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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
2章 超能力
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18話 負の遺産

お久しぶりです……


18話 負の遺産


 翌日、マヤが退院した。元々精密検査という名目で大事をとって入院となっていたわけだが、検査結果も良好との事で無事退院の運びとなったようだ。


 「アキトン! ただいま!」


 アキトを見つけると、小走りで走ってきたマヤが頬を紅くして退院の報告をする。


 「お、おう。もう大丈夫なのか?」


 「うん。心配かけてゴメンね。アキトン……その……本当にありがと!」


 マヤにしでかした事が脳裏を過ぎる。やむを得なかった事ではあるが、申し訳ないという悔恨(かいこん)と、彼女にとって特別な存在になれたような高揚感で複雑な気持ちだった。


 「……お前に話しておかなきゃいけない事が沢山あるんだ」


 「……うん。」


 「何から話していいか、もうわかんねぇな……」


 「ちょっとずつでいいよ? 時間はたっぷりあるんだから。なんだったら、部室で聞くけど?」


 「は? 部室?」


 「てへ。入部しました! さっきネコ部長から連絡があったんだ。無事受理(じゅり)されたって!」


 「ちょ、ちょっと待て……どういう……」


 「詳しい話は部室でね? 早く部室に行きたいな!」


 「ど、どうなってる……? 俺が寝てる間に何があったんだ? 何故ミコは何も言ってくれなかったんだ?」


 「ミコタンには私から頼んでおいたの。自分で報告させて欲しいって」


 どうもアキトが保健室で眠っている間に色々とあったようだ。思わぬ方向に話が進んでいる。アキトは完全に混乱してしまっていた。


 「ミコタンは先に部室に行ってるよ? 私たちも早く行こ?」


 マヤに手を取られ、先導されるように部室棟へと向かう。アキトは首を傾げながら言われるがままついて行った。


 部室の前に見知らぬ人影がある。


 「ん? 誰だ? ウチの部室に用があるのかな?」


 「あ! 瀬尾(せお)先生! どうしたんですか?」


 マヤは身に覚えがあるようで、名前を呼びながら手を振っている。


 「おや? 御船君、ちょっと聞きたいんだけど、ここって自然科学部の部室で合ってるんでしょうかねぇ?」


 「そうですよ! ……多分ですけど」


 マヤは部室に顔を出すのは初めてのようで、自分で言っておきながら不安そうにアキトを見ている。


 「瀬尾先生? って事はアンタがセオドール先生か!?」


 「ちょ、ちょっと! その名で呼ばないでくれよ……全く、アヤコさんは……」


 「って事はやっぱり! セオドール先生! これから宜しく頼むぜ! 取り敢えず入ってくれ。今ロックを外して貰うから!」


 「……はぁ」


 瀬尾はガックリと肩を落として溜め息をついていた。


 ――コンコンコン、コン……


 「開いてますよ?」


 合図が終わるより早く、扉が開く。ひょっこりと顔を出したのはミコだった。


 「ぬお! 開いてたのかよ!」


 「アキ、うるさいんで早く入って下さい」


 「お、おう……」


 部室では部員全員が集合していた。とは言ってもミコの他はイトとリリィとミィナだけではあるが。


 「やあやあ、来たね。三人ともまずはソファにでも腰掛けてくれたまえ。瀬尾先生、アヤコから話は聞いている。マヤ、君もだ。ミィナから連絡は行ったな? 二人ともこれから宜しく頼む。自己紹介は要らないな? 先生はアヤコに、マヤはミコちゃんから聞いているだろう? さて、全員集まったところで今後の話をしよう」


 イトは合流した三人に着席を(うなが)すと、自分もソファに腰掛けた。


 「……現在の状況はどうなってんだ? それが分からねぇと今後もクソもないんだが……」


 「あたしが説明するニャ。ニャごり惜しいけど部長としての最後の仕事ニャ……」


 ミィナが割って入る。まだ部長は明け渡していないとでも言いたげで、イトが主導権を握る事に我慢ならないようだ。新参のマヤと瀬尾は猫が当たり前のように喋る事に多少驚いていたが、事前に聞いていた事もあって直ぐに真剣な表情に戻っていた。


 ミィナは不満そうにイトの膝に座るとぐるりと全員を見渡す。アキトに視線を止めると、


 「まずは今回の騒動の顛末(てんまつ)ニャけど……犯人についてはおいおいはニャすニャ。知ってる者は他言無用ニャ」


 「おい、そこはハッキリさせておいた方がいいんじゃないのか? 御船が浮かばれねぇだろ?」


 「コラコラ、アキトン? 私は死んでないよ?」


 「すまん、なんというか……言葉の綾だ」


 「……まあまあ、この際生死についてはどっちでもいい。この場で犯人を明らかにして弾劾(だんがい)するのは得策では無いという事だ」


 「もう! イトさんまで非道いよ……」


 「よしよしマーヤ、泣かないで下さい」


 (たま)らずミコがマヤの頭を()でて(なぐさ)める。リリィが遠巻きに羨ましそうに指を(くわ)えて見ていた。


 「暴動にニャった事は知ってると思うニャ。こちらが手を回した事もあるんニャけど、元々はみんな生徒会に不満があるからニャ」


 「本当かよ? やり方は多少強引な気もするが、こちらにも(うし)(ぐら)い事はあるだろ……この部室とかな」


 「ウチの部に限った事じゃニャいニャ! 最近の生徒会はおかしいニャ。校則を自分らで厳しくするニャんて前代未聞ニャ! その上風紀委員長を生徒会副会長が兼任して徹底させるニャんて許せニャいニャ!」


 「お前は生徒じゃねぇだろ……」


 ミィナは怒っているようだ。いちいち動きが激しく、イトの膝の上で地団駄(じだんだ)踏みながら熱く語っている。イトは迷惑そうにしている。


 「ミィナ、落ち着いて下さい」


 ミコがミィナをたしなめた。


 「これが落ち着いていられるかニャ! 短いスカートは全ネコの希望ニャ! パンツが見れニャくてニャにがスカートかニャ! まさかのあのコがこんな……ってのが最高の娯楽ニャのニャ!」


 「……」

 「うわぁ……」

 「ヒェッ……」

 「君は生物学的にはメスのはずだが……」

 「お前の性癖なんてどうでもいいよ……いや、ギャップ萌えは一理(いちり)あるな……」

 「ミィナ、私のパンツならいつでも見てもいいのよ?」


 「リリィの縞パンはもう見飽きたニャ。ちなみにミコのも普通過ぎてつまんニャいニャ。もっと頑張るニャ」


 「なっ! ミ、ミィナ! なにを頑張るんですか!」


 ミィナの突然のカミングアウトにミコが顔を真っ赤にして怒っている。


 苦笑いで聞いていた瀬尾がまあまあ、と割って入る。


 「ミィナ君やアキト君の趣味は置いといて、近頃と言うか、一葉君が生徒会長になってからは活動が精力的なのは確かだね。教師の不正や怠慢(たいまん)にも容赦(ようしゃ)がないし……」


 「そうなんですか?」


 ミコに頭を撫でられながらマヤが問い返す。ミコはジト目でずっとアキトを見ている。


 「一葉君達生徒会は能力科にあまり良い感情を抱いてないんだよ。元々は有数の進学校だったこの学園の評判を、能力科の生徒達が下げていると考えているようだね。風紀の乱れを能力科のせいにしているんだ。生徒会は優秀な生徒ばかりだから僕ら教師も敵に回したくはないんだよ」


 「風紀ね……アイツは他人を容姿で判断するようなヤツじゃ無かったんだがな。誰に影響されたんだか……」


 イトは哀しそうにボソリと呟いた。かつては友人だった男が今は敵と言っても過言ではない。イトなりに思う所があるのだろう。


 「生徒会への不満が溜まっていると言うことでしょうか?」


 「ミコ、そう言う事ニャ。生徒会は実力行使のためにガラの悪い連中を風紀委員に勧誘しているニャ。どんニャエサで釣ったんだか知らニャいけどニャ」


 「ガラの悪い連中……まさか、ファイアスターター?」


 「……アキト、それは違う。彼らは生徒会に反発している集団だ。度々(たびたび)小競り合いをしている。生徒会が腕っ節の強い生徒を勧誘しているのは彼らファイアスターターに対抗する為だよ」


 「なんだか怖いね……アキトンのおかげで私は大したこと無かったけど、誰かが傷つくような事にはなって欲しくないな……」


 皆黙ってしまった。酷い目にあったマヤの言葉にはなんとも言えぬ重みがあった。


 「……現状は理解出来ただろう? 生徒会は言うなれば保守(コンサバ)。能力科が無かった頃の進学校に戻したいという思いがある。対してファイアスターターや能力科の生徒達は革新(リベラル)と言ってもいいだろう。学力に(とら)われず才能を伸ばす事に注力したいと考えている」


 「……理解は出来ます。ただ、お互いが理解し合える気は全くしないですが……」


 「……そういやひとつ気になる事があるんだが……ファイアスターターって名前と、ある人物の能力が被るんだが……」


 「アキト……察しの通りだよ。ファイアスターターのリーダーは恩田(おんだ)タイガだ。アイツはこの学園を去ったが能力科の生徒とのコネクションは持ち続けている」


 「やっぱりそうか……超能力研究会の負の遺産って事だな……」


 「アキ……そんな言い方は……」


 「ミコちゃん、いいんだ。事実に変わりはない」


 「……それで? 今後だっけか? どうするつもりなんだ? お前はどうしたい? どう責任を取るつもりなんだ?」


 「それは……」


 言葉に詰まって黙ってしまったイトの代わりにミィナが割って入る。


 「イトはいざこざを丸く収めたいニャ。ソウジの生徒会とタイガのファイアスターター……実際に武力衝突してるニャ。憎しみが連鎖して取り返しのつかニャい事になりつつあるニャ」


 「そうか、なら俺たちは生徒会とぶつかってる場合じゃねえ。ソウジと話をつけよう」


 「どうするつもりだ?」


 「ひとり、話の分かるヤツを知ってる」


 「……塩見なら期待するな」


 「イト、なんでだよ? 言っとくがこっちには御船がいるんだ。まあ、見てろ。お前らにあった事なんて俺は知らねぇ。昔は分かり合えてたんだ。今だってきっと……」


 「……」


 「御船、協力してくれ。塩見先輩と話がしてぇ。セッティングを頼む」


 「分かったよ! 頼んでみる!」


 「塩見先輩は自然科学部にあまりいい感情は抱いていないようだった。俺に近づかないよう忠告してきたからな」


 「塩見さんも……部室の襲撃に参加したのでしょうか……?」


 ミコが不安そうな顔で呟く。


 「その辺も探りを入れたいな。塩見先輩は話の分かる奴だ。ソウジ……会長の考えに本当に賛同しているのかどうか問いただす。生徒会の中にも不満を持った奴がいたっておかしくないはずなんだ」


 「……好きにするといい。僕は僕でやる事がある。僕も好きにさせて貰うよ。それと……ミコちゃん、君は瀬尾先生と部の正式な手続きを頼む。君は教師からの評価も高い。適任だろう」


 「……わかりました。部長はイトさんとして、副部長は誰にしますか?」


 「……」

 「俺だろ?」

 「当然あたしニャ?」

 「私しかいないわね」

 「まさかの新入部員の私?」


 しばらく(あご)に手を当てて考えていたイトが、やれやれと言った表情で、


 「……ミコちゃん、頼めるかい?」


 「おい、イト! 俺だろ? な? 俺だよな?」

 「部長は譲るけど副部長は譲れニャいニャ!」

 「イト、妹の私が信用できないの?」

 「まぁ、ミコタンなら適任じゃないかなぁ?」


 「ミィナ、君は室長なんだろう? リリィ、君は存在自体が都市伝説化してる。幽霊部員ならぬ幽霊生徒だ。アキトは……何となくムカつく……」


 「ふざけんな! 部長を譲ってやってんだ! 俺にやらせろよ!」


 「君は副部長の仕事を理解しているのか?」


 「ミコだってしてねぇよ!」


 「ミコちゃんなら直ぐに理解出来るだろう」


 「俺だって!」


 皆、溜め息をつきながら二人のやり取りを聞いていた。その時、ミコが一歩前に出て口を開いた。


 「……わかりました。ではこうしましょう。活動を円滑(えんかつ)に進めるに当たって部長と副部長以外にもいくつか役職が必要でしょう。例えば、部費の管理は最も信頼され、安心出来る方がいいでしょう。会計(かいけい)を、我が部が誇る歩くセコム、リリィさん、お願いできますか?」


 「え? は、はい。ミコミコが言うなら……」


 「続いて、活動の内容や方向性、詳細を詰める企画(きかく)が必要です。いつも明るく流行に敏感なマーヤが適任でしょう。宜しいですか?」


 「えっ? は、はいっ! ミコタンが言うなら……」


 「次はとても重要な役職です。何でも屋のイメージが強い総務(そうむ)です。まとめ役には皆に好かれ、自由に動けるミィナが適任でしょう。室長との兼務(けんむ)になりますが、ミィナなら大丈夫ですよね?」


 「ま、任せるニャ!」


 「次は渉外(しょうがい)です。顧問や他部との折衝(せっしょう)はイトさんの推薦がありますので私が行います」


 「異議なし!」


 「……最後に、残った副部長をアキにお願いしましょう」


 「……お、おう。……なんか……いや、何でもねぇ……」


 「という訳です。瀬尾先生、後で書類に署名捺印をお願いしますね?」


 「りょ、了解した。さっきまでアヤコさんに言われて渋々だったんだけどね……なんだか君たちの力になりたいと、今はそう思うよ」


 「ありがとうございます。これから宜しくお願いします」


  そう言ってミコが深々とお辞儀をした。つられて部員全員が瀬尾にお辞儀をしていたのだった。


読んで頂いてありがとうございます。

永らく投稿出来ず、申し訳ありませんでした。

これからは心を入れ替えて精進していく所存です……

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