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男女獣比1:100:1000のモフ界転生 ~トリマー無双でエリート獣人を骨抜きに。最底辺の俺が自由を求めて下剋上~  作者: 団田図


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第24話 臨床データ収集

 生徒会長であるレティシアを完全に服従させ、『飼い犬』としたことで、俺の学園内における自由な活動基盤は盤石なものとなりつつあった。

 だが、これだけでは根本的な解決にはならない。俺が十八歳になり卒業を迎えれば、特別指定男性保護法に基づき、国家の施設へ強制収容されてしまう。その運命を覆すためには、学園のルールを支配するだけでなく、国家という巨大なシステムそのものを動かす必要があった。


 放課後の空き教室。俺は常に冷静沈着な人間のクラスメイトの協力者、一条いちじょうあおいと共に、ノートパソコンの画面に向かっていた。

 画面の向こうに映っているのは、政府機関の官僚であり、俺の生物学的な母親である志保しほだ。厳重に暗号化された通信回線を使い、水面下で進めている『プランB』の打ち合わせを行っている。


「……ヒカル、学園のトップ層を籠絡ろうらくしつつあるようね。でも、それだけでは国は動かないわ」


 画面越しの志保の瞳は、母親としての情を一切排した、冷徹な官僚のそれだった。

「非人道的な隔離から逃れるためには、感情論や名家の権力だけでは不十分よ。国の上層部を黙らせるだけの、『ヒカルを専門家として社会に置く方が、国家の利益になる』という確たる証拠……客観的なデータが必要なの」


「データ……」


 俺が呟くと、隣に座っていた葵が眼鏡のブリッジを押し上げながら口を開いた。

「ええ。すでに仮説は立っているわ。ヒカル、あなたの『完全なオスのフェロモン』と『プロのトリミング技術』は、獣人たちの発情期ヒートの凶暴性を劇的に鎮静化させている。もしこれを数値として立証できれば、あなたはただの『遺伝子供給奴隷』ではなく、国家の治安維持に関わるインフラ的な価値を持つことになるわ」


「なるほど……獣人の発情期ヒートによる労働力の低下や暴走は、国にとっても大きな損害だからな。それを俺がコントロールできると証明するわけか」


 俺の言葉に、志保は小さく頷いた。

「その通りよ。葵さん、彼をサポートして完璧な臨床データを集めてちょうだい。それが、ヒカルの自由を勝ち取るための最大の武器になるわ」


 通信が切れ、ノートパソコンの画面が暗転する。

 俺は葵と顔を見合わせた。

「やるしかないな。ターゲットの心当たりはあるか?」

「ええ、最適な被検体が一人いるわ。軍事・警察を掌握するルプス家のオオカミ系令嬢……シルヴィ・ルプスよ。彼女、ここ数日発情期(ヒート)が近づいていて、極度にイライラしているの。計測にはもってこいだわ」

 葵の口元には、冷徹な観察者としての笑みが浮かんでいた。


 +++


 翌日の昼休み。

 俺は中庭のベンチで、一人険しい顔をして座っているシルヴィを見つけた。

 オオカミ系獣人である彼女は、普段はクールで孤高を貫いている。だが、今の彼女からは隠しきれない殺気が漏れ出しており、周囲の草食獣人たちは怯えて遠巻きにしている状態だった。

 発情期ヒートのストレスに耐えかね、彼女の銀色の尻尾の毛は逆立ち、時折鋭い牙が覗いている。


「よお、シルヴィ。随分とご機嫌斜めじゃないか」

 俺があえて軽い口調で近づくと、シルヴィは血走った目で俺を睨みつけた。


「……神浦かみうらヒカル。今の私に不用意に近づくな。噛み殺されたいのか」

 低く唸るような声。だが、彼女の鼻がヒクヒクと動き、俺の体から漂うオスのフェロモンを無意識に嗅ぎ取っているのがわかる。


「噛み殺す? そんな余裕があるようには見えないけどな。発情期ヒートのイライラで、頭がおかしくなりそうなんだろ?」


「貴様っ……!」

 シルヴィが立ち上がり、俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。だが、その手は俺の胸に触れる直前で、ガタガタと震えて止まった。

 至近距離で浴びる俺の匂いが、彼女の猛獣としての闘争心を、メスとしての欲望で塗り潰そうとしているのだ。


「はぁっ……はぁっ……き、消えろ……。お前のその甘ったるい匂いを嗅いでいると……私が、私でなくなりそうで……っ」


「消えないさ。お前のその衝動、俺のトリミングで完全に消してやるよ」

 俺はシルヴィの震える手首を優しく掴み、耳元で低く囁いた。

「放課後、旧校舎の第4温室跡に来い。お前のプライドも、その苦しみも、俺が全部洗い流してやる」


 シルヴィは悔しそうに唇を噛み締めたが、もはや俺の匂いと発情の苦痛に抗う力は残っていなかった。彼女は顔を真っ赤に染めながら、小さく、しかし確実に頷いたのだった。


+++


 放課後、秘密のサロンである第4温室跡。


「生体モニター、接続テスト完了。カメラのフォーカス、音声マイクも問題ないわ」


 温室の片隅で、葵が手際よく機材のセッティングを終えていた。今日はいつもの冷徹な彼女とは少し違い、その声には隠しきれない熱が帯びている。未知の生態データを記録できることに、研究者としての血が騒いでいるのだろう。


 ギギィ……と錆びた扉が開き、シルヴィが重い足取りで中に入ってきた。

 発情期ヒートの熱に浮かされ、彼女の呼吸は荒い。

「……来たわね、シルヴィさん」

 葵はすかさずビデオカメラを手に取り、レンズをシルヴィに向けた。録画の赤いランプが点灯する。


「な、なんだそのカメラは……。私を撮影する気か?」

 シルヴィが警戒して立ち止まると、葵はカメラを構えたままズカズカと彼女に歩み寄った。

「ええ、これは重要な臨床データになるの。さあ、シルヴィさん。施術の前に少しインタビューをさせてちょうだい」


「インタビューだと……?」

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