分じゃね。全部を隠さなくても、たぶん大丈夫だろ」
「なるほど。いちいち額に手を当てながら話すのも怪しすぎる、とはいえ仕方がないか」
手では何度も触っているわ。消される可能性はないわね。
「それは心配すんな。もともと怪しさ満点の格好になっているから」
「ぐ。目立つことは望んだとはいえ、おそれられることは想定外だなぁ。魅了しちゃうよりは、たしかにいいとはいえ」
文句ばかりを言っていても仕方がないわね。あたしの精神鍛錬に協力してくださっているのよ。感謝して活かすべきよね。
どうにか暫定対策はまとまったわ。宿屋を探すわよ。
人混みがすごい町だわ。それなのに、あたしたちの周囲だけは常に広く空いているわよ。
明らかに避けられている雰囲気よね。哀しくなるわ。
「虫除けの魔アイテムに続いて、人避けのティアラか」
酷い言い方ね。でもこの状況では否定もできないわよ。
「あたしが世界から嫌われちゃった気分だわ」
「みんなの顔を見ろ。嫌ってはいねぇだろ」
……畏れているように見えるわ。とはいえ、怖がっているようには見えないわね。
手出しできぬ存在を敬い、憧れているような雰囲気だわ。あたしではなく、ガルマさんのような方に対して向けられるべき視線ね。
「嫌われているわけじゃないだけマシか。それでもみんなが離れていくのは哀しいのよね」
「哀しみの耐性が低いから余計にそう感じるのかもな。つらさが糧になっていると思うしかねぇ」
そのとおりだわ。このつらさに耐えることであたしは成長できるのよ。
「うん。強くなるまでの辛抱よね」
哀しみへの耐性が低いという自覚はあるわ。哀しみが怒りを生んで、理性が吹き飛ぶのよね。
今までは哀しみの耐性を上げるための実質的な手段がなかったのよ。つらくとも好ましい状況になったと言えるわね。
「しっかしまぁ、ベルタよりもガルマさんのほうが遥かにやばいのに。やっぱ目立つかどうかって大事だな」
「そうね。気がつかなければ気にならないのよね」
そういえば、この町に入ってから気になっている変な影は、気のせいじゃなかったみたいよ。いまだに見えるものね。相談してみようかしら。
「ところでアルフは気づいている? 変な影が見えること」
「いや? 影がどうかしたのか」
やっぱりあたしだけに見えているぽいわ。
「なにかね。視界に入ったばかりの人から、もやもやした影が見えることがあるんだわ。でも、すぐに消えるのよ」
「へぇ。気がつかなかったな。正体の推測はできるのか」
ガーゴ様の影響だとは思うわ。でも能力についての説明が、なにもなかったのよね。
「ううん。初めて見たし見当がつかないわ。最初は気のせいだと思っていたのよ。でも、続いているのよね」
すぐに消えるから害はなさそうなのよ。でも、続いていると気になるわ。
「視界に入ったばかりの人だけか。タイミングで考えると、お前に気づいて隠れているってことかね」
「そうかもしれないわ。でも、隠れるというより消えるのよ。いや消されている感じか。あ。あの消え方は……」
ガーゴ様の建物で、土が消滅したときの消え方に類似しているわ。
まるで水に溶かし流され、浄化されて消えるような感じよ。
「もしかしてガーゴ様が、なにかを消しておられるのですか?」
「邪霊を祓っておるだけだ」
ようやくガルマさんが説明してくださりそうよ。やっぱり、あたしが考えて答えを出すのを待っておられたのね。
「あの、もやもやした影が邪霊なのですか」
「ここに現れたのは、憑依もできずに寄生しておるだけの弱々しいやつばかりだがな」
「おぉ。俺には見えていないわけだな。本当にベルタは霊も見えるようになっていたんだ」
あれが邪霊なのね。見えたことよりも、いっぱいいたことに驚きだわ。きっと今までも、ずっと身近にいたのよ。
それに、もっと恐ろしい姿を想像していたのよね。弱々しさすら感じさせる、ただの小さな影にしか見えないわ。
「でも対峙していたわけじゃないのに祓ってましたよ」
「お主のおかげで能力が向上して、対処可能な範囲が広がっておる」
そういえばティアラと融合されたときに、そのようなことをおっしゃいましたね。
「勝手に邪霊を祓ってくださるのですか。……それって、以前と大差ないとは言えなくないですか」
ガルマさんは大差ないとおっしゃったわ。でも勝手に除霊されるだなんて、とんでもない大差よね。
それなのに詳しい説明を避けておられるわ。マアマさんやティアラの力については、きちんと説明をしてくださったのによ。
大笑いをされたほどの、なにかがあることに間違いはないわ。現に視界だの除霊だのと、次々と未知の能力が発現しているものね。どうして説明をしてくださらないのかしら。今回に限って、あたしに考えろとおっしゃるのは怪しすぎるわよ。
「お主の意志とは無関係に、勝手に祓っておるのだ。お主自身には、なんの変化もなかろう」
「ぐ。たしかにガーゴ様の御意志で祓っておられるのですから、あたしのせいじゃないとも言えますが」
屁理屈な気がしてならないわ。
除霊があたしと無関係とはいえ、ガーゴ様はあたしについてきているのよね。説明くらいはしてくださってもいいのではないかしら。
「ほらほら気にしすぎ。そもそも誰の害にもなっていないどころか、助けてやっているんだから気にすんな」
「でもなにか強すぎない? 気づいた瞬間、姿を確認しようとしたら、もう消されているのよ」
「当然だ。今のガーゴであれば、その程度は見ただけで、っと、なんでもない」
やっぱりだわ。おっしゃるべきことを隠されているようよ。
「……ガールーマーさーん」
「いかんな。どうにも我は口が軽い。竜に連なる者としてありえぬのだが。感化されておるのか」
「あはははは」
「見ただけって。あの巨人の森にいた、蛇の石化能力みたいな感じか」
ぶ。背筋が凍ったかと思ったわよ。
蛇が石化したときに、睨むだけで倒せるようになったとアルフが言っていたことを思い出したわ。本当にそんなことまでが現実になっちゃったのよ。
「ちょ。そんなとんでもない力を、町なかで使いまくっているってこと?」
「ガーゴをなめるな。蛇ごときの力は誤差にも…… うーむ。本格的にマアマに師事せねばならぬか」
「あはははは」
なによ、今のお言葉は。聞き間違いじゃないわよね。
あの蛇はとんでもなく危険だったわ。通っただけで森を砂漠に変えてしまう毒を垂れ流し、おまけに動物を見ただけで石化させていたのよ。それも蛇自身は意識すらせずに、無制限に発動していたわ。
その蛇の強大な力を、誤差にもならぬとおっしゃりかけたのよね。
しかもよ。ガーゴ様の能力が攻めということは、襲われなくても手出しをされているのよね。あたしの意志に依らずに、人混みの中でも発動しておられるわ。
「あのぉ。ほんっとうに大丈夫なのですか。ほかの人や町に危害はないのですか」
「うむ。見てのとおりだ」
く。
どうにもガルマさんらしくない気がするわ。なんらかの意図で、無理やりごまかそうとされているみたいよ。
でも竜人様であられるガルマさんが、人をごまかす意義なんて、あるわけがないわ。
「見て不安だから聞いているのですがね……」
ガルマさんを問い詰めたいわ。でもそんなことが許されるお方ではないのよ。ジレンマだわ。
「邪な人は、ベルタが気づく前に消されていそうだよな」
「ちょ! すぐに町を出るわよ」
まずいわ。察するに、人が汚く見えるのは、邪な気持ちを抱いているからなのよ。あの汚さは邪霊と似た感じがするわ。それに邪霊が付いていた人ほど汚く見えるものね。
「その心配はない」
「どうしてですか。人は我欲に阻まれて、邪を祓うことがむずかしいと伺いましたよ」
ガーゴ様が邪な霊を祓うのであれば、邪な人をも消滅させるのが道理よね。ほとんどの人が危険にさらされているということにほかならないわ。
「ガーゴとの問答だ。邪霊以外を祓うことについては、お主の了解を得ておらぬ」
「あ…… あのときの質問はこういう意図だったのですか」
邪霊への対処について詳しく問われたわ。
たしかに、ガーゴ様が勝手に祓っても構わない、という旨の返答をしていたわね。
でも、あたしの了解って……
「邪霊は問答無用で容赦なく殲滅しろと命じたのであろう。張り切っておるぞ」
ぶ。問答を要約すれば合っているのかもしれないわ。
でもそのおっしゃり方ではニュアンスが違いすぎるわよ。
「あたしがガーゴ様に命じるなんて、できるわけがありません!」
「ささいな解釈の違いだ」
どういうことよ。あたしの望みや願いが、命令として受けとられているとおっしゃるのよね。
あたしの発言が、意図しない受けとられ方をしたうえに、とんでもない影響力を生み出しているのだわ。
「重い。重すぎるわよ。どうしてあたしばっかりが背負わされているのよ」
「へ。荷物はお前が勝手に集めて背負っているんだろ」
どうしてそうなるのよ。お話の流れを無視しないでよね。
「荷物の話じゃないわよ! 責任の話よ。あんたの旅なのに、どうしてあたしばっかり責任が重くなるのよ」
む。ニタニタと笑い出したわ。あんたの旅で、あたしが悩んでいるというのに――
「だから気にしすぎだって学べよ。仮に、俺についてきていても、ガーゴがやることは一緒だろ?」
「……それもそう…… なのかしら?」
あたしが気にすることではないということよね。筋が通っているわ。
「まぁ俺だけで行ったんだったら、ついてこなかったのだろうけれども」
「やっぱりあたしの責任なのよね」
あたしがどうにかしないといけないのだわ。
「でもついてこなければ、いずれはほかのやつについていったかもしれない。そのほうが不安じゃね?」
「たしかにそのほうが怖いわね。ついてきてくれてよかったと言えるのか」
現状はガルマさんがいらっしゃるだけマシだと思えるわ。もっと危険なことになる機会を排除できたということよね。これでも危険が緩和されたといえるのだわ。
「まぁあんなところに行くやつは、ほかにいないと思うけれども」
「ならやっぱり、あたしがあそこに行かなければ――」
ガーゴ様が人前に出てこられることも、なかったのかもしれないわ。あたしが連れてきてしまったのよ。
「でも多くの名で呼ばれていたって話だし、人との接触は多いんだろう。だったらついていく可能性が高いな」
「それはそうね…… って。もしかしてあんた、あたしを安心させたり不安にさせたりで、遊んでいない?」
どうにもアルフの様子がおかしいわ。ニタニタと笑い続けたままで、あたしの責任の有無を交互に並べているのよ。まるであたしの反応を楽しんでいるかのようだわ。
「ばれたか」
「あんたねぇ」
あたしが真剣に悩んでいるのに、ふざけないで――
「考え方次第で気分なんて簡単に変わるだろ。楽なほうに考えろってことさ」
あ。
そうよ。あたしはアルフの一言で、不安になったり安心したりを繰り返していたわ。
「……それを教えてくれようとしていたのか」
アルフも真剣に考えていてくれたのだわ。
「さっきから何度も言っているだろ。気にしすぎだって。悪いほうに考えてもメリットなんてないぞ」
「そうね。今のやり取りでよくわかったわ。状況が変わらなくても、考え方ひとつで気分は逆転するのね」
わかっているつもりで、わかっていなかったのだわ。あたしはムダに悩み続けていたのね。
「そうそう。状況はまったく変わっていない」
「わかっている。落ちこまずに、前向きにとらえながら対処するのよね。負の感情にはまらないように」
不安に呑まれた状態で、前向きに考えることはむずかしいわ。
まずは不必要に気にすることをやめて、冷静に考えられる状況をつくりだすことが大切なのよね。
気にしていようがいまいが、状況に影響は与えないのよ。
「たしかに恐ろしいほどの力なんだろうけれども、実害は見えないしガルマさんのお墨つきだ」
「不安がってもムダでしかないってことね。うん、もう大丈夫よ。ありがとアルフ」
そうよ、なんといってもガルマさんのお墨つきなのだわ。もとから懸念する必要なんてなかったのよ。
「となれば次は」
「食事ね。ちょうど宿屋が見つかったわ」
うは。受付で手続き中の客までもが、勝手に中断して場所を空けてくれたわよ。
「んじゃ今日は俺が」
「待って。あたしにやらせて。宿屋さんには迷惑かもしれないわ。でも、ガーゴ様の好意に応えたい」
今学んだばかりなのよ。前向きに考えるわ。人と接するだけで精神鍛錬になるであろう状況をつくっていただいたのよ。ならばやらなきゃ損よね。
「そっか。んじゃ任せた」
近づいても宿の主は逃げないわね。いや、動けずに硬直している感じだわ。
営業スマイルがこわばってしまっているわよ。申し訳ないかぎりだわ。
ティアラを隠さずに交渉できないかを試させてくださいね。
「夕食と一泊をお願いできますか」
「は。よ、ようこそベルタ様。その、当宿では御満足いただけるサービスを提供しかねると思いま――」
痛々しくて直視しがたいわ。発音が機械みたいよ。
「お願いします」
「か、かしこまりました! 本日は貸切にして精いっぱい――」
緊張のあまりかしら。無茶なことを言い出しそうよ。
「特別扱いはしないでいただきたいのです。一般客として扱ってください」
「は。お忍びということですか。承知しました。では無礼を承知で一般客として扱わせていただきます」
まったく無礼じゃないわよ。あたしたちは一般客だわ。
……警備の増員を要請したり、高級食材を注文したり、接待要員を召集したりと忙しそうよ。一般の意味を問い詰めたくなるわ。
それにしても、妙に手続きに時間がかかるわね。普段はサインをして終わりなのよ。緊張をさせてしまっているせいかしら。
ようやく終わったわ。アルフが待ちくたびれていそうよ。
「ふぅ。きっついわね、これは」
「見ている分にはおもしろい」
あはは。そうかもしれないわね。ハァ。
「お忍びってなによ。どこのお偉いさんと思っているのよ」
「少なくとも、ただの村娘とは思っていないな」
あたしの名前を知っていたわ。おかしな噂の影響も受けているみたいよ。勘違いも甚だしいわ。
「お偉いさんが、こんなリュックを背負って歩くわけがないわよね」
「お忍びなんて言葉が出るくらいだし、カモフラージュだと思われているんじゃね」
そうだとしても、ちょっと考えればわかりそうなものだわ。
「カモフラージュなら、真っ先にティアラを隠すわよ。完全に思考停止しちゃうのね」
「見るからに緊張していたからな。まぁ荷物を置いて飯にしようぜ」
愚痴っていても仕方がなかったわね。部屋はすぐそこみたいよ。
ん? あそこが、あたしたちの部屋よね。大勢の人が、雪崩を打って飛び出していくのが見えたわ。
「なんだありゃ。掃除でもしていたのか」
「清掃係ぽい人もいたわね。でも、どうしてあんなに慌てていたのかしら。しかも大勢で」
掃除をしてくれていたのなら、喜んで待つわよ。慌てられるとロクなことに――
なによこの部屋。違和感がすさまじいわ。
高級そうな調度品だらけよ。部屋の雰囲気にそぐわないわね。慌てて搬入したことが丸わかりだわ。
「マジか? 手続きをしてから5分くらいしか経っていねぇよな」
「その手続きにも5分くらいかかっていたわ。まさかこのために時間稼ぎをしていたのかしら」
忙しそうに慌ててはいたわ。でもまさか手続き中に突貫工事をしていただなんてね……
「10分でもこれは無理だろ。どんな魔法を使ったんだろな」
「参ったわねぇ。一般客として扱ってくれと念を押していてもこれかぁ」
口頭での説得は実質的に無理ということだわ。
「やっぱティアラを手で隠すくらいの配慮は要るかな」
「そうね。受付のときくらいは、商売だし我慢してもらおうと思ったわ。でも、ここまで影響するならダメだわ」
多少は宿屋に迷惑をかけても仕方がないと割り切ってはいたわよ。
でも迷惑といっても精々、宿の主を緊張させる程度としか思っていなかったのよね。
設備の変更までもされるだなんて完全に想定外だわ。
「俺は毎回王都に飛んでも構わないぞ。あっちだったら最初から、いい部屋もあるだろうし」
王都のいい部屋って、あのバカでかいベッドの……
「ふつうの部屋のほうが落ちつくわよ。次は手で隠して、それでもダメならアルフにお願いするしかないわ」
「俺は全然構わないぜ。まぁ考えるにしても飯を食いながらにしよう」
食堂でも、なにかありそうよね。でも行ってみるしかないわ。
……食堂も、全面改装した直後なのが丸わかりの様相ね。大勢いる人はみんな給仕みたいよ。客はあたしたちだけだわ。
「泣きたくなってきたわね」
一泊するだけなのに、宿屋にも客にも、とんでもない迷惑をかけているわ。
「ガルマさんを接待していると思えば、これでもたりないくらいだろ」
「なるほど、そう考えるのか。本当に勉強になるわ」
楽になるように考えるのよね。わかってはいても思いつかないものだわ。
うわ。給仕をする人の手が震えているわよ。
「これはさっさと食って部屋に戻ったほうがよさそうだな」
「うん。額を押さえながらの食事は無理があるわ」
一服は部屋に戻ってからにするわよ。
あら? さっきよりも部屋が広くなっているわよね。
「おぉ。空間魔法か」
「……壁を壊して隣の部屋とつなげたのね。むちゃくちゃすぎるわよ」
頭が痛いわ。最初に部屋へ入ったときは、まだ工事中だったのね。調度品の違和感もなくなっているわ。
「こりゃ店は大赤字だな」
「悪いことしちゃったわね」
実質的に与えてしまった損失分は償うべきだわ。
とはいえ、この部屋の改修費となると、手持ちではたりないはずよね。
今のあたしなら、その気になれば狩りでいくらでも稼げるわ。とはいえ、まだ旅の途中なのよ。
「そうだ、王様にもらった小切手があったわね。使わせてもらいましょうか」
「いいんじゃね。王様も、使ってほしくてしょうがないって感じだったし」
ゴミ扱いしていてごめんなさいね。ありがたく使わせていただきますよ。
「ふぅ。まさか役立つときが来るなんてね。受けとっておいてよかったのか」
「備えあれば憂いなしってやつか」
まさにそれね。では早速金額を記入……
工事費ってどれくらいかかるのかしら。調度品ひとつひとつの価値も、さっぱりわからないわよ。
「でも幾らくらい書けばいいのかしら。どれだけ使ったのか見当がつかないわよ」
「清算のときに直接聞けばいいんじゃね。幾らでも出せるって余裕を見せれば、遠慮せずに答えるだろ」
……あんたはそう思うわよね。でもあたしには、宿屋の主も汚く見えているのよ。おそらくは邪な気持ちを抱いているわ。
「うーん。万一ふっかけられると王様に悪いわね。でも、それしかないか」
あたしには汚く見えても、言動は誠実で、不審な点はないのよ。これも気にしちゃいけないことなのよね、きっと。
「今日は寝よう。なるだけさっさと出ていったほうが、迷惑をかける度合いも減るだろ」
「うん。そうするわ。おやすみ」
よく眠れたわ。寝ている間には、なにも起きなかったみたいね。
さてと。清算のときにはティアラを手で隠しておくわよ。
「随分と気をつかわせてしまって申しわけありません。改修費などすべて払いますので金額を教えてください」
「は。そのような費用はありません。一般客としての扱いですので通常の宿泊料で十分です」
へ。
……今回は、さほど緊張もしていないはずよね。でも、すっとぼけているとしか思えない返答だわ。
「うそをおっしゃらないでください。突貫工事をなされていたのは明白ですよ」
「は。たしかに工事はいたしましたが、誓って費用は発生していないのです」
む。たしかに、改修していないとは答えていないわね。発生した費用がないとだけ答えていたわ。
「どういうことですか」
無償でこれだけのことができるはずがないわ。本当に魔法を使ったわけじゃないわよね。そんな便利な魔法があるとも思えないわ。
「王都に協力を要請したところ、費用はあちらもちで、すべて対応していただけたのです。料理や人員もです」
「そういうことでしたか……」
ここだけではなく王都にまで迷惑をかけていたのね。萎えるわ。
……王都が絡むのであれば、王様の耳にも入っていそうよね。あたしたちに対しては魔法の使用すらも指示されそうよ。それで王都から客室に直接資材を送り込めたとすれば、あの短時間での工事にも納得がいくかしら。
「余計な請求をしては、私めが詐欺師扱いされてしまいます。どうか規定料金だけでお願いします」
「散々迷惑をおかけして申しわけありません。では規定料金をお支払いします」
納得しがたいわ。でも余計に支払うほうが迷惑になると言われては仕方がないわね。
どうにかおわびをしたいところなのに――
「迷惑? とんでもありません! ベルタ様に御利用いただいたとなれば、大繁盛が約束されますので」
「は?」
なにを言い出すのよ。あたしにそんな御利益はないわ。
嬉しそうに台帳を取り出してきたわよ。
「このとおり、既に1年先まで予約が埋まりました。その先も予約させろとクレームが来ているほどです」
そんなばかなお話が……
たしかに、全室予約で埋め尽くされているわ。年季の入った台帳よね。今日までの記録も残っているわ。
「そ、そうですか。少しでもお役に立てるなら幸いです。ではありがとうございました」
「恐縮です。ありがとうございました」
夢でも見ているのかしら。ありえないわよね。でも偽の台帳を用意していたとは思いがたいわ。
「あたしたちが泊まっただけで繁盛するってどういうことよ」
そもそもどうして、あたしたちが泊ったと知れ渡っているのかしら。昨日の今日なのよ。
……そういえば宿屋から王都へ協力要請をしていたのよね。そのときかしら。
「まぁ想像はつくけれどもな。知らないほうがいいと思うぞ」
「そんな言い方をされたら一層気になるわ。教えなさいよ」
気にしろと言わんばかりの意味深な言い方よね。
「気にしない訓練だ」
「ぐ。あんたってスパルタよね」
やってくれるわ。訓練のために、わざと気になる言い方をしていたのね。
「一応はマアマに頼んで、宿屋に残したものはすべて消してもらったほうがいいかな」
「へ。なにも置いてきていないわよ」
あたしたちが残したものを目当てに、泊まりに来るということかしら。
なにか忘れ物があるとしても、1年も先まで残っているわけがないわよ。
「だったら頼まなくてもいいぞ」
うーむ。意図の読めない曖昧な提案よね。
でも昨日からのアルフとのやり取りを思い返すと、なにか考えがあるのだと思えるわ。
なによりも、おそらくアルフには、邪な気持ちがまったくないのよ。ほかの人には見えてしまう汚さが、微塵も感じられないのよね。ここは従うべきだわ。
「……なんだかんだ言いながらも、あんたの発言ていつも、あたしのためなのよね。マアマさんお願いします」
あたしにもわからないことをお願いして通じるのかしら。
「おっけー」
了承されたわ。お任せするしかないわね。ほいっと。
……やっぱり、なにが起こったのかはわからないわね。
「なにか消してくれたの?」
「いろいろー」
ちょ。また、なにかをやらかしてしまった気がするわ。
「えぇ? 本当に残したものなんてあったのね。大切なものじゃないわよね」
「あはははは」
ひとつならともかく、いろいろってなによ。そんなに忘れ物があっただなんて信じがたいわ。
「これからは宿屋に泊まるたびに消したほうがいいかもな」
むぅ。消してもいいものということなのよね。
「わかったわ。ガーゴ様に関係することなのかしら。でも…… いやいや気にしちゃダメだった」
気にしちゃいけないと思うと、一層気になるわね。ほとんど拷問だわ、これ。
でも気にしている場合じゃないのはたしかよ。ガーゴ様のお力は、一端が見え始めただけのはずだものね。
覚悟を決めて旅を再開よ。




