第5章 選択の刻 第四話 最終試験 214番 4/5
数秒間、誰も口を開かなかった。
最初に息を吐いたのは、霊柩士講師長だった。
「……意外でした」
その言葉に工学講師長が頷く。
「正直、数字だけ見てたら、ここまで残るとは思わない」
イザベラは、水晶板に視線を落としたまま言う。
「初期評価では、確かに不合格寄りです」事実確認のような声音。
「奇跡未使用が多すぎます。
それが消極的、と取れる」
ラファエルが、椅子の背から体を起こす。
「これは消極的ではない」短く言い切る。
「“前に出ない”を選び続けた結果だな」
軍人が、低く唸る。
「背負わない判断が、できてる」
神官が、静かに言葉を添えた。
「恐怖を否定しなかった。
それが、一番危うくて、一番誠実です」
マルコは、何も言わずに一枚の水晶板を裏返した。
そこには、かつて付けられていた仮評価が記されている。
『不合格候補』
彼は、そっと手をかざし『配置』の評価に書き換えて、転送魔道具の空間ポケットに水晶版を入れた。
『配置』に書き換えられた水晶版を見た霊柩士講師長が、苦笑する。
「本人は、不合格だと思ってますね……」
イザベラは頷き、淡々と返した。
「だからこそ、あの答えです。
合格するために作られた言葉ではなかった。
彼女自身の意思が滲んでいたわ」
『必要とされる場所には、立ちます。
奇跡を使う役でも、使わない役でも』
マルコも静かに頷いた。
純粋さをもって語られたその言葉こそ、最終試験の評価に値するものだった。
「合格するための言葉じゃない」
新たに、机上の水晶板が、次の番号を淡く映す。
「では……。
次を呼ぶ」
マルコの声で、空気が切り替わった。
214番のことは、もう誰も口にしない。
だがその判断は、すでに配置図の中に、確かな位置を得ていた。
彼女が最初に呼ばれた理由。
──訓練では、不合格だった。
だがこの場で、彼女は“聖女として必要なもの”を示すかどうか。
理由は、それだけだった。




