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男女獣比1:100:1000のモフ界転生 ~トリマー無双でエリート獣人を骨抜きに。最底辺の俺が自由を求めて下剋上~  作者: 団田図


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第21話 新たな武器

 闇市でのマダム・バクとの密約を終えた俺たちは、その足で学園の外れにある寂れた工房へと向かった。

 空がうっすらと白み始めた頃、工房の扉を叩くと、徹夜明けで目の下にクマを作ったサル系獣人の鍛冶職人、クロエ・マカクが顔を出した。


「……遅いじゃないか。待ちくたびれて、あんたの匂いの記憶だけで発情しそうだったよ」

 クロエはぶっきらぼうに言いながらも、その顔には隠しきれない高揚感が浮かんでいる。彼女は作業台の上から、厳重に布で包まれた木箱を愛おしそうに持ち出した。


「ほら、あんたの描いた狂った図面通りに仕上げてやったよ」


 布を解くと、そこには鈍い銀色の輝きを放つ特注のハサミと、細かく計算されたピンの配列を持つスリッカーブラシが鎮座していた。

 俺はハサミを手に取り、空中で二、三度開閉してみる。チャキッ、という小気味よい音が工房に響いた。重心のバランス、刃の噛み合わせ、指にかかる負担の少なさ。魔法のないこの世界で、まさか前世の最高級品と同等、いやそれ以上の逸品に出会えるとは。


「完璧だ。クロエ、あんたは天才だよ」

「ふん、知ったことさ。……で、約束の『ご褒美』はいつしてくれるんだい?」

 クロエは顔を赤らめ、期待に満ちた目で俺を見つめてくる。

「もちろん、明日にでも最高のケアをしてやる。楽しみに待っててくれ」


 俺が微笑むと、クロエは嬉しそうに尻尾を揺らし、奥からもう一つの包みを取り出してきた。

「それと、これはアタシからのプレゼントだ。あんたのゴッドハンドなら、これも使いこなせるだろうと思ってね」

 渡されたのは、手のひらから指先にかけて『無数の細かいイボ』がびっしりと配置された、特殊なゴム手袋だった。


「獣人の分厚い皮膚越しに神経節を刺激するなら、こういう摩擦と圧力を増幅させるツールがあった方がいいだろう?」


 職人としての彼女の着眼点に、俺は感嘆の息を漏らした。これがあれば、俺の指への負担を減らしつつ、マッサージの威力を何倍にも跳ね上げることができる。新たな、そして最強の『武器』を手に入れたのだ。


 +++


 クロエの工房を後にし、夜明け前の静かな道を歩きながら、俺はさっそくそのイボ付きゴム手袋を両手にはめてみた。

「……ヒカル様。そんな禍々《まがまが》しい手袋をつけて、何をニヤニヤしているんですか。気味が悪いですよ」

 俺の後ろを歩いていたセリアが、ジト目で抗議してくる。

「まあそう言うな。せっかくだから、この新しいアイテムの威力を試させてくれないか?」

「は? こんな道端で何を……ひゃんっ!?」


 俺は返事も待たず、セリアの後ろに回り込み、彼女の引き締まった肩にイボ付き手袋をはめた両手を置いた。

 軽く、本当に軽く、肩のツボを押し込むように圧をかけただけだ。


「あ、あぁぁぁっ……!?」


 次の瞬間、セリアの口から鼓膜を突き破りそうなほどの強烈な悲鳴が上がった。

 ゴムのイボが制服越しに皮膚の奥の神経節を的確に捉え、俺のゴッドハンドの威力を数倍に増幅して彼女の脳髄へと叩き込んだのだ。


「ひぐぅっ……! だめ、これ、いけにゃいっ……! 中まで、直接……っ!」


 セリアは一瞬で膝から崩れ落ち、アスファルトの上に腰を抜かしてしまった。ガクガクと全身を痙攣させ、黒猫の尻尾が狂ったように地面をバシバシと叩いている。

「おいおい、外だぞ。そんな大声出したら……」

「はぁっ、はぁっ……ヒカル様ぁ……っ。もっと、それ……もっとやってぇっ……」

 涙目で俺のズボンの裾にすがりつき、完全に雌の顔で懇願してくる国家のエージェント。

 この手袋の凶悪な威力を確信すると同時に、学園のエリート令嬢たちをこれで骨抜きにする日が楽しみで、俺の口角は自然と吊り上がっていた。


 +++


 その日の放課後。

 俺はセリアの監視システム改ざんを利用し、学園を抜け出して国立生殖医療センターの特別面会室を訪れていた。

 目的は、以前俺に絶望的な未来を語った希少な獣人の男、ジン・ドーベルに会うためだ。


 重い扉が開き、警備員に付き添われて現れたジンは、前よりもさらに頬がこけ、生ける屍のような顔をしていた。


「……お前か。まだ学園で好き勝手やってるらしいな」

 ジンは椅子に力なく腰を下ろし、虚ろな目で俺を見た。


「あんたこそ、死にそうな顔してるな。ほら、差し入れだ」

 俺はテーブル越しに、闇市でマダム・バクに手配させた最高級の『極上栄養剤』の束を滑らせた。


「……こんな気休め、焼け石に水だぜ」

 ジンは自嘲気味に笑いながらも、栄養剤を一気に煽った。


「ジンさん。あんた、昨日は何人の相手をさせられたんだ?」

 俺の問いに、ジンは虚空を見つめたまま淡々と答えた。


「昨日は……10人同時だ。発情期で完全に理性が飛んだ肉食獣の女どもが、俺の種を求めて群がってくる。俺の体力なんてお構いなしに、薬で無理やり立たされて絞り取られるんだ。……地獄だぜ」


 10人同時。


 獣人のオスの底知れない性欲と体力には驚愕するが、それでも限界を超えた搾取だ。彼らの尊厳はなく、ただの『公共インフラ』としてすり潰されている。

 同じ男として、胸の奥底でドス黒い怒りが沸騰するのを感じた。


「ジンさん、このままじゃ本当に死ぬぞ。……手を貸してくれ」

 俺はテーブル越しに身を乗り出し、ジンの前腕を掴んだ。


「な、何をする気だ……?」

「俺のいた世界――前世の知識を使った『セルフマッサージ術』を教える。交感神経を落ち着かせ、薬で酷使された内臓の疲労を和らげるツボだ」


 俺はジンの腕や手のひらにある特定の経絡を指で押し込みながら、そのポイントと力加減を彼に叩き込んだ。

「……っ。なんだ、これ……体が、少し軽くなる……」

 ジンの濁った瞳に、ほんのわずかだが生気が戻った。


「自分で自分を癒やす術を持て。死ぬなよ、ジンさん」

 俺は彼を真っ直ぐに見据えた。


「俺は絶対に、こんなふざけた国のシステムに屈しない。この狂ったルールを壊して、男が人間として生きられる場所を作る。その時が来たら……あんたにも、力を貸してほしい」


 俺の言葉に、ジンは初めて驚きの表情を見せた。

 そして、ふっと口元を緩め、少しだけ力強さを取り戻した声で答えた。

「……大きく出たな、坊主。いいだろう、俺が過労死する前に、その下剋上を見せてみろ」


 ジンとの再会は、俺の中にある国家への激しい憎悪を再燃させ、下剋上への決意を鋼のように固くした。

 裏社会のドン、最強の道具、そして同じ境遇で苦しむ男たちの現実。

 全ての手札が揃いつつある。いよいよ俺は、桜華学園のトップ層に君臨するエリート令嬢たちを本格的に陥落させ、この国を根底から揺さぶる戦いを始めた。

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