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一人称視点版@あたしのせいじゃなーい  作者: わかいんだー
本章~ファンタジックな旅の日常~
14/52

おまけ:ガルマ覚醒

 ん~、見晴らしのいい盆地ね。見渡すかぎりのお花畑がステキだわ。

 天気はいいし、とっても空気がきれいよ。ピクニックで来たいところだわ。


「こういうところは一日中、寝っころがっていたくなるわね」


 しばらく山の中を歩き続けていたから、気分転換にもいいわ。


「でも肉が来ねぇな」


 ハァ。どこへ行っても、なにを見ても、それしか考えていないのね。


「肉肉肉って。動物とか獣って言いなさいよ」


 というか、食べること以外にも興味を示しなさいよね。


「お? おお。食えない動物はどうでもいいからなぁ」


 あたしもピクニックで来たいとは思ったからあまり偉そうには言えないかしら。

 ……うん、もう陽は高いわね。


「そういえばお昼が近いわ…… でも、携帯食料だけになりそうかしら」


 道中には襲ってくるような獣がいなかったのよね。山菜や木の実も見当たらなかったわ。

 ここも…… 食用として知っている植物は見当たらないわね。

 動物がいるはずとはいえ、虫くらいしか見えないわ。

 設置型の(わな)アイテムを仕かけたところで、いつ捕獲できるのかもわからないわよ。


「あそぶー」


 おっとっと。移動中はマアマさんを放置状態だったわね。


「はいはい。ここなら壊れて困るものもないみたいだし存分に遊べるかもね」


 ストレスの発散は大切だわ。やれるところではしっかりとやっておくべきよね。


「ごはんー」


 あら、マアマさんもお腹が空いていたのね。ならばまずは腹ごしらえ……

 って、そんなわけがないわよ。


「へ? マアマさんは食べられないわよね」


 エネルギーを供給する側だから、食事は要らないって聞いたわよ。


「鳥いっぱいー」


 鳥? ……もしかして、あたしたちの食事用にってことかしら。


「あぁ~。群れなして飛んではいるな。やっぱ弓を使えたらなぁ」


 まったくだわ。鳥は近づいてこないから、罠アイテムも使えないのよね。


「そうねぇ。さすがにあれじゃ遊ぼうにも殴りにいけないわ」


 降りてきたとしても、近づいたら飛んで逃げちゃうわよねぇ。

 マアマさんには別のもので遊んでもらうしかなさそうだわ。


「あそぶー」


 うんうん。リクエストには応えられなくてごめんね。

 なにを狙えばいいのかしら。なるべく自然を壊さずに済むところは……


「温泉の天井を破壊したときは、武器が届く位置から殴ったのか?」


 唐突ですねガルマさん。ここで天井の話をされる意図ってなにかしら。


「え? ……あ、そうでした。マアマさんは遠くでも狙えるんでしたね」


 あんな遠くに飛んでいる鳥をも狙える、とおっしゃっているのよね。

 ……本当にすっごいわ。

 飛ぶ鳥を近接武器で落とすだなんて、誰にも思いつきすらしないわよね。


「お主の着想はすばらしいと感心しておったのに。こんなことに気づかぬとは、わからぬな」


 う。こんなこと、ですか。気づいて当然だったんだわ。

 そんなことをおっしゃってもですね、天井と違って鳥は動いているわけですし、距離も違いますし、えーと、その……


「ベルタは脳筋だからな。なんでも自分にやれることで考えているぞ」


 なによ偉そうに。あんただって気づいてはいなかったわよね。弓がどうのと言っていたんだもの。

 それにしてもノーキンてなにかしら。アルフが知っていて、あたしが知らない言葉なんて、どこで学んだというのよ。アルフに聞くのは恥ずかしいわね。

 でも、あたしにやれることで考える、というのはそのとおりだわ。あたしがみんなを助けられるようになりたいんだもの。

 ノーキンとやらが、そういう意味だとしたら問題はないわね。


「それはすばらしいことだ。だがそのうえで周囲の活用も考えるべきだな」


 ふむ。周囲の活用ですか。

 要は、マアマさんを道具として使うことを意識しろとおっしゃっているのよね。


「そうですね。マアマさんとの遊びもかねて、日課で狩るのはいいかもしれませんね」


 狩りが遊びになるのなら需要は尽きないわ。実益を兼ねて毎日大活躍よね。


「お主はいまだマアマの力を過小評価しておるようだな」


 う。鳥を狩れるだなんて、思い切り高評価をしているつもりですよ。

 でも、そうよね。本来の力は世界創造規模だったわ。

 でもそんなの、想像を絶しちゃっているのよね。まともな評価なんて人には無理よ。あたしのせいじゃないわ。


「なんでもできちゃうのは屋根復元で痛感しましたよ。でも、なにがやれるのかまでは思い至りませんね」


 よもや、ここで世界をつくらせろ、なんておっしゃりはしませんよね。

 ほかにできることって、天井を消したり火をつけたりくらいしか知らないわ。


「すべての物質はマアマの手のうちにあるも同然だ。お主が明確にイメージできるなら、なんでもできよう」


 え…… ガルマさん?

 聞き…… 間違い…… よね……


「なんでも…… ですか」


 それって、もうなにも努力しなくていい、てことよね。

 ガルマさんは人を導こうとしておられるのよ。そんな発言はありえないわ。

 そ、そうよ。ありえないものね。誤解に違いないわ。

 仮に事実だとしても、そんなことをガルマさんが口にされるわけは――


「視界にある木々を黄金に変えることも、夜空に輝く星々を打ち砕くことも――」

「すっげぇ」


 そんな……

 人は苦難を乗り越えるために、努力して成長するのですよね。

 でも、あたしにはもう苦難がない、とおっしゃっているのですよね。

 つまりそれは、あたしにはもう、成長の機会がないと、進化の望みはないと、見限られてしまったのですか……


 黄金がなによ。星を砕けたから、どうだっていうのよ。

 そんなことで、人の滅びを防げるわけはないわよね。

 そんな力なんていらないわ。あたしは、あたしは――


「ガルマー」

「ベルタよ、どうした」


 どうしたも、こうしたも……

 怖い。聞きたくない。でも、でも、問いかけにはお答えをしなくちゃ。

 うぅっ。声を出そうとすると、嗚咽(おえつ)がこみあげてきちゃう。

 どうにかして、声を絞り出さなきゃ。


「あたしには…… もう望みがないのでしょうか」


 ガルマさんのお姿が、涙でにじんじゃって雰囲気も読めないわ。泣いちゃダメ。

 でも、どうしても涙が止まらないのよ……

 人の滅びを防ぐには、もう、ほかの人に頼るしかないんだわ。

 あたしには、どうすることもできないのよ。

 あたしには、みんなを助けられなかったんだわ。

 あたしには――


「ベルタよ。深読みしすぎだ。マアマの力の説明に意識が寄りすぎての失言にすぎぬ。許せ」


 え。見限られたわけじゃないのですか。


「本当に……」


 ガルマさんはお優しいわ。

 泣いてしまったあたしを慰めるための方便かもしれないのよ。

 涙のせいで雰囲気を読めなくて、ガルマさんの真意をつかみづらいわ。


「お主の懸念通りだとすれば、我がここで失言を認めるわけがあるまい」


 ……そうよね。ガルマさんがウソをつかれたことはないわ。答えるべきでないことには、お答えにならないのよ。あたしが怒ろうが悲しもうが理解できまいが、いつも事実を教えてくださっていたわ。

 あたしの懸念、深読み……

 うん。もしも、あたしの懸念通りなら、ほかの人の進化を助けるように導かれていたはずよね。


「……はい」


 よかったわ。本当に。あたしにも望みはあるはずよね。


「こういうところは恐ろしいほどに気が回る。お主は優れておるが、バランスが偏りすぎておるな」


 そうはおっしゃいますが、気を回さなければ危険な状況ではありませんか。

 でも、そうね。早とちりは大失敗だったわ。

 あたしがあまりにも自分の力に頼りすぎていたから、助言をしてくださっただけなのよね。


「申しわけありません。周囲の力を借りることにも配慮するよう、気をつけます」


 そうだわ。ここは安全な村じゃないのよ。それにマアマさんがいるんだもの。

 身を護るためにも、マアマさんの力を借りることには慣れなくちゃね。


「さっぱりわかんねぇな。ベルタはなんで泣いたんだ」


 アルフにも余計な心配をかけちゃったわね。


「あたしにはもう進化の可能性がないって、見限られちゃったのかと思ったら涙が出てきちゃったのよ」


 泣くつもりはなかったのよね。勝手に涙が出てきて止まらなかったのよ。


「そんなことは言っていなかったぞ? マアマの力がすげーって話だった」


 そうよね。でも今までのお話に絡めて、いろいろと考えちゃったのよ。


「あたしたちは苦難を乗り越えることで成長するわ。でもその苦難を取り除け、諦めろと言われたみたいで」


 黄金化に破壊だなんて、まさに滅ぼされた人が求めていたであろう力よね。

 そんなものを例えにあげられたら、同じ道を歩めとおっしゃっているようにしか聞こえなかったわよ。


「あー。なんでも黄金にできるってやつか。でもベルタだったら大丈夫と思ったから言ったんじゃねぇの」

「え?」


 なにを根拠にそう思えるのよ。なにがどう大丈夫だと思えるのよ。

 ガルマさんは、あんたみたいに能天気じゃないわ。


「頼まれなくても勝手に荷物集めて運ぶようなやつがさ。楽な道を選ぶわけねぇじゃん」


 アルフ…… あたしをそんなふうに見ていてくれたのね。

 うん。うん。そっか。

 あたしに教えても、苦難には挑むと思ってくださった、と言いたいのよね。


「あはは。そうだといいな……」


 ありがとアルフ。

 そうよ、あたしは楽をしたいわけじゃないわ。

 みんなを助けて幸せな生活をしたいのよ。そのための努力は惜しまないわ。


「そんなことよりさ、鳥狙おうぜ鳥」

「あそぶー」

「そうね。お腹が空いているから、後ろ向きに考えちゃうのかもしれないわ」


 泣くとお腹が空くのかしらね。あたしも猛烈に食べたくなったわ。


「とりあえずは、あそこに飛んでいる群れをまとめて焼き鳥にしようぜ」

「どかーん」


 あはは。落とすだけじゃなくて焼き鳥にまでしちゃえるのかしら。

 イメージがどうのって話だったわよね。


「まとめて焼き鳥ね。やってやるわよ。マアマさんいくわね」


 焼き鳥をイメージして…… ほいっ。


「消えた」

「え? 消しちゃったの?」


 落ちたわけじゃないわよね。武器を振った途端に見えなくなったわ。


「ジュージュー」


 マアマさん?


――なにかが目の前に振ってきて、反射的に飛び下がった。


「うぉ?」

「きゃ」


 なによ。なにかが次々と降ってくるわ。

 こんな大きな石が頭に当たったら死んじゃうわよ。


「おぉ! 焼き鳥が降ってきた。このまま食えそうだぞ」


 へ。焼き鳥? ……本当だわ。


「あはは…… もう本当になんでもありね」

「あははははは」


 目の前に落として驚かせたのは遊びだからかしら。参っちゃうわ。

 たしかに、焼き鳥のいい香りがするし、適度に焦げた色にはなっているわね。

 って、アルフ?

 ……お塩をかけただけで本当にかぶりついちゃったわ。


「ちょっと。幾ら焼いているからって、羽くらいはむしってから食べないと」


 それにお花畑とはいえ、地面に落ちているのよ。

 接地面くらいは洗ったほうがいいわ。


「むしってあるぞ?」

「へ?」


 ……これ、ただ焼いただけじゃないのね。

 きちんと内臓は取り除いて可食部だけにしてあるわ。血抜きまでしてあるわよ。


「マアマさん、食べられないのに調理までできちゃうのね……」

「えへん」


 それに、接地面もまったく汚れてはいないわ。どうなっているのよ。

 落ちた音はしていたから、少し浮いているとかいうわけでもないはずなのよね。

 調理器具どころか食器すらも要らないんだわ。

 ていうか。強火であぶったとしても、こんなすぐには焼けないわよ。


「理屈じゃないみたいね。ガルマさんのおっしゃったとおり、あたしのイメージをそのまま具現化しちゃうのか」

「あははははは」


 つまりは、変なことをイメージしても具現化しちゃうということかしら。


「遊ぶときは集中して、余計なことは考えないようにしないとダメね」


 ガルマさんが、なんでもとおっしゃったほどなのよ。

 事故の発生を懸念したりしたら、それを具現化されかねないわ。


「大丈夫ー」


 ……そうだったわ、大丈夫なのよね。

 あたしが護りたいものは護ってくれるのよ。


「うん。信じているわよ。いい子いい子」

「べるたー」


 そうよ、変なイメージは排除してくれるはずだわ。

 とはいえ、遊びでやっちゃう可能性があるから注意は必要なのよ。

 それにしても本当に役立ってくれるわね。誰かさんと違って可愛さ倍増だわ。


「おかわり!」


 わざわざ言わなくても、おかわりならいっぱい落ちているわよね。

 ……あら? 落ちていないわ。


「え。あんた、あれだけの量をひとりで食べちゃったの」


 ハァ。誰かさんのほうは本当にダメダメよねぇ。


「いやぁ絶妙の焼き加減ていうの? 幾らでも食える感じだったぞ。鳥は肉が少ないしな」


 アルフがコップの水を飲みほしたわね。水筒を…… あ、そうだ。

 イメージをして…… えい。


「え? うそ」


 ん? アルフったらなにを慌てて構えているのかしら。まぁいいわ。

 やっぱり給水もできたわね。


「マアマさん、すごーい。これで封術紙の残り回数も、いざというときに備えて温存できるわね」

「えっへん」


 いい子いい子。意識を向けるだけで心地よさを感じ取ってくれるらしいから、活躍してくれたときにはきちんと褒めてあげなきゃね。


「へ? なにしたんだ」


 あんたが気づかないでどうするのよ。手に持っているクセに鈍感すぎるわ。


「あんたのコップに水を注いであげたのよ」


 封術紙と違って回数制限もないのよね。便利すぎるわ。


「おぉ。すげぇ」


 うんうん。水のありがたみをわかっていない、あんたにでもわかるわよね。

 すっごいことなのよ。


「行き先不明の旅も、これで随分と楽になりそうね」


 これなら町へ寄れずとも、道中で水や食料が尽きる心配はなさそうよ。

 ほかの消耗品もほとんど不要かもしれないわ。


「でも俺に向ってマアマを使うのは勘弁してくれ。マジで怖いぞ」


 あぁ、それでさっきは慌てていたのね。

 狙っていたのはコップだから、あんたを意識はしていなかったわ。


「あ、ごめん。そりゃそうよね」

「あははははは」


 マアマさんの実力は把握したわ。

 ガルマさんもマアマさんを活用せよとの御意向だし、がんがん使わせてもらうわよ。


「じゃぁあたしとガルマさんの分のお肉いくわよー」

「どかーん」


 鳥は随分と飛んでいるのよね。群れが幾つも見えるから食べ放題だわ。


「俺のおかわりも忘れないでくれ」


 はいはい、わかっているわ。

 イメージして…… ほいっと。

 降ってきた降ってきた。今度はあたしも食べるわよ。どれどれ。


「ん~! おいっしい! アルフのいうとおりね。絶妙な焼き具合よマアマさん」

「えっへん」


 ていうか。おいしすぎるわよ。こんなおいしいものを食べたのは初めてだわ。

 アルフがひとりで平らげちゃった気持ちもわかるわね。

 でもみんなで食べないと…… あら? ガルマさんがまだいらしていないわよ。

 どちらに…… いらしたわ。空を見ておられるだけみたいね。考え事かしら。

 考え事なら、食べながらでもできるわよね。


「ガルマさ~ん。すっごくおいしいですよ。一緒に食べましょうよ」


 食事が不要とはいえ、味わえるとはおっしゃっていたものね。


「うむ。頂くとしよう」


 この肉のさばき方や焼き加減は勉強させてもらわなくちゃね。まさに理想だわ。

 つい食べるほうが夢中になっちゃうわね。


「ふ~、お腹いっぱい。ちょっとお昼寝したくなるわね。アルフ、今から急ぐの?」


 あら? アルフったらどこに…… もう寝息を立てているわ。


「先に寝てんじゃないわよ。まぁちょうどいいかしら。ガルマさん、少しお昼寝でお願いします」

「よかろう」

「おやすみ~」


 泣き疲れちゃったせいもあるのかしら。猛烈に眠いわ……


 ……ん。陽の高さからして2時間ほど寝ていたのかしら。


「ん~、気持ちよかったぁ」

「ぎゃはははは」


 アルフの笑い声?


「ん?」

「ベルタの顔、泥だらけだぞ」


 ぶ。アルフの服や手足も泥だらけね。


「あちゃぁ。うっかり地べたに寝ちゃったわね」


 お花の絨毯(じゅうたん)みたいなところだし、眠かったから、汚れは意識していなかったわ。


「おもしろいからいいんじゃね」


 さすがにもう、泥だらけが微笑ましく見えるほどの子どもじゃないのよね。


「なに言ってんのよ。()れタオルつくるから、身体くらいは拭いておくわよ」


 泥だらけの服は、水場に着くまで我慢するしかないわね。

 きれいな泥だから、乾けば払い落とせるかしら。


「あそぶー」

「そうか。マアマさんがいたっけ」


 マアマさんは、なんでもできちゃうんだったわね。

 あたしとアルフのきれいな姿をイメージして…… ほいっ。

 わぁお。泥を落とすどころじゃないわ。まるでお風呂あがりのようにきれいよ。


「あはははは」

「本当に怖いくらい便利ね」


 服を着たままなのに、全身が洗われたみたいに、さっぱりとしているわよ。

 服なんて洗濯した後というよりも、まるで新品みたいだわ。


「神様みたいなもんだしな」


 ぐへ。


「そうよね。本当に創造主なのよ。実感が湧かないとはいえ。あたしは、なんておそれ多いことしてんのよ」


 実質的には、狩りと炊事と洗濯を神様にやらせていたということなのよね。

 自己嫌悪に陥りそうだわ。


「マアマがやりたがっているときは気にしなくていいと思うぞ」


 ……声をかけてくださったのはマアマさんのほうからだったわ。


「……そうね。マアマさんに満足してもらえるような遊びは必要なのよ」


 マアマさんとの遊びが大切とはいえ、なんでも頼むのはやっぱり失礼よね。

 程度の問題だとは思うわ。でもどの程度自制すればいいのかしら。悩ましいわ。

 まぁ、とりあえずは旅を再開ね。歩きながら考えればいいわ。


「次は魚を食いたいな」


 いくら食べることばかりを考えるとはいえ、さすがに今はないわ。


「お昼寝の前に食事したばかりよ」

「今じゃなくて夕飯」


 夕食時に魚を捕れることがわかっているとでもいうのかしら。


「それまでに水場があればいいわね」

「んじゃ出発するか」


 スルーされたわ。

 肉ばかりを欲しがるアルフが魚を口にするだなんて、ちょっと気にかかるのよね。


「この先に川か湖でもあるの?」


 見渡せる範囲には、それらしい景色がないのよね。


「そんなの俺が知っているわけねぇだろ」


 やっぱり、ただの能天気だったわ。


「じゃぁ魚を食べたいなんて、わがまま言わないでよ」


 てっきり、魚を捕れるめどがあるのかと思ったわ。


「それなんだけれどもさ。あれ、なんに見える?」


 あっちの次はあれなのね。なにがあるっていうのよ。

 へ…… 魚だわ。たしかに魚が一匹だけ泳いでいるわね。


 空中を。


「……魚」

「だよな」


 いや、自然に受けいれないでよね。


「どうして魚が宙を泳いでるのよ!」

「俺に言うなよ。またマアマがなんかしたとか?」

「しらなーい」


 魚って空を飛べたのかしら。

 あ。鳥が魚をめがけて滑空してきたわ。

 へ。

 ……なによ今のは。魚から網が飛び出したように見えたわ。鳥を捕獲しちゃったわよ。


「おぉ」

「なによ! あの魚おかしすぎるわ」


 あ。物陰から人が出てきたわよ。

 ……網から鳥を取り出しているわね。また魚が空中を泳ぎだしたわ。


「魚で鳥を釣っているのか。新型の(わな)アイテムか?」

「発想はいいかもしれないわよ。でも、水場でやるべきよね、あれ。シュールすぎるわよ」


 (わな)アイテムの仕様は、どんな人が考えているのかしらね。

 今までに想像していたようなすごい人とは、ずれているのかもしれないわ。


 あら? なんだかガルマさんに凝視されている気がするわね。気のせいかしら。

 なにかをおっしゃりたそうに見えるわね。でもガルマさんが発言を控えられる理由なんて……

 あぁ、失言を気にしておられるのかしら。

 ガルマさんを困惑させちゃっただなんて、本当にあたしはダメね。

 早とちりする前に確認するクセをつけないといけないわ。


 盆地はここまでなのね。あたしの失敗を除けば、いいところだったわ。

 いっぱい食べて、お昼寝して、さっぱりもしたものね。

 マアマさんとの遊び方もわかってきたし、今後はしっかりと頼らせていただくわ。

 さぁ、気分も新たに旅を再開よ。


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