第41話 海パン
ルナとメリーが、思わずといった様子でお互いの顔をチラリと見た。その瞳の奥には、まだ確かに相手への深い愛情が燻っているのがわかった。
「そうだ。そのために、まずは俺から『誠意』を見せる」
俺はそう言うと、着ていたシャツのボタンに手をかけ、一気に脱ぎ捨てた。
「えっ……!? ひ、ヒカル先輩!?」
さらにスラックスのベルトを外し、ズボンも床に落とす。
あらわになったのは、この狂った学園のサバイバルを生き抜き、日々の過酷なマッサージで鍛え上げられた、無駄のない引き締まった大胸筋と、綺麗に割れた腹筋。
そして、俺が身につけているのは、黒い海水パンツ一枚だけだった。
「ひゃああっ……!」
ルナとメリーが顔を真っ赤にして、両手で目を覆った。だが、その指の隙間からは、俺の裸の肉体を食い入るように見つめる熱い視線が漏れている。
服というフィルターが完全になくなったことで、俺の毛穴という毛穴から『完全なオスのフェロモン』が、今まで以上の濃度で爆発的にサロン内に解き放たれたのだ。
ドクンッ、と。草食獣人である二人の心臓が、恐怖と、それ以上のメスとしての欲情に激しく跳ねる音が聞こえた。
「はぁっ……はぁっ……ヒカル先輩の、生の体の熱が……っ。それに、この暴力的なオスの匂い……っ」
メリーのヒツジのモコモコとした毛並みが、ゾワゾワと粟立つ。ルナのウサギ耳はピンと張り詰め、呼吸が浅く、荒くなっている。
「今日は特別だ。奥のシャンプー台じゃなく、あっちの大きなバスタブを使う」
俺は親指で、温室の中央に特別に用意した、三人でも余裕で入れるほどのパリピ用の巨大なジャグジー付きバスタブを指し示した。そこには、リラックス効果と血行促進を極限まで高める特製のハーブ湯が、たっぷりと張られており、湯気とともに官能的な香りが立ち込めている。
「さあ、ルナ、メリー。お前たちも服を脱げ。あのバスタブの中で、俺の素肌と匂いを至近距離で浴びながら、最高の時間を与えてやる」
俺の海パン姿という視覚的な破壊力と、むせ返るようなフェロモン、そしてバスタブから立ち上るハーブの熱気。
理性を焼き切るには十分すぎるほどの舞台装置に、ルナとメリーはもはや抵抗する気力すら失っていた。
「あ……ぁ……はいっ……」
「ヒカル先輩の、言う通りに……っ」
二人は潤んだ瞳で俺を見つめ返したまま、まるで操り人形のように、ゆっくりと自分たちの衣服に手をかけた。
ファサ……と、ルナのワンピースが落ちる。メリーのニットとスカートが滑り落ちる。
純白のウサギの毛並みと、豊満なヒツジの曲線が、湯気に包まれた密室に露わになった。
「よし。お湯に入るぞ」
俺は二人の手を取り、ちゃぽん……と、特製ハーブ湯の張られたバスタブへとゆっくり足を踏み入れた。
広いバスタブの中央。たっぷりと張られたハーブ湯が、三人分の熱とむせ返るようなオスのフェロモンを閉じ込めて白く湯気を立てている。さらに、ジャグジーのスイッチを入れ、無数の泡が俺たちの体を包み込む。
「俺の前に、背中を向けて二人並んで座れ」
「あ……はいっ……」
「こんなの、初めて……っ」
俺がバスタブの縁を背にして腰を下ろすと、ルナとメリーは顔を真っ赤にしながら、俺の足の間に収まるようにして並んで座った。
俺は背後から二人を同時に包み込むようにして、両腕を大きく前に回した。
「ひゃんっ!?」
「あぁっ……!」
お湯の中で、俺の海パン一丁の引き締まった腹筋と胸板が、二人の濡れた背中にピタリと密着した。
服というフィルターを通さない、生身のオスの圧倒的な体温。そして、お湯の熱によって爆発的に揮発したフェロモンが、二人の鼻腔から脳髄へと直接流れ込んでいく。
「はぁっ……はぁっ……ヒカル先輩の体が、直接……っ。熱い、熱すぎます……っ」
「息が……できなくなりそう……っ」
二人のウサギ耳とヒツジ耳が、震えるようにピクピクと痙攣している。
「リラックスしろ。今日は毛並みじゃない。お前たちが今まで誰にも触らせたことのない、一番奥の神経を解きほぐしてやる」
俺はクロエから受け取った特注のアイテム――先端が極端に細く滑らかに加工された爪ヤスリを手に取った。そして、俺の腕の中で震える二人の小さな『手』を、優しく、しかし逃げられないようにしっかりと握り込んだ。
獣人の手には、人間と似た指の先に、動物特有の鋭い爪が隠されている。その爪の生え際――甘皮の奥は、獣人にとって神経が剥き出しに近い、最大の急所だ。
「いくぞ」
俺はゴッドハンドの絶妙な力加減で、ヤスリの先端をルナの爪の生え際へとそっと這わせた。
「ひぎぃっ……!?」
ルナの体が、お湯の中でビクンッ! と弾け飛ぶように跳ねた。
「な、なにこれ……っ!? 指先から、電気が……っ! 頭のてっぺんまで、突き抜けて……っ!」
「動くな。メリー、お前もだ」
俺はもう片方の手で、メリーの爪の甘皮をミリ単位の精度で押し広げ、ヤスリで優しく摩擦していく。
「あぁぁぁっ! だめっ、そこ、ダメェッ! 爪の奥が、ジンジンして……っ、お腹の下まで響いてくるぅっ……!」
普段は分厚い角質に守られている指先の最深部を、俺のフェロモンをたっぷり吸い込んだゴッドハンドで直接弄り回される感覚。それは、彼女たちの理性を一瞬で真っ白に吹き飛ばすほどの、未知の快感だった。
「はぁっ、はぁっ……先輩の指……っ。爪の先が、溶けちゃうぅっ……!」
二人は俺の胸に背中を預けたまま、だらしなく口を開けて甘い喘ぎ声を漏らし始めた。
「まだまだ、これからが本番だ」




