第4章 選んだあとの距離 第2話 現地実技 -実技後会議- 2/2
空気が、少しだけ変わる。
机の上の視線が、自然と一箇所に集まった。
「まず──。
全体の中で、目についた三人だが」
名前は、まだ出さない。
「一人は、奇跡を使いすぎる」
マルコは言う。
「場を揺らすことを恐れなかった。
その代償も、理解していない」
ラファエルが、苦笑する。
「問題児だな。
だが、現場に向く気質でもある」
「一人は、ほとんど使わなかった……」
イザベラが続ける。
「記録上は目立たず、摩擦が極端に少ない」
ラファエルが、思い出すように目を細める。
「……ああ、あれは壊さない」
「もう一人は」
マルコが、最後の板に触れる。
「奇跡の有無に関わらず、判断が一定だな。
迷っても、崩れない」
三人とも、評価はまだ定まらない。
だが、記録から消える存在でもなかった。
イザベラが、静かに言う。
「次の研修地で、はっきりします」
マルコは頷いた。
「次は、逆の環境だ。
奇跡を使えば評価されない場所」
ラファエルが、わずかに口角を上げる。
「拒否地区、か……。
“使えない”のか、“使わない”のか。
あそこは、そこが出る」
室内の空気が、さらに引き締まる。
マルコは、記録板を閉じた。
硬質な音が、机に落ちる。
「疫病都市では、奇跡が足りなかった。
次……。あそこは奇跡が、邪魔になる」
その言葉で、会議は一区切りついた。
椅子がわずかに軋む。
誰もすぐには立ち上がらない。
それぞれが、十四枚の記録の重さを頭の中で整理している。
候補生たちは、まだ知らない。
次の現場が、彼女たちの“姿勢”そのものを測る場所だということを。
そして、その中で。
誰が残り、誰が揺らぐのかを──。




