おまけ:神への叫び
うっわ~。広い湖ね。水平線に木々が見えるから、あの辺りが対岸かしら。
とっても幻想的できれいだわ。でも水が濁っているから、洗い物には適さないかしら。
水が流れ込むようなところは見当たらないのに、こんなに濁るものなのね。
……見た感じだと、水藻や微生物が多いせいかしら。臭いもきついものね。
「おぉ~、絶好の釣り堀」
そうね。水藻や微生物が多いなら、魚も多そうだわ。
栄養がたっぷりで太っていそうね。
「湖って言いなさいよ。でもすぐに水場が見つかるなんて、あんたついているわね」
アルフの希望通りに、夕食は魚で決まりそうだわ。
森の中の湖だから、肉でも野草でも食べ物には不自由しなさそうね。
「よぉし。どっちが大物釣れるか勝負だマアマ!」
ちょ、あぶないわね。いきなり釣竿を振りかざさないでよ。
あ、もう釣れたわ。
「ひへへへへ」
またまたアルフの希望通りに、大物がかかったわね……
「危ないわねまったく。針ついているから注意して使いなさいよ」
ほら、釣り針は外したわよ。薬を塗ってあげるから、じっとしていなさいよね。
弓と違って、釣りは結構やっていたのにこれなんだから情けないわ。
あら。なんだかガルマさんの様子がおかしいような……
「どうしたベルタ」
ガルマさんがおひとりで佇まれて考え込…… いや。雰囲気が変わったわ。
「またガルマさんが、なにか悩んでおられるように見えたのよね。でも途中から、薄笑いされだしたような気がして」
意味深よね。なにかがこの湖にあるのかしら。
「また雰囲気てやつか? それどうやって見るんだよ。俺にはさっぱりわかんねぇ」
ふむ。なんとなく感じるだけで、あたしにも示せる根拠はないのよ。
「そうね。気のせいかも」
治療の途中だったわね。薬は塗ったし、一応はガーゼを当てておこうかしら。
よし。こんなもんね。
「くっそー。今度こそ大物を」
今度こそ、ね。
それってつまり、アルフは大物じゃなかったという意味かしら。
オレハルコンのこともあるし、どうにも自虐的だわ。
「アルフより大物って。ガルマさんでも釣るつもり?」
釣られるガルマさんね…… ちょっと想像しがたいわよ。
人のごとく振る舞う一環で、釣られるフリをされそうで怖いわ。
「勘弁してくれよ。魚に決まってんだろ」
うん、今度は水面に釣り針が届いたわ。
魚が狙いなら最初からふつうにやればいいのよ。
「じゃぁがんばって釣り上げてね」
さてと。釣りだけはアルフに任せておいても大丈夫なはずよ。
あたしは行きますかね。
「え。勝負しないのかよ」
結果が決まっていることを勝負というのはおかしいと思うわ。
それに魚だけじゃ栄養が偏っちゃうわよ。
「あたしはマアマさんと、果物とか食べられそうな野草を探してくるわ」
「あい」
この森はいろいろと収穫できそうなのよね。
ほら早速、果物を発見したわ。
マアマさんお願いしますね。えい、やー、とぉ……
収穫はこんなところでいいわ。アルフのほうは釣れたかしら。
……うんうん、しっかりと釣り上げているわね。
「果物が結構あったわよ。マアマさんがいるから採りづらいところでも楽々ね」
「えっへん」
見えたら振るだけなのよね。手間もへったくれもないわ。
効率がよいとはいえ、楽であるほどに人としては堕落しちゃいそうよ。
少しは自分でもやって、経験を積んでおかなくちゃいけないわね。
「こっちもぼちぼちだ」
釣り上げた魚は網の中で泳がせているのね。どれどれ……
よしよし。夕食には十分なだけ釣れているわ。
「いい調子ね」
まだ釣る気なのかしら。楽しめているのなら別に構わないわ。
でもそれなら、釣った魚を少し放してあげたほうがいいかしら。
「入れ食いだけれどもな。小物ばかりだ」
あぁ、それでまだ釣り続けているのね。
ひとりで釣っていても、大物にはこだわるんだわ。
「岸から届く範囲じゃ水深も浅いだろうから大物はいないかもね」
水中は濁っていて見えないのよ。大物がいるかどうかも、水深も分からないわ。
そもそも、どの程度から大物と呼べるのかしら。
「船でもあれば、よかったんだがな」
あったとしても勝手に使っちゃだめよね。
「どうせ食べちゃうし、大きさなんてどうでもいいわ」
お腹に入ればみんな一緒なのよ。
大きいほうがおいしいというわけでもないものね。
「それはそうなんだけれどもさ。あれ? なんか水面を歩いている人がいるぞ」
「へ? また空飛ぶ魚の類かしら」
旅では未知の発見があるはずだと期待をしていたわ。
でも、あたしが思っていたのとは違う発見だらけなのよ。
今度はまともな発見なのかしら。
……本当だわ。水面を歩いているように見える人がいるわね。
「……靴の代わりに、でかい板みたいなの履いているかも」
なるほど。これはまともな部類の発見かもしれないわ。
「浮き輪の上に立っているようなイメージね」
釣りとかしたら沈んじゃいそうだわ。水面を歩いて遊ぶだけかしら。
「あー。浮き輪かビーチマットは買っておくか。こういうときに便利だろ」
ふむ。魚を釣るのが前提となると、それなりに大型のものが必要かしら。
まぁ、荷物を減らしたからリュックには余裕があるのよね。
「いいと思うわ。空気で膨らませるタイプなら畳んで運びやすいし」
本音をいえば、どうせなら重いもので増やしたかったわ。
でも、まともな船を持ち歩くのはかさばりすぎるわね。
「よし。じゃあ、さっさと食って町へ行こう」
珍しいわね。食べものじゃないのにアルフが興味を示したわ。
とはいえ釣り用だから、結局は食べもののためかしら。
目的地を示したことも珍しいわね。町を目指すだなんて、初めて聞いたわよ。
もしや、町があるとわかっているのかしら。
「もう日が暮れるから、行くのは明日かしら。ここを抜けたら町へ出るのね」
でも見渡した範囲では、町のありそうな雰囲気はないわ。
「知らん」
ハァ。つっこんでもムダなことはわかっているわよ。
「ですよねー」
それでどうして町へ行こうなんて言えるのかしら。呆れちゃうわね。
「あれ、魚は?」
へ。あんたが網の中を泳がせていたわよね。
あら。見当たらないわ。
「え? 知らないわよ」
網が破られたとかかしら。水が濁っているから水中の状態はわからないわね。
――罠アイテムが反応して、何かが崩れるような音がした。
「きゃ!」
「ん? 罠アイテムが発動したのか? なんか襲ってきたか?」
たしかに襲われた気はするわ。でも、それらしき獣は見えないわね。
「別になにもいな…… なに、この足元のぶよぶよ。これってスライムとかいうやつ?」
動かないわね。罠アイテムの効果で一時行動不能になったのかしら。
気持ちわるーい。ぶよぶよの中に魚の骨が透けて見えるわね。
「げ。釣った魚をこいつが食っちまったのか」
あれを全部食べちゃうだなんて大食漢ね。
いい釣り場なのに釣り人が見当たらないわけだわ。
「罠アイテムじゃ釣った魚までは護ってくれないもんね」
周囲に罠アイテムを設置すれば、どうにかなるのかしら。
でも木の枝からも降ってきそうだし、網もすり抜けそうだわ。面倒そうね。
「おー、まい、がっ!」
それなら叫ぶ方向が違うわ。
「マアマさん、呼ばれているわよ」
「あそぶー」
結局は全部がマアマさん頼りになっちゃったわね。
「そういう意味じゃねー」
そういう意味にしか聞こえなかったわよ。
マアマさんになら声が届くし、望みをかなえてくださるものね。
「でもマアマさんはやる気みたいだし。甘えちゃいますね」
「どかーん」
そういえば水中を狙うのは初めてね。
マアマさんなら狙えるとは思うわ。ただ副作用がでないかが心配ね。
ここなら人が少ないから、試すにはちょうどいいかしら。
「しゃあねぇか。今から釣りなおしていたら日が暮れそうだしな。マアマ頼んだ」
では早速、獲物を確認しなくちゃね……
あちゃ。ここは見えないんだったわ。
「でも飛んでいる鳥と違って、水中の魚って特定しがたいわね。かなり濁っているし」
ん~。凝視していれば、たまに魚影は見えるという程度なのよね。
構えておいて、見えた瞬間に振ればいいのかしら。
「大丈夫ー」
「あら。マアマさんが魚を選んでくれるの?」
あたしに見えていない魚でも釣れるってことよね。
やっぱりマアマさんは頼もしいわ。
「大物ー」
え。
あたしは大きさなんて、どうでもいいと言ったわよね。
それなのにマアマさんが大物にこだわる意図ってなにかしら。
「おぉ。マアマはわかっているな」
……すっごく嫌な予感がするわね。
今回は単に大きさだけの問題ぽいから、上限を指定すればいいかしら。
「マアマさん。1食で食べきるから、大きくても1メートルくらいでお願いね」
能天気と神域の力が意気投合なんてダメよ。明らかに危険信号だわ。
「えー」
ハァ。やっぱりだわ。
とんでもない大きさの魚を遊びで釣り上げて驚かそうとしていたのね。
そもそも創造主であるマアマさんが、魚の大物にこだわるのはおかしいのよ。
それにしても困ったわね。上限指定を受け入れてくれそうにないわ。
マアマさんにとっては遊びであることを考えれば、こだわりはアルフの挑発によるものかしら。
ならばものは試しで、大きさ以外の価値を求めてみるべきね。
「大きいのよりも、小振りで身の締まった、おいしい魚を食べたいなー」
あたしに使われることが遊びなら、あたしの希望を優先してくれるわよ、ね?
「おっけー」
あら、即答よ。思ったよりも簡単にマアマさんの興味を逸らせたみたいだわ。
とりあえずは安心をしてもいいのかしら。
大は小をかねるとはいえ、限度というものがあるのよね。
「じゃあ、いくわよ。それ!」
お昼は焼き鳥だったから、魚はお鍋にするのがいいかしらねぇ~。
……ん? 降ってこないわよ。
「あら? マアマさん、不発?」
やっぱり、魚影すら見えていない状態からじゃダメだったのかしら。
「おなべー」
へ。お鍋って…… わお。お鍋に切り身を盛ってくれたのね。
「あはは。そういえばお鍋にするところまでイメージしていたっけ。失礼しました」
無意識に先までを考えちゃうのよね。
「えっへん」
う~む。マアマさんに頼りすぎると、獣や魚のさばき方を忘れちゃいそうよ。
自分でやろうと思ったところは、イメージをしないように気を付けなくちゃいけないわ。
でも、思ったところをイメージしない、なんて矛盾しているわよね。
やりたがっているのを口頭で止めるのは気が引けるし、悩ましいわ。
「マアマさ。大物だと、どれくらいの狙おうとしていたんだ」
大きな湖だし、下手をすれば2,3メートルの大型魚がいるのかもしれないわね。
「100メートルー」
……止めておいて正解だったわ……
そんなのを釣り上げて、あたしにどうしろっていう気だったのよ。
懸念していた副作用もあったわね。
水中というよりも、未確認の対象を狙うことは危険なのよ。
大事を起こす前に認識できたことはよかったわ。
釣り人がいないのは、スライムよりも巨大魚のせいかしら。
水が濁っている原因である可能性もあるわよね。
それにしても、100メートルだなんて海棲生物でも聞いたことがないわ。
「ここの主か? そんなのいるのかよ。勝負していたら絶対負けていたな」
だからどうしてあんたがマアマさんと勝負になるなんて思えるのよ。
「そんなの釣っても食べられないわ。置くところすらないわよ」
ていうか。陸にあげたら暴れるわよね。100メートルの大物がよ。
小さい魚ですら手に余るほど強く暴れるのに…… この辺りが壊滅しそうだわ。
「あはははは」
あたしたちにとっては笑い事じゃないのよ、マアマさん。
物質を復元できるとはいえ、動植物には命があるわ。壊しちゃダメなのよ。
やっぱりマアマさんにお願いするときは油断大敵ね。気を引き締めなきゃいけないわ。
「マアマさんに曖昧な表現は厳禁ね」
ふぅ。まぁ、とりあえずはお鍋を頂くわよ。
「すげぇ怖いことに気づいたんだが。マアマは力の制御ってむずかしくないのか?」
へ。アルフったら熱でもあるのかしら。懸念を示すだなんて、らしくないわよ。
能天気のライバルができて触発されたのかしら。
いや。アルフですら楽観できないほどの大問題ということよね。
「そういえば。ガルマさんが苦心しておられるのに、マアマさんは無頓着ね」
……まさか、失敗しても笑ってごまかそうだなんて思ってはいないかしら。
マアマさんも能天気なのよね……
「それはマアマが物理特化ゆえだな。物質を統括しておると言ったであろう」
特化していれば、統括していれば、暴発はしないとおっしゃりたいのよね。
いやいや、それだけじゃとても納得はできませんよ。
具体的に何をどう特化していて、統括によってどう制御できるのかを説明していただかないとね。
「むずかしい話はわかんねぇけれども、大丈夫ってことか」
……まぁ、むずかしいお話にはなるんでしょうね。
たしかに、説明されれば理解できるとは言いきれないわ。
「大丈夫ー」
あら。アルフったらマアマさんの一言で納得しちゃっているみたいよ。
いい問題提起だったのに押しが足りないわね。
「あんた、それで納得しちゃっていいの? ガルマさん、もう少し詳しくお願いします」
はいそうですか、と納得できるお話じゃないわ。
万が一にも暴発したなら、それですべてが終わりかねない力なのよ。
理解をできるかはさておき、詳しくお聞きしておくべきだわ。
「我が物質に干渉する場合、対象を物質に限定し、干渉する程度と範囲をその都度制限する必要がある」
細かいことはわからないわ。
でも、暴発に備えて透明な玉や壁をつくられていたことも該当するはずよ。
「そうですよね。一度拝見しています」
それに相当する準備を、マアマさんがしておられるようには見えないのよね。
「マアマは常にすべての物質を管理しておるゆえ、任意の物質に対して即座に処理できるのだ」
常にすべての物質を管理、ですか。
うん、具体性が皆無で意味不明ですよ。
でも、だから即座に処理できる、とおっしゃるのであれば想像はつきますね。
「ガルマさんが必要とする準備を、常にすべての物質に対して備えているわけですか」
あたしが、むちゃくちゃなことを言っている自覚はあるわ。
でもマアマさんの力がむちゃくちゃなんだから、こういう解釈でいいはずよ。
「うむ。物質操作に限定すればマアマの右に出るものはおらぬ」
むちゃくちゃな解釈が肯定されちゃったわ。
暴発しても大丈夫なように、常に準備をされているのね。
どうやって、とは聞くだけムダかしら。ガルマさんが小石をくだかれる前になされていたことも、すべてを理解できてはいないものね。
それに聞く必要がなくなったわ。ガルマさんが肯定された時点で、準備が万全であることに疑いの余地はないものね。
「特化とか統括の意味が、すこーしわかった気がします。力を限定する代わりに、便利にした感じですね」
具体的な方法がわからないとはいえ、マアマさんはきちんと制御しているのね。
とりあえずは安心したわ。
「そのように思っておけばよい。便利などという言葉では言いあらわせぬほどの精度と自在性を誇るがな」
うぅ。肯定だけでなく、補足を加えられたときは要注意なのよね。
ぬか喜びの安心だったわ。
「はぁ。あんまりピンときませんね」
きっと、とんでもない含みがあるわよ。
聞き逃すと、まずい話がありそうだわ。
「たとえば我が力を使ってみせたとき、影響範囲を限定するために大雑把な結界を張ったであろう」
やっぱり、結界というのはあの透明な玉や壁のことだったのね。
「はい。あたしたちを護る玉と、周囲を護る壁でしたね」
誤解しているとまずいので念押しをしておきますよ。
間違っていたなら指摘をしてくださいね。
「マアマはその影響範囲の限定を、素粒子単位で瞬時に行う。いかに広範囲でも複雑な条件でもだ」
素粒子を透明な玉で護るってことかしら。
いやいや。小さな砂粒ですら、数えきれないほどの素粒子でできているのよ。
やっぱり、わからない話になったわね。
「……どれだけ便利なのか想像もできないですね」
そもそも素粒子を護る結界があるとしたら、その結界はなにでできているのよ。
いや、結界とはおっしゃっていないわね。
ガルマさん自身が影響範囲を限定されたことについては、結界を張ったと明確におっしゃっているわ。つまりマアマさんは別の方法でということかしら。
まぁ、どっちにしてもわかんないわ。
「総合力では遥かにマアマより勝る、シイタの身体を破壊したほどだからな。我ですら想像を絶する」
「あははははは」
笑い事じゃないわよ。呆れて言葉が出ないわ。
ガルマさんが想像を絶するってどれだけなのよ。
「我のように加減を誤ることはないゆえ、安心するがよい」
ハァ。やっぱり人の心情までは察していただけないのかしら。
竜の身体を破壊しちゃったんですよね。ガルマさんですら想像を絶しておられるのですよね。そのようにおっしゃられた直後なのですよ。安心できる要素が一体どこにあるとおっしゃるのでしょうか。
「全然安心できない一言なのですよ。でもきちんと制御していることは理解しました」
要は、マアマさんが意図しない暴発は実質上ありえない、ということなのよね。
それはわかりましたよ。
でも、とんでもないことを意図している可能性は十分にある、ということでもあるわよね。
だって、シイタ様の身体破壊も、大陸の消滅も、すべては意図的だったということですもの。
なら、安心なんて到底できないわ。
結局は全部があたしの責任で抑えないといけないのね。あたしのせいじゃないことなのに、どうしてこうなるのかしら。
ハァ。重責を改めて痛感するわ。
こういうときは…… うん、寝るに限るわよね。
「さっさと食べて寝て、明日早くに出るわよ。大物が暴れでもしたら大変だしスライムとかもいるし」
マアマさんが護ってくださっているから、大丈夫だとわかってはいるわよ。
でも100メートルの魚が暴れるところなんて見たくはないのよね。
いくら護られているとはいえ、スライムに絡まられるのも気持ち悪いわ。
「そうだな。ここは見た目より物騒だ。まだ浮き輪もねぇしな」
お鍋のほうは…… もう実をよそうだけでいいのね。さすがですよマアマさん。
「マアマさんにお願いしたときは、調理の手間もかからないし、おいしいし、いうことなしよね」
「えっへん」
いい子いい子。力がすごいのはさておき、味付けまでも完璧なんてねぇ。
口調と能天気を除けば、さすがは竜神様の代行を務めるお方と、納得せざるをえないわ。
はい、アルフの分をよそったわよ。
「あれ? 魚の骨は?」
骨? 今までにそんなものを欲しがったことはないわよね。
「え。骨は捨てた状態で、切り身だけイメージしたわよ。食べたかったの? それともダシ目的かしら」
ダシならたっぷりと、とれているわよね。
この大きさの魚は骨が硬すぎるから、ふつうは食べないわ。
「いや。捨てたんだったらいいんだ。次からは分けて煮こんでくれると嬉しいな」
「おっけー」
煮込めってことは、やっぱりダシ目的よね。それとも気分の問題かしら。
妙に残念そうね。まぁ次の機会ではマアマさんが配慮してくれるわ。
さて、明日は夜明けにここを出るわよ。さっさと寝るわ。




