第5章 選択の刻 第四話 最終試験 214番 1/5
「214番。入室してください」
最初に呼ばれた番号に、わずかな揺れが走った。
その呼ばれた番号は、いつも前列にいた少女だった。
候補生番号214。
目立つ成績でも、問題行動もない。
訓練では常に中ほどにいて、失敗も成功も平均的。
講師から特別な声を掛けられたこともない。
「……はい」
短く返事をして、扉の前に立つ。
一瞬だけ、彼女は周囲を見回したが、誰とも目は合わなかった。
音もなく、扉が閉まる。
それだけで、小さな部屋は驚くほど静かになった。
「わたし……212番なんだけど……」
不安そうな小さな声が響いた。
彼女も214番と同様に、特に突出した候補生ではなかった。
若い番号から呼ばれるわけではない。
では、どのような意味があるのだろう?
何も知らされず、順不同で順番で呼ばれる番号に他の候補生たちにも動揺が走る。
だが、どうすることも出来なかった。
時間の感覚が曖昧になる。
秒針の音も、足音もない。
候補生たちは、ただ待つしかなかった。
どのくらいの時間が過ぎたのか。
短くは、ない。しかし時間経過の基準が分からない。
やがて、再び扉が開く。
先に入室した彼女の様子を確認するかの様に、全員が、反射的にそちらを見る。
しかし、出てきたのは、呼ばれた少女ではなかった。
代わりに、先ほどとは別の教官が現れた。
「次──。
219番」
次に呼ばれたのは、背の高い少女だった。
* * * * * *
時間を少し遡る。
扉の向こう側。
214番が入室したとき、空気がわずかに落ち着いた。
一番初めに呼ばれた少女。他の候補生たち誰よりも緊張が高い。
姿勢は良いが、気負いはない。
静かな覚悟が、その立ち姿に漂っている。
「楽な姿勢で構いません」
イザベラが柔らかく声をかけた。
少女はその言葉に軽く頷くと、肩の力をほんの少しだけ抜く。
足の位置は自然に揃えて、両手は身体の前でそっと重ねた。
その視線は講師一人ひとりを確かめるように動き、最後に静かに止まった。
ラファエルがはじめに声を出す。
「質問する。
疫病都市で、あなたが最も避けた行動は?」
「奇跡を使うこと、です」




