第42話 百合の絶頂
爪のケアで完全に防壁を壊したところで、俺はもう一つの特注品、黄金色の『温感クリーム』を指先にたっぷりとすくい取った。そして、二人の掌の中央にぷっくりと膨らむ、獣人特有の柔らかな『肉球』へと指を滑らせた。
温感クリームがハーブ湯の熱と反応し、ジンジンとした熱を帯びながら肉球の角質を急速にふやかしていく。
「ひゃああっ! 熱い……肉球が、すっごく熱いよぉっ……!」
「ここが獣人の最高の性感帯なんだろ。全身の感覚器官が集中してるセンサーを、俺が直接揉み潰してやる」
俺の親指が、ふやけて無防備になったルナとメリーの肉球の奥底――深層神経のど真ん中を、イボ付き手袋以上の絶妙な圧でグッと押し込んだ。
「あ、あぁぁぁぁっ!!」
「ひぐぅっ……! ヒカル先輩っ、ヤバいっ……! 頭が、頭がおかしくなるぅっ!!」
ドバッ、とお湯が激しく波打つ。
脳に直接快感の電極をぶち込まれた二人は、俺の腕の中でガクガクと激しく痙攣し始めた。
「あぁんっ……! 肉球の奥から、先輩の匂いが……直接、入り込んでくるぅっ……!」
「むりっ、もう無理ぃっ……! 全部、全部出ちゃうぅっ……!」
白目を剥きかけ、口から涎を垂らしながら身をよじらせる二人。だが、俺はここで終わらせるつもりはなかった。今日ここへ二人を呼んだ本当の目的は、この快感を使って二人の絆を再結合させることだ。
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「ただ気持ちよくなるだけじゃダメだ。お前たちのそのこじれた熱を、直接ぶつけ合え」
俺は後ろから二人を抱え込んだまま、ルナとメリーの体を強引に向かい合わせにした。
「えっ……? あぁっ……」
お湯の中で、ルナの真っ白で繊細なウサギの毛並みと、メリーのモコモコとしたヒツジの毛並みが、たっぷりと水分とフェロモンを含んだ状態でぴたりと密着する。
俺の熱い胸板と腕のホールドによって、二人は逃げ場のないゼロ距離で肌を擦り合わせることになった。
「メ、メリー……っ」
「ルナ……っ」
至近距離で見つめ合う二人。その瞳は、俺のフェロモンと肉球マッサージの快感によって、完全にドロドロに蕩けきっていた。
「お互いの熱を感じろ。お前たちが本当はどれだけ触れ合いたかったか、俺の匂いごと全部混ぜ合わせてやる」
俺は二人の肉球を重ね合わせ、俺の両手で外側から包み込むようにして、さらに強い圧で揉みしだいた。
「ひゃあぁぁっ!! ルナの毛が、肌が……すっごく熱いぃっ……!」
「メリー……メリーの匂いと、ヒカル先輩の匂いが混ざって……あぁっ、頭が弾けそう……っ」
俺の「完全なオスのフェロモン」が強力な接着剤となり、二人の心の中にあった嫉妬や罪悪感を、圧倒的なメスとしての欲情と愛情で塗り潰していく。
「ごめんね、ルナ……っ! 私、ルナだけが気持ちよくなったのが羨ましくて……意地悪して、ごめんなさい……っ!」
メリーが泣きじゃくりながら、ルナの華奢な肩にすがりついた。
「私の方こそ……ごめんね、メリー……っ。私、メリーにずっと触れたかった……ヒカル先輩の手も気持ちいいけど、私はメリーと一緒に気持ちよくなりたかったの……っ!」
ルナも涙をポロポロとこぼしながら、メリーの豊かな胸に顔を埋めた。
「なら、その気持ちを全部吐き出せ」
俺が肉球の神経を最高潮の強さで抉り抜いた瞬間だった。
「ルナぁっ……!」
「メリー……っ!」
限界を迎えた二人は、お湯の中で激しく抱き合い、お互いの唇を貪るように熱烈なキスを交わし始めた。
チュパッ、チュルッ……!
静かな温室に、生々しい水音と甘い喘ぎ声が響き渡る。
ルナの小さな手がメリーの背中を掻き毟り、メリーの腕がルナの腰を強く引き寄せる。俺の肉球マッサージがもたらす絶頂の波と、二人自身の百合の愛情が完全に融合し、かつてないほどの巨大な快感の渦が彼女たちを飲み込んでいった。
「あ、あぁぁぁぁぁっ!!」
「んんぅぅっ……!!」
バシャンッ!! とお湯が大きく跳ねた。
俺が横から抱えている二人は唇を重ね合わせたまま、互いの体をきつく抱きしめ、背中を弓なりに反らせて同時に完全なる絶頂を迎えた。
俺の腕の中でガクガクと痙攣しながら、二人は長い時間、甘い余韻の中でお湯に溶け落ちていった。
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狂乱のバスタブから上がり、二人の体をタオルドライしてやった後のことだ。
公認サロンの待合室にある広いソファの上で、ルナとメリーはぴったりとくっついて座っていた。
「メリーの毛並み……お湯に入ったのに、すっごくフワフワでいい匂い……えへへ」
「ルナの爪も、ピカピカで桜貝みたい。すっごく可愛いよ……ちゅっ」
裸にバスタオルを羽織っただけの無防備な姿で、二人はお互いの手を握り、綺麗に整えられた爪と、クリームで艶々になった肉球を愛おしそうに撫で合っている。
その表情には、もう微塵のわだかまりもなかった。以前のような純粋な愛情だけでなく、俺のフェロモンという劇薬を共有したことで、どこかアブノーマルで、さらに深く濃厚な絆で結ばれ直したことが、その蕩けた瞳から痛いほど伝わってくる。
(……ふぅ。これで、俺の罪滅ぼしは完了だな)
服を着直した俺は、温室の壁に寄りかかりながら安堵の息を吐き出した。
学園を狂わせた代償の一つを、無事に清算することができた。俺のゴッドハンドは、獣人の体だけでなく、こじれた心までトリミングできると証明できたわけだ。
だが、俺が満足げに頷いていた、その時だった。
ソファでいちゃついていた二人が、ふいにピタリと動きを止め、こちらを振り返った。
「ねえ、ヒカル先輩」
ルナが、トロンと潤んだ、少し底知れない暗みを持った瞳で俺を見つめてくる。
「今日のスペシャルケア、本当に最高でした。私とメリー、前よりもっともっと、お互いのことが好きになれました」
「ええ。ヒカル先輩のおかげです」
メリーもモコモコの体をルナに寄せたまま、甘く、そしてどこか執着に満ちた声で囁いた。
「だから……これからは、ヒカル先輩も『一緒』じゃないとダメですね」
「……え?」
俺の背筋に、冷たい汗がツーッと流れ落ちた。
「そうだよね、メリー。私たち二人の間に、ヒカル先輩の熱と匂いがないと、もう満足できない体になっちゃったもんね」
「ふふっ、これからはずっと、ヒカル先輩も一緒に三人で……ドロドロになるまで気持ちよくなろうね、先輩?」
二人の小動物は、純粋無垢な笑顔の裏に、底なしの『共依存の沼』を隠し持って俺に微笑みかけていた。
彼女たちの絆を修復するつもりが、俺自身のフェロモンを介入させたことで、俺を含めた『三人で一つ』という、抜け出せない異常な愛のループを作り出してしまったのだ。
「……お、お前ら、それはちょっと……」
俺が後ずさりしようとすると、二人はソファから立ち上がり、バスタオルをハラリと床に落として、妖しい笑みを浮かべながら俺ににじり寄ってきた。
「待ってよ、先輩。まだ、肉球のクリーム……残ってるでしょ?」
「今度は私たちが、先輩のお手入れをしてあげますから……ね?」
エリート令嬢たちの狂乱とはまた違う、静かで、しかし絶対に逃げられない底なし沼。
俺は自分のしでかした業の深さに絶望しながらも、迫り来る二匹の小動物の甘い香りと柔らかな肌の感触に、男としての本能を激しく揺さぶられ、完全に退路を断たれるのだった。




