第33話 ライブ配信
ドンッ! バンッ! ガリガリガリッ!
旧校舎の第4温室跡の頑丈な扉が、外から凄まじい勢いで叩かれ、引っ掻かれていた。
「ヒカルゥゥッ! 開けてくれェッ! お前の匂いが、お前の指がないと、もうダメなんだァッ!」
「ヒカル様ぁっ! 私をしつけてくださいぃっ! ワンッ! クゥ~ン!」
分厚い扉の向こうからは、ルプス家のシルヴィや元生徒会長のレティシアをはじめとする、学園のトップに君臨するエリート令嬢たちの狂乱した叫び声が響き続けている。極上の快感とフェロモンを絶たれ、禁断症状に陥った彼女たちは、もはや理性を完全に喪失した飢えた猛獣の群れと化していた。
俺は積み上げられたバリケードを一瞥し、ふぅ、と深く息を吐き出した。
(さあ、ここからが本当の反逆の始まりだ)
傍らに置いたノートパソコンから、一条葵の冷静な声が響く。
『ヒカル、準備は完了したわ。マダム・バクと狐塚ランの裏ルートを使って、全国の獣人たちがアクセスする裏掲示板や非合法サイトに、ライブ配信のURLをゲリラ的にばら撒いた。すでに同時接続数は数万を超えているわ。いつでもいけるわよ』
「上出来だ。葵、サンキュー」
俺はパソコンの画面から視線を外し、部屋の隅で震えている漆黒のタクティカルスーツに身を包んだエージェント・キャット――セリア・シャノワールに向き直った。
「セリア、お前はカメラマンだ。俺の技術のすべてを、このカメラに収めろ」
「わ、私がですか……っ? 国家の密偵である私が、こんな違法すれすれのライブ配信の片棒を担ぐなんて……っ」
「嫌なら、外にいる発情した猛獣どもの群れに放り込むぞ」
「っ……! や、やります! やらせていただきますっ!」
セリアにライブ配信用のビデオカメラを押し付けると、俺はカッターシャツのボタンに手をかけた。
パツン、パツンとボタンを外し、そのままシャツを脱ぎ捨てる。
「え……っ、ヒカル?」
バスタブの前の椅子で待機していた幼馴染のミオが、目を丸くして俺の裸の上半身を見つめた。
俺の肉体は、ただの非力な人間の小僧ではない。男性であるとカミングアウト後にこの学園でのサバイバルを生き抜くために鍛え上げられた、無駄のない引き締まった筋肉へと進化させた。胸板は厚く、腹筋は綺麗に割れ、肩から腕にかけての筋肉の筋が浮かび上がっている。
そして何より、服という枷を外したことで、俺の毛穴という毛穴から『完全なオスのフェロモン』が、今まで以上の濃度で爆発的に密室へと解き放たれたのだ。
「なっ……! あぁっ……!」
カメラを構えようとしたセリアが、強烈な匂いの直撃を受けて膝をガクンと揺らした。
「はぁっ、はぁっ……ヒカル様の、生のオスの匂いが……っ。それに、その逞しいお体……っ。カメラ越しに見ているだけで、頭の芯が痺れて……あぁんっ」
セリアの黒猫の耳がピクピクと痙攣し、制服のスカートの裏で尻尾が狂ったように揺れ始める。彼女は自身の理性が溶けそうになるのを必死に堪えながら、震える手でカメラの録画ボタンと配信スイッチを押した。
「さあミオ、お前の番だ。制服を脱ぐんだ」
「う、うん……っ」
ミオはすでに俺のフェロモンに当てられ、潤んだ瞳で顔を真っ赤にしながら、ゆっくりと桜華学園の制服と下着を脱ぎ捨てた。全裸になり、豊かな胸を両手で隠しながらシャンプー台の椅子に座る彼女の姿が、全国の獣人たちに向けて配信され始める。
「いくぞ!」
俺は特注のイボ付きゴム手袋を両手にはめ、シャワーの適温のお湯でミオのプラチナの毛並みを濡らしていく。そして、特製シャンプーをたっぷりと泡立て、彼女の首筋から猫耳の裏側へと指を滑り込ませた。
今回は、普段の施術とは違う。画面の向こうの獣人たちに、俺の存在と圧倒的な『熱』を見せつけるためのパフォーマンスだ。
俺はミオの背後に回り込み、裸の胸板を彼女の背中にピタリと密着させた。
「にゃひゃんっ!?」
ミオの肩が大きく跳ねた。俺の高い体温と、むせ返るようなオスのフェロモン、そして汗ばんだ大胸筋が、彼女の無防備な背中に直接擦り付けられる。
「ヒ、ヒカル……っ! ち、近いよ……裸で、そんなにピタってくっつかれたら……っ」
「動くな。全国の獣人たちに、俺のゴッドハンドがいかに極上かを見せつけるんだ。協力してくれるだろ?」
俺の口元がミオの敏感な猫耳に触れるほどの至近距離で囁くと、彼女はゾクゾクと全身を震わせた。
「あぁんっ……ヒカルの汗の匂い……すごく、オスの匂いが濃くて……頭が、おかしくなっちゃうぅっ……!」
イボ付き手袋の突起が、ミオの分厚い皮膚の奥にある神経節を容赦なく抉る。背中に張り付いた俺の筋肉の躍動が、マッサージの圧力をダイレクトに彼女の体内へと伝えていく。
俺の額から滴り落ちた汗が、ミオの白い肌にポタリと落ち、艶やかな毛並みを伝って滑り落ちる。その生々しくもエロティックな光景を、セリアが荒い息を吐きながらカメラで執拗に舐め回すように撮影していた。
「ひぐぅっ……! ヒカルの指……いつもより、激しい……っ。あぁっ、だめ、見られてるのに……全国の人に見られてるのにぃっ……!」
ミオの口から、羞恥と快感が入り混じった、極上に甘い悲鳴が上がる。何万という見知らぬ獣人たちの視線に晒されているという異常な羞恥心が、逆に彼女の発情を限界まで加速させていた。




