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男女獣比1:100:1000のモフ界転生 ~トリマー無双でエリート獣人を骨抜きに。最底辺の俺が自由を求めて下剋上~  作者: 団田図


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第27話 完璧なデータ

「筋肉の奥の疲労が完全に抜け落ちた今の状態。そして、完全なオスの手によるディープマッサージの味は、どうだった?」


 ウルサは焦点の合わない瞳でカメラを見つめ、だらしなく開いた口から熱い吐息を漏らしながら、ゆっくりと答えた。


「はぁっ……はぁっ……こんなの、初めて……っ。体の芯から、全部が軽くなって……っ」


 彼女は自分の艶やかになった茶褐色の毛並みを震える手で撫でながら、恍惚とした笑みを浮かべた。


「最高に……最高に気持ちよかったぁ……っ。ヒカルくんの手がないと、私、もう生きていけないよぉ……っ」


「素晴らしいコメントね。生体モニターの数値も完璧よ。筋繊維の回復度が異常なスピードで跳ね上がっているわ」

 葵は満足げにカメラの録画を止め、パソコンのキーボードを叩いた。

 俺はウルサの頭を優しく撫でながら、確かな手応えを感じていた。これで明日の結果次第では、完璧なデータが揃う。


 +++


 翌日の体育の授業。全学年合同で行われる、体力測定の場だった。

 グラウンドは、信じられない光景を目の当たりにして水を打ったような静寂に包まれていた。

「……5秒8……! 50メートル走、学園記録更新!」

「砲丸投げ、25メートル……! これ、世界レベルの記録じゃないか!?」

 教師たちの震える声が響く中、トラックの中心に立っていたのは、見違えるように美しいシルエットと、黄金色に輝く茶褐色の毛並みを手に入れたウルサだった。


 彼女の巨体からは以前の重苦しさは完全に消え去り、まるでバネのようにしなやかで爆発的な躍動感に満ちていた。

 深層の疲労が完全に除去され、関節の可動域が限界まで広がった彼女のポテンシャルは、まさに「リミッターが解除された猛獣」そのものだった。


「すごい……体が羽みたいに軽い……!」


 ウルサ自身も自分の両手を見つめ、信じられないというように呟いている。

 周囲の女子生徒たちは、彼女の圧倒的な記録と、何よりもその「美しすぎる毛並み」に釘付けになっていた。コンプレックスの塊だったウルサは今、誰よりも輝くエリート獣人としてグラウンドに君臨していた。


「見たか、葵」

 グラウンドの端で、俺は隣に立つ葵に声をかけた。

「ええ。これで完璧よ。ヒカルの施術は、獣人の肉体労働の作業効率を劇的に、しかも即座に引き上げる。これは国家のインフラ建設や軍事力向上において、計り知れない経済効果をもたらすわ」

 葵は手元のタブレットにウルサの測定記録をリアルタイムで入力しながら、冷徹に微笑んだ。


 +++


 その日の夜、俺の家のリビング。

 俺は母である志保の冷徹な顔と対峙している。

 葵の手によってまとめられたデータファイル――『フェロモンと特殊手技による獣人の発情期ヒート鎮静化および労働効率の劇的向上に関する臨床報告』をチェックする志保。


「……データは確認したわ。素晴らしいわね、ヒカル。これほど完璧な実証データがあれば、保守派の人間たちもぐうの音も出ないわ」

 志保は、満足げに頷いた。

「シルヴィ・ルプスの発情期ヒート鎮静データは、軍事や警察機構の暴走リスクを抑える『治安維持の要』になる。そしてウルサ・ベアードの能力向上データは、国家インフラを支える『労働力の底上げ』を約束する。どちらも、国が喉から手が出るほど欲しい利益よ」


「これで、俺をただの遺伝子供給奴隷として一生隔離するなんて馬鹿な真似はできなくなるってことだな」


 俺が言うと、志保は眼鏡の位置を直し、鋭い視線を送ってきた。

「ええ。あなたを無菌室に閉じ込めておくのは『国家的な損失』だと、このデータが証明している。あなたは、社会に出て直接獣人たちに施術を行う『専門家』として扱われるべきだという法案を通す準備が整ったわ」


「頼むよ、母さん。俺は、俺自身のサロンを合法的に開く権利を勝ち取る」

「任せておきなさい。プランBを、次のフェーズへ移行するわ」

 家族会議が終わり、部屋に静寂が戻る。


 俺は自室の窓から、セントラル特区の夜景を見下ろした。

 学園のトップ層である生徒会長のレティシア、ライオン系のレオナ、オオカミ系のシルヴィ、そしてスポーツ界のウルサ。

 さらに、裏社会を牛耳るマダム・バクに、情報を司るラン、道具を作るクロエ。そして俺の監視役であるポンコツエージェントのセリア。


 俺の周囲には、すでに国家を揺るがすだけの手駒が揃っていた。

「底辺の人間のオスが、どこまでやれるか……見せてやるよ」

 俺は窓ガラスに映る自分自身の顔に向かって、不敵な笑みを浮かべた。

 非人道的なルールに縛られ、搾取されるだけの運命など、俺のゴッドハンドとフェロモンで全て書き換えてやる。

 学園という小さな箱庭でのカースト支配から始まった俺の戦いは今、国家システムそのものを標的とした、壮大な下剋上へとそのスケールを拡大しようとしていた。


 それから季節は巡り、俺は高校3年生の冬を迎えた。レティシアやウルサたち上級生はすでに卒業したが、名家の特権やOGの肩書を使って毎日のように学園に入り浸っている。俺自身の卒業と、強制収容のタイムリミットが目前に迫っていた。

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