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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
2章 超能力
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12話 不可逆地点(ポイント・オブ・ノー・リターン)

12話 不可逆地点 (ポイント・オブ・ノー・リターン)


 「それで? どうすんのニャ?」


 「ど、どうするもこうするも……」


 自分で計画を立てておいて、(しょ)(ぱな)から(つまず)いてしまったアキトは、ダメ元でミィナに相談を持ちかけていた。


 「期限はあと二日しかニャいニャ。それまでにニャんとか出来そうニャのかニャ?」


 「しょ、正直言うと厳しいです……」


 「バカかニャ! アキトが言い出したんニャ! ニャにをビビってるんニャ!」


 「……ミコの言う通りだった。御船にあんな顔をされると、い、言えねぇ……」


 「くぉのDT! 意気地無し! ヘタレ! 童貞! ミコにニャんて言い訳するんニャ!」


 「う、うるせぇ! そこまで言うかよ! 猫のクセに!」


 「ネコは関係ニャいでしょーが!」


 「くっそ! 自業自得なのは分かってんだ。でも……無理だ。今更言い出せん。泣かれて避けられるだけならまだいい方だ。ブチキレられて口も聞いて貰えなくなる……そうなったら、この計画は終わったも同然なんだよ……」


 「……本当に計画の為かニャ? 変ニャ下心があるんじゃニャいのかニャ?」


 「そんなの! あるわけ……無いだろ……」


 「ニャ? 声が小さいニャ!」


 下心が全く無いと言っては嘘になる。仲が悪いよりは良い方が絶対にいい。アキトにとっては、別に付き合うとか付き合わないとかではなく、純粋に今の関係を壊すのが嫌だった。


 「……兎に角、終わった事を悔やんでも仕方ない。俺達は前に進むしか無いんだ」


 「……自分で言ってりゃ世話ニャいニャ。言っとくけど、誰も助けてくれニャいニャ。アキトが自分で何とかするしかニャいんニャ」


 「分かってる……分かってるよ。ところで、そっちの準備は……?」


 「マヤとマッチの顔は確認済みニャ。告白場所の下見も終わったニャ。リリィは既に狙撃場所の選定に入ってるニャ」


 「狙撃だって!?」


 「……まあ、全体を俯瞰(ふかん)で見れる位置を探してるって事だニャ。当日のアキトは動けニャいニャ。犯人の確認及び確保はミィニャとリリィにかかってるニャ」


 「そうか……当たり前だけどもう動き出してんだな……タケルももう噂を流し始めている」


 「主役がこれじゃあ、本番が思いやられるニャ……もうとっくに後戻り出来ない所まで来てるのニャ。しっかりするニャ……」


 「分かってる……泣き言を言ってる場合じゃ無かったな。ミィナ、すまねぇ」


 「アキト、頼まれていた物ニャ。好きに使っていいって事だけど、くれぐれも壊すニャって念を押されたニャ」


 ミィナはテーブルの下に潜り込むと、口に何やらくわえて出てきた。


 「お? 貸してくれたのか?」


 ミィナに言ってイトに借りる打診をしてあったインカムだ。これで当日は相互にコミュニケーションを取る事ができる。


 「市販されていニャい物らしいニャ。丁重(ていちょう)に扱うようにとの事ニャ」


 「分かってるよ」


 アキトが思っていたよりも、着々と準備は進んでいた。


――ガチャ


 奧の部屋からリリィが出てきた。

 

 「あら、アッキー来てたの?」


 「リリィか。イトはどうしてる?」


 「奥で仕事をしてるわ。この部屋は騒がしくなったからって、奥の書室で仕事を出来るようにしたの」


 「そうか……」


 「イトを呼んで来る?」


 「いや、いいよ。情けない所を見せたくねぇ……イトにも、ミコにも……」


 「あたし達には見せてもいいのかニャ?」


 「そう言われれば……不思議なもんだ。ついこの間出会ったばかりだってのに、お前らに癒されてる俺がいる……なんだか妙に落ち着くんだよな」


 「突き放した方がいいかニャ?」


 「……プロポーズかしら?」


 「おい! 人が褒めてんのに!」


 「泣き言を言いたいニャら存分に言うといいニャ。あたしもリリィも突き放す事はニャいニャ……これが母性ってもんニャ。マザコンアキトには嬉しいニャ?」


 「誰がマザコンだよ!」


 「アッキー、また私の胸で泣いてみる?」


リリィはやたらと色っぽい顔とポーズでアキトを誘う。


 「なっ!」


 アキトはリリィの胸で号泣した事を思い出し、恥ずかしさで顔から火が出るようだった。


 「顔が真っ赤だニャ……」


 「照れてるのね?」


 「くっそ! 言いたい放題言いやがって……でも、ありがとう……」


 アキトはミィナとリリィの前では思いがけず素直になれる自分に驚いていた。


 「ニャニャ! 泣いても笑っても、大勢の前で思い切って告白して不埒(ふらち)ものをおびき寄せて取っちめる作戦まであと二日ニャ! みんニャで絶対に成功させるニャ!」


 「おー!」

 「なんだよ、その長ったらしい作戦名は……」


 残り二日、刻一刻とその時は迫っていた。



******************



 そして、作戦当日。


 「アキ……噂が凄い事になってます」


 「わ、分かってる……」


 「……大丈夫ですか?」


 「……自信がなくなってきた……」


 「犯人から何かしらのアプローチはありましたか?」


 「多分、無い。いつも通りだ。それに、タケルがマッチに目を光らせている筈だ……」


 「マッチ……?」


 「何でも無い。こっちの話だ」


 タケルの仕事ぶりは本人が言うだけの事はあって想像を超えた成果をあげていた。


 学園はお祭り騒ぎと化している。非公式にギャンブル紛いの事が平然と行われていた。胴元(タケル)が付けたであろうオッズによると、一番人気は告白後振られるというものだ。続いて人気なのは待ちぼうけのようだ。発狂するというシャレにならないものもあった。


 「タケル君は策士ですね……さながらブックメーカーのようです」


 「やりすぎだろ? どこへ行っても見られてる気がする……」


 「オッズは低いですが、談笑して終わりとか、待ち合わせ前に能力者の邪魔が入るなどの項目もありました。犯人が手を出しにくい状況を作ってますね」


 「……こっちの身にもなって欲しいよ……」


 「この状況下で犯人に能力を使わせる事が出来るんでしょうか?」


 「そこが俺の腕の見せ所って事か……上手く煽って怒らせないとな……」


 「……マーヤと話は出来ましたか?」


 「……」


 「まさか! 何も言ってないんですか!?」


 「……」


 結局アキトは昨日も一昨日もマヤに話し掛ける事が出来ず、作戦当日を迎えてしまっていた。昨日の夜もなかなか寝付けず、授業中も眠気で集中できない。焦りだけ先行し、とてもじゃないが落ち着いていられなかった。


 「……見損ないました! 何も知らないマーヤに告白して、マーヤが受け入れたら付き合うつもりなんですか! そしたら……私は……」


 「……言えなかったんだ。言ってしまったら作戦は実行出来ない。呼び出しに応じて貰えなくなると思うと……」


 「そこを上手く説明するのが! この意気地無し! ヘタレ! 巨乳好き! 変態!」


 「ミ、ミコ……全て、全て終わった後で説明すれば……きっと……」


 ミコは泣いているようだった。悲しそうな顔でアキトを見ると、何も言わずどこかへ走り去っていってしまった。


 「……とんでもない事になっちまった」


 既に作戦決行まで残り二時限となっていた。既に後戻りできない上、ここにきて突然のミコの戦線離脱。アキトは、どうしようもない焦燥感と虚無感にガックリと肩を落としていた。


読んで頂いてありがとうございます。

次もなるべく早く投稿させて頂きます。

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