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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
2章 超能力
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16話 感謝

16話 感謝


 「う……うーん……」


 「ン? なンだ? ようやくお目覚めか?」


 アキトが目覚めた時、聞き覚えのある声がした。重たい(まぶた)をゆっくりと開けると、見覚えのある天井とベッドが視界に飛び込んでくる。そしてアヤコが覗き込んでいた。西日が眩しい。そろそろ夕方と言って良い時間のようだ。


 「アヤコ先生……? なんで俺……保健室に……」


 「……イトに感謝するンだな」


 「はあ? イト?」


 アヤコの言っている意味が分からず、アキトは不思議そうな顔をしている。


 「ワケが分かってないって反応だな? それも仕方ない。お前が無茶をやらかしてから丸一日、たった今まで眠りこけてたンだよ」


 「ま、丸一日!? そ、そうなのか……マヤ……御船はどうなった?」


 「……あの後直ぐに病院に連れていかれた。今も入院中だ」


 「無事なんだな?」


 「心配すンな。故障診断(ダイアグノーシス)()ておいた。心肺停止状態だったようだが、処置が早くて助かったようだな。電気ショックとは考えたじゃないか。あと数分心停止が続けばヤバかっただろう。脳にダメージも無いし、チアノーゼも見受けられなかった。お前のおかげだ。お手柄じゃないか、ン?」


 「それなら、無事なら良かった……本当に良かった……ところで、イトが何だって?」


 「アイツは全てを見ていたんだよ。アイツは校内に設置されている監視カメラは全てハックしてンだ。他にもリリィに言って自前であちこちにカメラを設置させていたンだよ。犯罪性が無いから放置していたが……」


 「なんだよ、アイツ全部見てたのかよ……」


 「イトが中庭に行けとうるさいから行ってみれば……お前は寝てるし、御船は気絶してるし、丸井は泣いてるし、大勢の生徒と教師は揉めてるしで大変だったンだ」


 アヤコは心底嫌そうな顔で不満をあらわにする。アキトは苦笑いするしか無かった。


 「またアイツに助けられたのか……」


 「……アイツは言わないだろうから、特別にアタシが教えてやる」


 アヤコは急に表情を変えると、嬉しそうに今回の顛末を語ってみせた。かなり()っているようにも感じたが、アキトは黙って聞いていた。


 「アイツは間中(タケル)が流した噂に紛れて実に様々な噂を仕込ンでいたンだ。暴動へと発展したのもそのせいだ。血の気の多いヤツらにはどさくさに紛れて恨みを晴らそうとしてるヤツがいるだとか、合図と共にとンでもない事が起こるからヤられる前にヤレだとか、お前が御船に無理やりキスしようと企ててるだとか、くだらない噂だが間中の暴走とリリィの狙撃が引き金となって収拾がつかなくなっていたンだ」


 「なんでそんな事……何の意味があったんだ?」


 「アイツはあらゆる事態を想定していたに過ぎン。お前がより動きやすい様にという事もあるンだろうが、今現在、暴動の首謀者は生徒会だという噂が広まっている。どうせそれもアイツが蒔いた噂だろう。一葉(かずは)は必死に否定しているようだが」


 「な! あのヤロー、俺を利用しやがったのか!? 生徒会こそ正義だとか、もう疲れたとか言っておいて!」


 「アイツの言葉の半分は信用するな。まあ、お前に感化されたのかもしれンがな……ここからは想像だが、アイツは一葉と直接やり合いたいんだ。下っ端に任せて自分は動かない一葉を引き摺り出したいンだろう。本気でやり合って、本音をぶちまけたいンだよ……アイツの事は何となく分かってしまう……あのヒトに、似てるから……」


 ふと、アヤコの顔が淋しそうに見えた。


 「……全く……言ってくれれば、いくらでも協力してやるのに……まさか裏でそんな事を……」


 「裏? アイツはリリィとミィナに逐一指示を与えていたンだ。リリィを通して麻倉(ユーリ)にもな。お前のインカムにはイトの声は聞こえなかっただろうが……」


 「! マジかよ!」


 裏で暗躍どころか、アキトの知らない所でガッツリと参加していたという事実に驚く。

 

 「しかし……アイツはアヤコ先生には何でも話すんだな……それほど信頼してるってのか?」


 「……昔アイツの面倒を見ていた事がある。姉の様に感じているのかもな」


 「……母親だったりしてな」


 ――ドカッ!


 アヤコは無言でアキトを蹴飛ばしていた。


 「……す、すみません!」


 「丸井と一緒にお前をここまで運ンでやったンだぞ? そういや感謝の言葉が無いな? ン?」


 「アザッした!…………ゲフッ!」


 次は頭を下げた所に背中を殴られた。


 「ど、どうも有難うございました!」


 「はン!」


 軽口を叩いてはいるが、アキトはアヤコに感謝していた。口は悪いが、なんだかんだでいつも助けてくれる、相談にも乗ってくれる。今だって保健室のベッドを貸してくれているし、看病してくれていたのだ。


 「……先生、本当にありがとな」


 「はン!……それはそうと、役得だったなぁ、おい? 御船の唇の味はどうだっンだ? 何の味がしたんだ? イチゴか? レモンか? それともモモか? ン?」


 「ばっ! な、何を……べ、別にあれはキスとかそんなんじゃ、ねぇから!」


 「はぁ? キスなンて一言も言ってないぞ? 唇の味と言ったンだ」


 アヤコはニヤニヤと嬉しそうにアキトを覗き込む。


 「い、一緒だろ!」


 「おお、そうかそうか! じゃあ、おっぱいの感触はどうだったんだ? やっぱりデカかったか? 柔らかかったのか? 丸井と比べてどうだったンだ? あぁン?」


 「お、おい! な、なんて事言い出すんだよ! 教師としてもっと自覚を持ったらどうなんだよ!」


 「照れるな、照れるな! 青春してンじゃないか。モテる男は辛いってか? どちらを選ぶにしろ、これから大変だなぁ、おい?」


 「え、選ぶって……俺は……そんなつもりは…………センセ、アンタ完全に楽しんでるな?」


 「フハハハ! 当たり前だ! こんなに楽しい事はそうそう無い! という訳で、これからはお前達の恋愛模様を間近で観察する事にした」


 「え? そ、それって!」


 「勘違いするな。顧問にはならン! 面倒だからな」


 「そ、そんな……」


 「アタシは副顧問になってやるよ。そして、顧問候補を紹介してやろう」


 「! マジか! 恩に着る! それで、その顧問候補ってのは……?」


 「はン! 全く気が早いな。いいだろう、よく聞け。名前は瀬尾(せお)トオル。物理学を専攻しているダサい男だ。まあ、アタシの下僕みたいなもンだ。ン? 奴隷か? まあどっちでもいい、断られる事は無いだろう。セオドールとでも呼ンでやってくれ」


 「ありがてぇ! これで条件は整った! ようやくだ。ようやく始まるんだ! 自然科学部、ついに始動だ!」


 「……ひとつ、忘れてる事があるだろう?」


 アヤコにそう言われ、アキトは首を捻っていた。忘れてる事……? 嬉しさの余り、早くみんなに報告したいという気持ちが高まり、他の事などどうでもいいと思っていた。


 「お前なぁ……今回の事件のメインだろ?」


 「あっ! そうだ! 犯人!」


 アキトはすっかり忘れていた。たった今まで丸一日寝込んでいたうえ、寝込む寸前まではマヤを蘇生させるのに必死だったからだ。


 「確か、タケルが……」


 「お前が起きたら教えてくれと、間中に言われている。お前に直接会って話したいそうだ」


 「そうなのか? じゃあ、電話してみるよ」


 「今はまだ授業中だ。放課後まで休ンでろ」


 アキトは言われるがまま保健室でのんびりしていた。タケルとミコにメールだけ送っておいた。アヤコはパソコンやスマホを弄ってニヤニヤしたり、たまに仕事っぽい事をしては難しい顔をしたりしていた。


 「ちゃんと仕事もしてるんだな……」


 「……そうか、お前には仕事している様に見えるンだな?」


 「違うのかよ!」


 ――キーン、コーン……


 他愛の無い話をしているうちに授業が終わったようだ。アキトはひとつ伸びをするとベッドから降りる。


 「センセ、ありがとな! そんで、これから宜しく頼むぜ!」


 「はン! 調子に乗るな! それはそうと、イトに顔を見せるように言っておけ。アイツは電話ばかりで顔を見せン……たまにはリリィと一緒に保健室に来いと伝えとけ」


 「そうなのか……分かった。伝えておくよ」


 ――バン!


 大きな音を立て、勢いよく開けられたドアの向こうから、少女が突進して来る。


 「アキッ!」

 「ぬおっ!」


 アキトはミコに抱きつかれていた。


 「ミコ……心配かけてゴメン……」


 優しくミコの頭を撫でる。


 アキトの頬をミコの涙が濡らしていた。


いつも読んで頂き、ありがとうございます。

なかなか投稿出来ず、誠にすみません……

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