表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
2章 超能力
43/51

19話 電気治療(エレクトリックトリートメント)

19話 電気治療(エレクトリックトリートメント


 いつもの部室にいつもの面子が居ない。アキトは部室にひとり(たたず)むミィナを相手に暇つぶしをしていた。


 「なあ、ミィナ。なんで犯人を明かさないんだ? それなりの制裁を与えないとまた悲劇が起こるんじゃないかと皆んな不安がってる」


 「……アキトはサオリを衆目(しゅうもく)(さら)して糾弾(きゅうだん)したいニャ? よってたかって罵声を浴びせて表を歩けないようにしたいニャ?」


 「誰もそんな事は言ってねぇだろ。ただ、ハッキリさせとかないとよ。御船も口にはしないが内心ビクビクしてんぞ?」


 「人の記憶ニャんて直ぐに薄れていくものニャ。本人は充分反省しているニャ。アキト、言っておくニャ。非能力者から見て能力者は脅威ニャ。その力が強ければ強いほど畏怖(いふ)の対象となるのニャ」


 「それは……そうだけど……」


 「マヤに言いたければ言えばいいニャ。ただ、マヤにとってサオリは大切ニャ友人である事を忘れちゃダメニャ」


 「……分かったよ」


 「いずれ本人が直接謝罪する予定ニャ」


 「そうなのか? なら、その時までは内緒にしておくか……」


 「それがいいニャ」


 「しかし……知らないのは御船だけとか……」


 「その方が幸せニャ。事件のおかげで大好きなアキトとキス出来たんニャ。マヤも恨んではいニャいニャ」


 「! は、はぁ!? い、いい加減な事言うなよ! 御船が……俺を好きだなんて……」


 「照れるニャ、照れるニャ。これからアキトは大変ニャ」


 「そ、そんな事よりソウジについて詳しく聞かせてくれないか? イトの話じゃミナとソウジは恋仲だったんだろ? お前とミナは違うのかもしれないが……」


 ミィナの顔があからさまに暗くなった。アキトは分かりづらい猫の表情にもそれなりに慣れてきている。


 「……あたしにとってのソウジは……()なヤツニャ……ふてぶてしくて、偉そうで……好きにはニャれニャいニャ」


 「そうなのか? 遠目からしか見た事は無いが、生徒会長って役職がぴったりな爽やか好青年って感じだったけどな……」


 「表向きはそうかもしれニャいけどニャ」


 「何とかイトと仲直りさせてぇ。じゃねぇとお前の中にいるミナが浮かばれねぇってもんだ」


 「……」


 ミィナはアキトから目を逸らし、黙ってしまった。


 ――1年能力科B組の大東アキト君、進路相談室まで来てください。繰り返します……


 急に流れた校内放送に驚く。瀬尾と思われる声がアキトを呼び出しているようだ。


 「セオドール先生? 何だろ?」


 ――コンコンコン、コン、コンコン……


 「全く、忙しいニャ……」


 ミィナは合図を聞くとそそくさと扉にかけた自身の能力、物質固定(フィクゼーション)の解除に向かう。


 「そう思うなら普通の鍵にしろよ……」


 「猫の手じゃ余計大変ニャ」


 「そ、それもそうだな」


 ガチャリと扉が開いて中に入って来たのはミコとマヤだ。二人は神妙な面持ちで何やら話している。


 「アキトン……ちょっと相談があるんだけど……」


 「ん? どうした? 悪いが後にしてくれるか? さっきの放送を聞いただろ? セオドール先生が呼んでるっぽいんだ」


 「う、うん。分かってる。でも、後でゼッタイね?」


 「分かったよ」


 「アキ、お茶菓子を買って来ました。みんなで待ってますんで早く戻ってきて下さいね?」


 「ああ、分かった。だけど、イトもリリィも出掛けているようだぞ? ミィナはいるけど……」


 「そうなんですか? 珍しいですね……」


 「イトとリリィの事は気にしニャくていいニャ。二人の分はあたしが食べるニャ!」


 「もぉ! ダメだよ、ミィナ? デブ猫になっちゃうぞ?」


 「マヤに言われたくニャいニャ! こんな脂肪をぶら下げてニャ!」


 ミィナは驚くべき跳躍力で、まるでボールにじゃれているかのようにジャンプしてはマヤの大きな胸を()()()()いる。


 「おおお!」


 ミィナがはたくたびにポヨンポヨンと右へ左へと揺れ動く胸の膨らみに、アキトの目は釘付けになっていた。


 「もぉ! 止めてよ、ミィナったら!」


 「アキもいつまでマーヤのむ、胸を凝視(ぎょうし)してるんですか! 瀬尾先生を待たせるつもりですか!」


 「そ、そうだった! それじゃ、行ってくる! ミィナ、ありがとな!」


 顔を真っ赤にしたミコに言われて我に返ったアキトは、ミィナに感謝しながら進路相談室へと急ぐのだった。



*******************



 アキトが呼び出された進路相談室は四畳半程の小さな部屋で、瀬尾の姿は無かった。静かで狭っ苦しい部屋はなんだか落ち着かない。


 ――ガラッ


 「やあ、アキト君。遅くなってゴメン」


 「いいよ、セオドールセンセ。俺も今来たところだし」


 「……その名は……まあ、この際もういいよ。本来は部長であるイト君にすべき話なんだけど、普段から部室に篭ってるはずの彼がどこにも居ないんだ。済まないが付き合って貰うよ」


 「引きこもりのクセにアイツはアイツで頑張ってるみたいだし、いいよ。何をすればいいんだ?」


 「ミコ君と書類を作ってみたんだ。部長と副部長の署名が必要だから、後でイト君にも頼んでおいて欲しいんだ」


 瀬尾が大事そうに胸に抱えた書類には、新規部活動設立願いだとか、顧問承諾書だとか何やら難しい事が書かれていた。各部員の履歴書のような物まで揃っている。


 「分かったよ。ところで、先生はなんで俺たちに協力してくれるんだ? 名前を貸してくれるだけで良かったのに……」


 アキトはよく分からない書類に目を通すと、片っ端から署名をしていく。


 「……まあ、アヤコさんに頼まれたから……って事もあるけど、僕だって一教育者なんだよ? 生徒が困っているのに放っては置けないよ……なんて、ちょっとカッコ付けすぎかな?」


 「セオドール先生とアヤコ先生には感謝しかないよ。アイツら、部室を追い出されたら本当に何をしでかすか分かんねぇから」


 「違いないね……彼らは危うい。君やミコ君のような(くさび)が必要だ。この間のように暴走しかねないからね。君がしっかり手網を握っててやってくれよ?」


 「この間って……中庭での告白イベの事か?」


 「まあ、より正確に言うなら暴動の事だよ。結構大変な事になっているんだよ。特に銃撃のような攻撃を食らって、肋骨(ろっこつ)を折った生徒とその親御さんがね……」


 「……マジか……」


 「まあ、生徒の非行は教師や大人の責任さ。君達が気を病む必要なんてサラサラないけどね」


 「先生……恩に着る。あんまり迷惑かけないよう俺がしっかり言いつけとくから、見捨てないでくれよ?」


 「ハハハ、大丈夫だよ。それが僕らの仕事なんだから」


 「セオドール先生、アンタいい先生だな!」


 「()してくれよ。僕はタダの公僕(こうぼく)だよ。まあ、教師だけど私立校だから社畜(しゃちく)って言った方がいいのかな? ただ言われるがままに働き続けているだけさ」


 「そんな風には見えないけどな」


 「過大評価だよ。僕はそんなに出来た人間じゃない。それに、僕の力なんてちっぽけなもんだよ。理事長が居なかったらと思うと……」


 「やっぱり理事長が動いてくれているのか……」


 「そうさ。でも理事長も孤立しつつある。学園長の力が強まってきているんだ。教師達をまとめあげ、生徒会とも密接に関係しているみたいだ。いくら理事長とはいえ好き勝手出来る状況には無いんだよ。だから尚更(なおさら)アキト君には頑張って貰わないと」


 「任せてくれ……なんていい加減な事は言えないけど、努力はするよ」


 「その言葉だけで充分だよ。気を付けてくれ。最近はきな臭い話ばかりだ。これも超能力っていう新しい力の影響かねぇ……」


 「能力だけの問題じゃねぇだろ? その証拠に生徒会だって暴走してる」


 「そうなんだろうけどね……生徒会も暴走気味だが、ファイアスターターとかいう半グレ能力者集団も歯止めが効かなくなってきている。本来なら退学になってもおかしくない生徒達が夜な夜な問題を起こしているんだ。巻き込まれるなよ?」


 「忠告ありがとう。深く首を突っ込むつもりは無いよ」


 「……深く、ねぇ……って事は少しは首を突っ込むつもりでいるな?」


 「……頭張(あたまは)ってるヤツにちょっとばかし用があって……」


 「はぁ、どうせ止めてもダメなんだろうなぁ……くれぐれも言って置くが、後悔先に立たずだよ。君たちには将来がある。僕のような社畜になりたくはないだろう? より良い人生を歩むなら、より上を目指すしかないんだ。他人より秀でる事だよ。くだらない事で人生を棒に振るなよ?」


 「御高説(ごこうせつ)痛み入るよ。でも、くだるかくだらないかは本人次第だと思うぜ」


 「若さ故か……当たり前の事だが、世間はより優秀な者を求めてる。成績や内申(ないしん)っていうわかりやすい指標がある以上、それを上げる事が一番の近道だって事を若者はなかなか理解出来ないものだ。自分が既に(ふるい)にかけられている事を、(ふるい)の上にいる者は気付かない。僕もまだまだ若輩(じゃくはい)だが、君たちよりは世間を知っているつもりなんだけどね」


 「悪いな、センセ。何を言われても無駄だよ。後悔先に立たずと言うけど、やらないで後悔するぐらいなら俺はやって後悔したいってだけだよ」


 「……まあ、君には超能力がある。他人より秀でる事はそう難しい事ではないだろう……好きにするといい。ただ、どうしようも無くなった時は迷わず僕やアヤコさんに相談するんだ。僕だって大人だ。君達には出来ない事も出来たりするものだから」


 「セオドールセンセ……アンタいい人だな!」


 「……説教臭いってよく言われるんだけどね……僕はただ自分が知り合った生徒には幸せになって欲しいだけさ」


 「よし! セオドール先生にはお礼に俺の最新の能力を使ってやる! まだハナエさんにしか使った事の無い出来たてホヤホヤだぜ? あ、ハナエさんってのはミコの母親なんだけどな!」


 「なんだい?」


 アキトは瀬尾の後に回ると、揉み手をしてから肩に手を当てた。


 「お客さん、()ってる所はありませんかい?」


 そう言うとアキトの手が薄く輝き出した。


 「お? おお?」


 ビクン、ビクンと瀬尾の肩が震える。整形外科や整骨院の電気治療か低周波マッサージ器のような感じだ。


 「ああ、気持ちいいねコレは」


 「だろ? 俺の新能力、電気治療(エレクトリックトリートメント)だぜ!」


 「ふぅ、便利な能力だなぁ。丁度(ちょうど)肩が凝ってたんだ。教師ってのはデスクワークが多くて困る。助かるよ」


 「フハハハハ! 我に感謝するがいい!」


 瀬尾はしばらく恍惚(こうこつ)の表情でアキトの新能力を味わい、血行が良くなっていた。


お久しぶりです……

読んで頂いてありがとうございます。

なかなか投稿出来ずすみません。

そして、話が進まず申し訳ありません……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ