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一人称視点版@あたしのせいじゃなーい  作者: わかいんだー
本章~ファンタジックな旅の日常~
16/52

おまけ:救われる怖さ

 ……すんなりと町に着いたわ。アルフが町へ行こうと言ったら本当に町があったわよ。

 この旅では、アルフが口にしたことはよく起こるのよね。とんでもなくアルフに都合がよすぎるわ。本当は行き先がわかっているのに、とぼけているのかしら。

 ……んーん。きっと違うわね。とぼける必然性を思いつかないわ。アルフだけが呼ばれていることと関係するのかしら。今は考えてもわかんないわね。


 さて、ここはどんな町かしら。町並みはふつうだわ。町の人は…… ハァ。まるで時間が止まっているみたいね。風景画を見ている気分だわ。


「早速浮き輪を買っておこう」


 この異様な状況で、よくも買い物のことなんて考えているわね。

 まぁ気にしたところで、どうしようもないとは思うわ。


「そうね……」


 覚悟をしていたとはいえ、やっぱりきついわ。注目のされ方が半端ないわね。それも恐怖にひきつったような顔ばかりよ。

 まぁ、マアマさんを背負った人なんて見かけたら当然よね。あたしだって最初に光を見たときは怖かったもの。事前にお話をしていなければ逃げだしていた自信があるわ。

 ガルマさんはフードをかぶっておられるから、正面から見られないかぎりは竜人だと気づかれないのよね。でもマアマさんは、こっちを見ろと言わんばかりに派手に光っているわ。しかも一度見たら、美しさと恐ろしさで目を逸らしがたいほどの様相なのよ。


 ……見える範囲の人は全員ね。立ち止まって、こっちを凝視しているわ。

 でも、それでも、マアマさんをなにかに包んで隠してしまうのは可哀想だし失礼だとも思うのよね。

 町の人たちには悪いとは思うわ。とはいえ、光で危害を加えているわけではないのよ。勝手な妄想で(おび)えているだけなのよね。早めに慣れて、光を気にしなくなってほしいわ。

 しばらくの間だけは我慢をしてもらうしかないわね。


 あら。なんだか少し暗くなったわ。いや…… これは、マアマさんの光が届かなくなったみたいね。飛んできたゴミでも、マアマさんにかぶっちゃったのかしら。取ってあげなくちゃね。

 ……そんな。ウソよ。武器が光っていないわ。


「え? マアマさん? マアマさんが消えちゃった?」


 マアマさんが消滅すれば、すべての物質は崩壊……

 いやいやいや。あたしもみんなも無事よ。マアマさんが消滅したわけじゃないわ。でもこんなことって…… ガルマさんはいらっしゃるわね。一体なにが――


「大丈夫ー」


 しゃべったわ。マアマさん、無事だったのね。


「びっくりしたぁ。そうか、見た目も物質だから制御できるのですね」

「あはははは」


 考えてみれば当然よね。物質である武器を光らせていたのだから自在に操作できるはずだわ。正直にお願いしておけばよかったわね。


「ありがとうございます。この先どうしようかと悩んでいました」

「べるたー。いいこー」


 あたしの気持ちに気づいて光を消してくれたのかしら。とっても助かったわ。


「武器は盗賊避けとして、威嚇するための見た目が欲しかったんだろ。光っていたほうがいいと思うけれどもな」


 む。言いたいことはわかるわよ。あたしも前に同じようなことを考えたわ。


「そのとおりよ。でも威嚇を通り越して目立ちすぎだったわ。注目浴びていたわよ」


 すべての人を威嚇する意義なんてないわ。あたしの装備を物色するような賊だけを威嚇できればいいのよ。


「あー、たしかに。目立つと逆に狙われる理由にもなるか」


 うんうん。アルフは物分かりがよくなってきた気もするわね。知識が増えているせいなのかしら。


 では気分よく買い物を…… というわけにもいかないみたいだわ。さっきまで武器が光っていたことは覚えられているものね。この町で滞在中の注目は避けられそうにないかしら。

 店員さんも萎縮しているみたいだわ。申しわけないわね。

 って、アルフは無頓着に品定めをしているわ。気をつかえないのはあいからわずなのね。


「魚置き場には、この浮き輪。俺が乗って釣るのには、このビーチマット。それから……」


 それからって、どれだけ買う気よ。本当に役立つかどうかもわからないのにね。今回は御試し用だけでいいわよ。


「とりあえずはそんなもんでいいわよね。店員さん、これでお幾らですか」


 ……もしもーし。顔を伏せていないで、こっちを見てもらえませんかね。

 こりゃダメかしら。身体が震えているわ。


「献上いたします。どうぞ御自由にお持ちください」


 ぶ。献上されるいわれはないわよ。そこまで(おび)えるようなことかしら。マアマさんの力を使って見せたわけじゃないのよ。

 ()に落ちないわね。ほかにも(おび)える要因がなにかあるのかしら。

 とりあえず(おび)える原因はさておき、無料でもらっていくわけにはいかないわ。値札は付いているわね。合計額はこれだけかしら。


「値札の代金分、置いていきますね」

「ははぁ」


 ひょっとして、あたしを見ていたときに、ガルマさんの存在にも気がついたのかしら。

 いや、それだけじゃないわ。マアマさんが宿る前から、あたしが避けられることも増えていたわね。なにか(おび)えられるような要因が、あたしにもあるのだろうと思うわ。

 オリハルコンのせいというのは納得しがたいのよね。だってあたしはオリハルコンなんて聞いたこともなかったのよ。それをみんなが知っているだなんて思いがたいわ。

 でも、ほかの理由は思い当たらないのよね。うーむ。


「ベルタは律儀だな」


 律儀ってなにがよ。勘違いで差し出されたものを受け取れとでもいう気かしら。


「なに言ってんのよ。当たり前だわ」


 次の町からは(おび)えられないはずだし、これ以上この町に居座る道理はないわね。用件は済ませたことだしすぐに町を出るべきだわ。


「さぁ行くわよ」


 後ろ髪を引かれる思いだわ。町といえば宿でベッドがお約束だったのにね。


「おぉ。飯のうまそうな宿がいいな」


 おっとっと。アルフは泊まる気だったんだわ。


「この町は泊まらなくていいわよね? さっさと次へ行くわよ」


 アルフはお風呂にもベッドにも興味がないはずだものね。マアマさんの料理を超えるような食事も期待はできないから、宿に泊まらなくても文句はないはずだわ。


「おぉ? ベッドが恋しくないのか。ベルタらしくねぇな」


 ぐ。そんなことをいっても現状じゃ仕方がないわよ。


「そりゃ恋しいわ。でも、この町では注目浴びすぎていて、いずらいのよ」


 決意が鈍るから言わないで欲しかったわ。

 でもあたしを気遣ってくれたのよね。そこは感謝するわ。

 気をつかうことにかけては成長していないと思っていたのに、そうでもないのね。やっぱりいろいろな面で少しづつ成長しているんだわ。いい傾向ね。


「あとは飯食って寝るだけだろ? そこまで気にすんなよ。もう日が暮れるぜ」


 食べて寝るだけ、ね。たしかに宿の方以外への迷惑はかからないかしら。アルフの言うことはもっともだわ。


「そうよねぇ。気は進まないわ。でも、宿の方には耐えていただきましょうか」


 部屋に入ってさえしまえば、誰に会うわけでもないものね。


「そうそう。あっちも商売なんだから気にすることはねぇ」


 同感よ。本当に恐ろしい客すらも相手にするんだものね。覚悟はあるはずだわ。

 でもそれはあくまでも、商売として成立することが前提なのよ。


「無料奉仕しようとすることを商売とは呼ばないと思うのよね……」


 労働に見合った対価は支払われなければならないわ。

 相手の立場が弱いからと搾取するのなら賊と変わらないもの。

 いや、法の裁きを逃れる分だけ悪質ね。そうなったら人として終わりだわ。


――宿で一夜を過ごし、明朝早々に町を出た。


 せっかくのベッドも、楽しめる気分じゃなかったわね。まぁ、町は出たし、今後はいつもの旅に戻れるのかしら。

 あら。大勢の人影が見えるわね。どうしてかしら、こっちを見ているみたいだわ。


「待ちな」


 え。通せんぼしてきたわ。なによこの人たちは。まともじゃないのはたしかね。ざっと数えられるだけでも100人はいそうよ。

 これは瞬間帰還器でいったん戻ったほうがよさそうね。アルフとガルマさんにも避難を示唆して――


「おっと。逃げてもムダだぜ。町は包囲してある。出てくるまで何日でも待ち伏せるぜ」


 包囲ですって。ここにいる人たちだけじゃないのね。どんだけ大集団なのよ。なんだかすごく眠そうな人もいるわね。昨日からずっと待っていたのかしら。


 瞬間帰還器の飛び先は、最後に通った拠点か、最寄の拠点か、登録済みの1箇所のみなのよね。次の行き先を登録していなければ結局はこの道を通らなければならないわ。あたしたちには行き先がわかっていないから登録済みの瞬間帰還器は購入できないのよね。

 でも、あたしたちが行き先不明の旅をしていることは、この人たちにはわからないはずよ。それなのに一晩中待っていたのだとしたら…… ものすごくマヌケなのかしら。

 でもそのマヌケな行動が、あたしたちにとっては有効打になっちゃっているわ。


 この人数が相手だと賊避けの(わな)アイテムでは処理しきれないわよね。どうしたものかしら。


「逃げてから警備兵を連れてくるぜ」


 またアルフが考えて発言しているわ。感慨深いわね。能天気って治るものなのかしら。


「へへ。警備兵がどこまで追ってくるかね。俺たちは安全なところまで離れて待ち構えるだけさ」


 うーん。どうにも気になるわね。この人たちは、町の人たちとは態度が正反対なのよ。まったく(おび)えた様子がないのよね。

 竜人であられるガルマさんの存在に、いまだに気づいていないのかしら。


「ガルマさんが一緒なのに怖くないのですか」


 あら。ガルマさんの存在を告げても平然としているみたいだわ。


「竜人様が粛清にきていたんだったら、とっくに町は消えているさ。今俺たちが無事ってことは、その気がないってことさ」


 へぇ。ただのマヌケかと思いきや、そうでもないみたいだわ。ある意味では町の人たちよりも、竜人についての理解をしているみたいね。

 でもだからといって、その連れである、あたしたちを狙うだなんて正気かしら。


「ガルマさんは、あたしたちの旅に同行してくれているのですよ」


 マヌケではないのなら、ここまで言われたならわかるわよね。てか、言われなくてもわかってよ。

 実際のところは、ガルマさんに攻撃していただくわけにはいかないわ。あんたたちだけの被害では済まない可能性があるものね。でも結界で護っていただくとかの方法はあるのよ。


「お前らが勝手についているだけだろ。竜人様が人を護るわけねぇ。人同士のいざこざなんざ気にしねぇよ」


 あぁ、そう解釈したのね。たしかに物語の竜人しか知らなければそう思うわ。

 でもガルマさんは――


「たしかに。我が護る理由はないな」


 ぶ。こんな人たちに合わせるだなんて、アルフに合わせるよりもありえないわよ。


「ガルマさん? これも自力で乗り越えるべき苦難なのですか?」


 こんな賊を相手にすることで成長する要素なんてあるのかしら。


「我は以前、マアマに手を出すなと言ったであろう。ベルタの護りは(わな)アイテムに任せよと」


 マアマさんが(わな)アイテムほどには優しくないから、敵を消滅させてしまうということでしたよね。


「はい。ですが(わな)アイテムで対処できる人数では――」


 みんな武装しているし、筋力だけじゃどうしようもないと思うわ。


「もしここで我が手を出したら、この先はマアマの抑えがきかぬぞ」

「ひ」


 じょ、じょ、じょ、冗談じゃないわよ。

 (わな)アイテムが発動する前に、マアマさんが対処しちゃうようになるってことよね。それだけは、なんとしても避けなければならないわ。あたしに危害が及ぶとみなせば、無条件になんでも消滅させかねなくなるのよね。

 ガルマさんは善悪が存在しないとおっしゃっていたわ。当然ながらマアマさんにとっても同じ認識のはずよね。ならば対象に悪意があるかどうかなんて、マアマさんには関係がないはずよ。

 つまり、よろけた人があたしにぶつかりそうになっただけでも、あたしが気づく前に消されることにもなりかねないわよね。それを見て非難する人や、あたしを取り調べようとする官憲もすべて……

 ダメダメダメ。そんなの、あたしのせいじゃないわよ。


「ほらな。竜人様は助けてなんてくれねぇだろ。観念しな嬢ちゃん」


 ……ガルマさんに護っていただくわけにはいかないのね。あたしがどうにかするしかないのよ。できなければ、もう2度と人に会えなくなってしまいかねないわ。


「なにが目的ですか」


 あたしとアルフに、これだけの頭数を集める理由なんてあるのかしら。

 まさか、アルフの出生に関係が――


「町で見たぜ。派手に輝くモーニングスター。今はあんまり光ってねぇが、それオリハルコンてやつだろ」


 あぁ。マアマさん狙いね。やっぱり賊だったわ。変な期待を持たせないでよ。


「なるほど。ベルタの懸念通りになったな。やっぱ光らせるのはよくねぇか」


 こういう人たちには(おび)えて欲しかったのにねぇ。完全に逆効果になっているわ。


「この子は譲れませんよ」


 あんたたちに譲ったりしたら、それこそ世界が終わるわ。


「そいつはお嬢ちゃんが持ち歩くような代物じゃねぇんだよ」


 ハァ。まったくそのとおりよ。どうして、ただの村娘のあたしが、こんなことになったのかとあらためて思うわ。


「それはあたしも自覚していますよ」


 あなた方が譲るに値する人であったなら、マアマさんと武器屋さんに相談をしてから譲ったかもしれないわ。

 でもそうじゃないわよね。あんたたちのような賊の自由にさせないためにも、あたしはマアマさんを手放せないのよ。


「だったら話は早ぇ。こっちによこしな。俺たち全員が当分は遊んで暮らせる代物だ。絶対に頂く」


 よこしなって…… 襲って奪おうとはしないのね。余裕なのかしら。

 んーむ。あたしが差し出すのを待っているようね。


「困っちゃったわ」


 あたしから攻撃をする気にはならないのよね。どうしたものかしら。


「ぶっとばせばいいんじゃねぇの」


 能天気はお気楽でいいわね。


「あんたを殴るのとはわけが違うのよ」


 殴られるまでボケっと突っ立っているのは、あんたと親父くらいのものだわ。


「俺は殴るのに、盗賊は殴らないのかよ。俺の扱い酷くね」


 なにを勘違いしているのかしら。


「この人たちは本気なのよ。一方的に殴らせてくれるわけないわ」


 殴らないんじゃなくて、殴っても当たらないとしか思えないのよね。


「俺は一方的に殴らせなきゃいけないのかよ」


 当然よ。


 でも今はそんなことを言っていないわ。

 ていうか、この緊迫した状況で、くだらない問答をさせないでよね。あたしがこの状況をどうにかしなくちゃいけないのよ。


「あそぶー」


 う。たしかにマアマさんの力をお借りするしかないのかもしれないわ。

 でも、襲ってきた賊に対しては、なにをしてもいいというわけじゃないのよ。犯罪者とはいえ、あたしたちへ危害を加えずに、物だけ盗ろうとしているわ。そんな人たちに、マアマさんの神罰はあまりにも重すぎると感じるのよ。


「マアマさん…… 助けてはほしいわ。でも、盗賊でも消しちゃったりはしたくないのよ」


 機会さえ与えれば、きっと更生してくれると思うのよね。


「大丈夫ー」


 うぅ。どう大丈夫なのかを説明してくださらないと不安で納得はできないのですよ。


「いつもの狩りみたいに、結果をイメージすりゃいいんじゃねぇの」


 あぁ。そうだったわ。イメージ通りにしてくださるのよね。


「結果かぁ。みんなおとなしく警備兵に捕まってくれればいいわねぇ」


 まぁ、ただの夢よ。とりあえずは理想形を考えておいてから、それになるべく近い現実的な方法を――


「おっけー」


 ぶ。即座に了承されたわ。なんとなく思いついただけの理想的な結末なのよ。


「え? そんな適当でいいの? 本当に?」


 具体的な手段なんて考えてはいないわよ。結果のイメージだけしかないわ。


「どっかーん」


 ……信じるわよ、マアマさん。


「覚悟は決まったか? 俺たちが欲しいのはその武器だけだ。素直に寄こせばあとは見逃してやるよ」


 盗賊にしては紳士的な態度と言えなくもないわね。やっぱり根が悪い人たちではないと思うのよ。更生してくれることを願うわ。

 でも、あたしには更生を促す直接的な方法はないのよ。だからどうしても手荒くなっちゃうのは申しわけないと思うわ。とはいえこれは、道を踏み外したあんたたちの自業自得なのよ。


「観念して更生してくださいね」

「へ」


 みなさんが警備兵に捕縛されるイメージをして…… ほいっ。


「バカかお前は。そんなもん振りまわして。俺たち全員を相手にする気か」


 本当にバカですよね、あなたたちは。よりにもよって創造主に手を出そうとするだなんて……


「な? どうなってんだ。身体が動かねぇぞ」


 マアマさんが身体の自由を奪ったのね。さて次は……

 え。また人が大勢増えたわ。

 ……いや、この人たちの装備って、警備兵よね。


「なぁる。町から警備兵を魚みたいに釣ったのか。こりゃ大物だわ」

「あはははは」


 ぶ。警備兵のみなさんをまとめて釣ってしまったのですか。


「な? ここはどこだ?」


 うわちゃ。そりゃ混乱しますよね。いきなり町から釣り上げられたのでしょうから。

 でも、あたしにとっては、まさにイメージ通りの状況だわ。


「そこの盗賊団に襲われています。助けてください」

「なに?」


 証拠はないわ。でも状況を見ればわかるわよね。


「あぁ! 貴様ら、指名手配中の盗賊団! そこを動くな」


 指名手配中ですって。思ったよりも悪党だったのかしら。

 うん、イメージ通りに警備兵が賊を捕えていくわ。賊が微動だにできていないところはイメージ以上ね……


「動きたくても動けねぇんだよ!」


 あっという間に全員を捕縛したみたいだわ。まぁ、無抵抗だものねぇ。

 あんたたちはマアマさんに救われたのよ。道を違えたあんたたちに、道を選びなおす機会を与えていただいたのだからね。しっかりと更生してまともな道を歩きなおしてよ。


「このような者どもでも導く手はあるものだな」


 ガルマさんにも納得していただけたようだわ。

 終わった…… のよね。ふぁ。安心したら力が抜けちゃったわ。


「あぁ…… 怖かった。マアマさんありがとう」


 完璧ですよ、マアマさん。まさに理想通りの展開でしたわ。


「べるたー。よしよしー」


 どうにか乗り切ったわね。マアマさんが(わな)アイテムを無視する危険は、これで回避できたはずだわ。

 あら、警備兵がこっちにきたわよ。


「盗賊退治に御協力いただき感謝します」


 あたしが協力、ね。結果だけを見ればそうなるのかしら。


「いえ、こちらこそ助けていただいてありがとうございます」


 お互いに感謝できるって理想的な結末かしら。


「ところで、われわれはなぜここにいるのでしょう? 町にいたはずなのですが。なにか御存知ですか?」


 う。そりゃ不思議に思いますよね。やっぱり、感謝、感謝で終わりにはならないわよ。

 あはははって笑ってごまかせる状況じゃなさそうだわ。


「はい。その、それはですね……」


 説明すべきだとは思うわよ。でも素直に話すとなると、マアマさんのことを説明しないといけないわ。それは余計にややこしくなりそうよね。

 ガルマさんにどうにかしてもらえないかしら……


「これは竜人様。なるほど、人の所業は人で解決せよとの御采配ですね。お心遣い感謝します」


 あ、あら。ガルマさんに気づいただけで納得されたわ。さすがは竜人様ね。

 でも誤解されたのはまずかったわ。


「すいません。ガルマさんのせいにしちゃったみたいで」


 あたしがガルマさんに目線を送ったから、警備兵が察したのよね、きっと。


「よい。我を理解しておる人などおらぬ。勝手に勘違いさせておけ」


 ……寂しいお言葉だわ。

 今の警備兵だけじゃないのよ。ほぼすべての人がガルマさんのことを誤解しているんだったわ。


「……そうですね」


 あたしなら理解していると申し上げたい。

 でも…… 本当に理解できていたならば大願は成就しているわ。

 現状ではまったく理解できていないはずなのよね。


「でも、あたしは、少しでも理解したいと思います……」


 今のあたしに申し上げられるのは、この程度が精いっぱいなのです。


「べるたー。いいこー」

「うむ。期待しておるぞ」


 御期待にお応えすることは、人を滅びから救うことでもあるわ。この期待は裏切れないのよ。

 もちろん、あたしごときが、なしえる可能性はないに等しいとわかっているわ。それでも伝えられるだけの成果は出さなければならないのよ。


「俺もー」


 さぁ。旅を再開よ。


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