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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
2章 超能力
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13話 作戦開始(ミッションランチ)

あけましておめでとうございます。

本年も、宜しくお願い致します。

13話 作戦開始(ミッションランチ)


 「あー、あー、こちらアルファ。アルファから全体へ、聞こえるか?」


 「ブラボーからアルファ、良好よ」


 「チャーリーからアルファ……聞こえてるんニャけど、ニャ前じゃダメニャのかニャ? 分かりづらいニャ……」


 「……やってみたかったんだよ! いいじゃん! カッコいいじゃん! ロマンじゃん! イトだってやってたじゃん!」


 「男ってのはこれだから面倒臭いニャ……」


 「なんだよ! 猫の頭じゃ難しいのか?」


 「ニャニャ! ニャンて事を言うのニャ! ムキー! ニャ!」


 ミィナはアキトの頭に飛び乗ると、得意のネコパンチをかます。


 「いてて! 悪い! 悪かったよ!」


 「二人とも、喧嘩してる場合じゃないわ」


 「リリィもすまん。じゃあもういいよ……作戦に支障が出るなら本末転倒だしな……」


 「分かればいいニャ……」

 

 ミィナはアキトから飛び降りると、プイッと離れていってしまった。


 「ところで、2人に残念な報告がある。デルタ……ミコは戦線離脱した。このミッションは3人で遂行する。正確には2人と1匹だが……」


 「え?」

 「ニャニャ!?」


 イトから借り受けたインカムはそれぞれアキト、リリィ、ミィナが装着していた。残りの1機はミコに渡す予定だったのだが、ホームルーム終了と同時に姿を消してしまっていて、渡す事が出来なかった。


 「すまねぇ……だが、ミッションにトラブルはつきものだ。その代わりと言っちゃなんだが、俺の数少ない友達に協力を要請した。急な展開には対応出来ないかも知れないが、犯人確保という一点においてはこれ程頼りになる奴は居ないだろう」


 「タケルとかいうノミ屋かニャ?」


 「ああ、それとユーリっていう名のイケメンだ」


 「……了解よ。手筈通りに行きましょう」


 「よし、じゃあリリィはそのまま屋上で待機だ。動きがあったら都度(つど)、状況報告を頼むぜ。ミィナは付かず離れずバックアップを頼む」


 「了解ニャ」


 「それじゃあ、行くぜ? 作戦開始(ミッションランチ)だ!」


 中庭には既に沢山の人で(あふ)れかえっていた。今か今かと、主役達の登場を待ちわびているように見える。


 中庭の中心には噴水のオーナメントが据えられており、告白ならここでどうぞと言わんばかりに噴水の周囲にだけは人がいなかった。


 「あそこに行けってか……自分で言っておいてアレだけど、目立ち過ぎるだろ……」


 「ニャき事禁止ニャのニャ」


 「分かってるよ!」


 アキトはボソッとつぶやいたつもりだったのだが、イトに借りたインカムの感度が抜群のようで、漏れなく弱音を拾う。


 「御船はまだのようだな。噴水の前まで行く。警戒を怠るなよ」


 コソコソしても仕方がない。吹っ切れたアキトは堂々とした態度で噴水に向かって歩く。周囲のザワつきにも(われ)(かん)せずといった様子だが、苦しいくらいに心臓がバクついていた。


 「アッキー、もう3歩左にお願い」


 「あ、ああ、分かった」


 噴水前に到着したアキトは、リリィに言われた通りに動く。周りを見渡すと、改めて人の多さに驚く。チラチラとこちらの様子を(うかが)う者、ただ談笑する者達、もう1人の主役の姿を探す者。あからさまにアキトを見る者はそれほど居ないようだが、人だかりの中心に居ては全く落ち着かない。注目されている中で事を起こすというプレッシャーに押しつぶされそうだった。


 「マッチを発見したニャ。10時の方向ニャ」


 「こちらも(とら)えたわ。すぐ近くにノミ屋もいるみたい」


 刻一刻と状況が変化していた。


 「ノミ屋……タケルの準備もいいみたいだな。ユーリは……いた! やっぱり目立つな……」


 ユーリも既にスタンバイしているようだった。隣には自称美少女双子姉妹、ナナとネネの姿も見える。頭1つ飛び出る程のユーリの長身は、状況確認には持ってこいだろう。


 「目標(マヤ)を確認。6時の方向よ。接触まで2分って所ね。準備はいいかしら?」


 「マジか! 緊張してきた……うっし、気合いを入れろ! オレ!」


 周囲がザワつく。いよいよその時がやってこようとしていた。


 アキトは落ち着け、落ち着けと何度も自分に言い聞かせていた。鼓動がうるさい。マヤの姿を見ると気絶してしまいそうで、後ろを振り返って姿を確認する事も出来なかった。


 「……接触まで30秒」


 「いよいよニャ」


 「10秒……」


 アキトは必死に深呼吸をして酸素を肺に送るが、胸が開かず大きく息を吸い込めない。


 と、その時、


 「……アキトン……」


 周囲の騒音がかき消されたような気がした。ハッキリと耳に残るマヤの声がアキトの心臓を鷲掴みにするようだった。


 アキトはゆっくりと振り返り、マヤと相対する。


 「御船……」


 瞬間、アキトは不思議と落ち着いていた。顔を真っ赤にし、伏し目がちなマヤを見ていると、まるで二人っきりになったようで周りの雑音は全く気にならなかった。


 「来てくれてありがとう。なんだか人がいっぱい居るようだけど、気にしないでくれ」


 「……うん」


 アキトは当たり前のように白々しくそう言ってのけられる自分に驚き、胸が痛む。


 「……こんな事になってすまない……すまない」


 「……うん」


 謝らずにはいられなかった。


 「話を聞いてくれるか?」


 「私も聞いて欲しい事があるの」


 「そうなのか……?」


 「……」


 異様なほど静かだった。固唾(かたず)を飲んで二人を見守る大勢の生徒達。アキトはマヤと二人の空間にいるような気がしていた。


 「御船……まず、お前に謝らなきゃならない」


 「……」


 「これは、俺が考えた作戦なんだ。本当はもっと早く伝えるべきだった。実は……」


 「そんな事だろうと思ってたよ。何となくだけど……」


 アキトはマヤの意外な言葉に驚く。説明するまでもなく、マヤはアキトの考えを読んでいたという事だろうか。


 「……だって、アキトンとミコタンを見てると何となく分かっちゃうんだもん。いっぱい、いっぱい考えたし、私だってバカじゃないよ……」


 「そ、そうなのか? それなら話が早……」


 アキトの言葉を遮るようにマヤがかぶせて言う。


 「だから、私の話を聞いて欲しいの」


 「え?」


 マヤは真っ直ぐにアキトを見ていた。真剣に、思い詰めたように。沈黙は長くは続かなかった。意を決したようにマヤが口を開く。


 「私は……アキトンが好きです。嘘でも、本当の気持ちじゃないとしても、アキトンの告白は心に響きました……どんな告白よりも真剣で、思いやりのこもった告白に……やられちゃったみたい」


 「お、おい……」


 ――大東アキト……


 「これが、私の気持ち。ミコタンがどう思ってるか、アキトンが何を考えているのかよく分からない。だからこれは、何にも考えないで他人の事を全く無視した、私の中の純粋な……ワガママ」


 「み、御船……」


 「だから、言って! アキトン、皆んなが見てる。皆んなが聞いてる。アキトンの気持ちを、私に! どうなってもいいの! どんな事でも受け入れる覚悟があるからっ!」


 ――許せない……


 「……御船、俺は……最低だ。俺はミコが好きなんだ。アイツの事が何よりも大切なんだ……じゃあ、この気持ちはなんなんだ? お前へのこの気持ちが、なんなのか説明がつかない! ついお前の事を考えてしまう! お前といるとドキドキする! お前が悲しんでいると俺も悲しい! お前を苦しめるヤツを許せない! 俺は……どっちにもいい顔をする浮気症のゲス野郎だ! こんな俺を好きだなんて! なのに……お前の気持ちを聞いて本気で喜んでいる俺がいるんだ! お前を……拒絶出来ない……」


 アキトは大声で叫んでいた。


 ――許さない!


 その時、


 「うぐっ!」


 「! アキトン!」


 首を手を当てアキトがもがき出した。呼吸が出来ず、パニックになる。周囲が途端にザワつき出した。マヤは直ぐにアキトに駆け寄り、声にならない声で何事かを叫んでいた。


 「ミィナ! アッキーの様子が! 始まったみたい!」


 「ニャニャ!?」


 「待って! おかしいわ! マッチは……」


 異変に気付いたリリィ、ミィナそしてタケルは直ぐに行動を起こす。タケルはマッチに駆け寄ると肩を掴んで振り向かせた。


 「森田! そこまでだ!」


 タケルがマッチを確保した時、マッチは頭を抱えて呆然としていた。よく聞こえ無いが、うわ言のように何事かをブツブツとつぶやいている。


 「! 違う! 違うぞ! アキト!」


 タケルが叫んでいた。


 ――殺す!殺す!殺す!殺してやる!


 「違うニャ! マッチは何もしてニャいニャ! リリィ! 探すニャ! 能力者は他にいるニャ!」


 「今探してるわ!」


 アキトはインカムから聞こえる絶叫に絶望しながらも、這いつくばりながら周囲を見渡す。


 ――どういう事だ! マッチじゃないのか!? じゃあ、一体、誰なんだ!


 アキトは肺に残されたわずかな酸素を使って必死に状況確認に努めた。長くは持たない、焦りだけが先行していた。


 「嫌……いやーーっ!」


 逃げ出す者、叫びだす者、その場でへたり込む者、騒然とする中でマヤの絶叫が響いていた。


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