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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
1章 自然科学部
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15話 情報

15話 情報


 「やっと来やがったな! 遅ぇよ! もう昼休みが終わっちまうだろ!」


 急いで学食に駆けつけたアキトに悪態をついて迫ってくるのはもちろんタケルだ。


 「マジ、すまん。ミコが熱を出した。保健室に連れて行ってたら遅くなった」


 「そうなのか? それは大変だったな。折角来た所悪いが今日はもうお開きだよ。特に有用な情報も無かったからな」


 「金髪美女の事か? 正体はまだ分からないんだな?」


 「ああ、そうだよ。この前先輩達に写真を貸してくれと頼んでおいたんだ。さっき片っ端からそれを回収してきたんだよ。全て合わせるとほぼ全校生徒の写真だぞ」


 「すげぇ量だな」


 大量の写真がテーブルに乱雑に置かれている。サッカー部の連中と思しき生徒達が写真を見ながら談笑している。


 「先輩方から無理を言って貸してもらったんだ。見てもいいが、汚すなよ」


 興味津々だったのがバレてしまったようだ。アキトは分かった、と返事をすると片っ端から写真を確認していく。写真の裏には名前が書いてあり、誰から借りたものなのか分かるようになっているようだ。


 アキトもそうだがここにいる全員が謎の金髪美女の顔を見ていない。だが、何となく写真を見れば分かるような気がしていた。そのぐらいのインパクトが彼女にあったからだ。


 圧倒的な暴力、一度聞いたら忘れられない程に冷たくて魅力的な声、日本人離れした体型、真っ白い肌、スラリと長く細い足、そして美しい金色の髪。


 顔を見たい。写真でもいい。どんな顔をしているのか、どうしても知りたい。アキトは自分を痛めつけた相手への憎悪と、圧倒的な美への欲情の間で揺れ動いていた。


 「アキト、やけに真剣だな。お前は姿さえ見ていないんだろ? 誰を探している?」


 「……タケル、誰にも言わないと約束出来るか?」


 「なんだよ。俺は今日、お前を信じて御船の情報を教えたんだぞ。お前は俺を信じられないのか?」


 タケルは少々ご立腹のようだ。


 「……すまん。だが、これはお前の身の危険も生じるんだよ。流石に殺される事は無いとは思うが……」


 「おいおい、物騒だな!」


 タケルは嫌そうな顔でアキトを見ている。


 --やっぱり無理だ。これは言えない。インカム詐欺師野郎は誰にも言うなと言っていた。人の心を読むヤツが居ると前にタケルが言っていたが、もしアイツも同じような能力を持っていたら……


 「……お前が俺の身を案じているのはお前のその顔を見れば分かる。言いたくないなら言わなくてもいいぜ」


 アキトの尋常ならざる険しい顔を見たタケルはそう言ってアキトの肩を叩いた。


 「悪い……体の一部だけは俺も確認した。言えるのはここまでだ」


 「いいさ。そういえば話は変わるが、行ってみたか?」


 「ん? 何処へだ?」


 「お前なぁ……自然科学部だよ! 前に言っただろ!」


 「あ、ああ、アレね……」


 丁度その事を考えていたアキトはギョッとしてしまった。


 「その様子じゃ、行ってないんだな?」


 「……行くには行ったんだ。何かがあったはずなんだ。でも、覚えてない。忘れた……」


 「……そうか。また記憶が()んだんだな」


 「ああ、五日程前の事だ。恐らくミコをキズ付けた。あれ以来ミコに元気が無いからな。何だかよそよそしいし」


 「そうなのか? それはすまなかった」


 アキトは頭を下げるタケルに驚く。口は悪いが行動がなかなかにイケメンな所に好感を持つ。ミコにべったりでぼっち街道をひた走って来たアキトが、タケルに心を許す理由の一つだ。


 「お前が謝る事じゃないよ。俺はもう一度あの場所に行ってみようと思ってる。記憶を無くす直前に行っていたと思われる、部室棟の最奥の部屋へだ。……ところでタケル、お前は行ったことがあるのか?」


 「あるよ。つい昨日の事だ。俺の未来の彼女の情報を探している時だ。でも自然科学部の部室なんて無かったし、一番奥の、何も書かれてない部屋は鍵が掛かっていた。何人も行っているが皆鍵が掛かっていて入れないと言っている。窓から侵入を試みたヤツもいるが、部室棟の裏はフェンスで囲まれているらしくて窓どころか裏にすら近づけないそうだ。草木が生い茂っていて、あの部屋の窓を確認すら出来ないとかなんとか……」


 「未来の彼女って所は賛否…いや、否しか無いだろうが、そうなのか? だとしたらあの廊下で何かが……」


 「うるせぇ! そこはサラっと流しとけよ!……まぁ、ガセの情報だったようで悪かったな。自然科学部なんて部は無いのかも知れないな」


 「いや、あるよ。生徒会の人が言っていた。ただ、近づかない方がいいとも言っていた」


 「どういう事だ? そもそもどこにあるんだ?」


 「タケル、お前は自然科学部の話をどこで聞いたんだ?」


 「森田(もりた)ってヤツからだ。森田ツカサっていうクラスメイトだ。確かアイツも生徒会の奴から聞いたって言ってたような……」


 「そうなのか? 近づくなとか、あそこの部長はヤバいとか言ってなかったか?」


 「いんや、何だか凄い人が居るらしいってのは聞いた。超能力のスペシャリストとか言っていたな。なかなか会えないらしいような事も言ってたな」


 アキトは生徒会の一員である塩見から得た情報と、タケルから得た情報が全く正反対な事に不思議がっていたのだが、タケルの得た情報の大元が塩見と同じ生徒会関係者だという事に更に首を捻る。


 「俺はあの日、自然科学部の部室に行こうとしていたんだ。いや、きっと行ったんだ。ミコと一緒に。だが、気づいたら部室棟最奥の部屋の前に居た。多分あそこが自然科学部の部室なんだと思う。」


 「何でそう言い切れるんだ? 全く別の思いもよらない事があったとは思わないのか?」


 「何となく、としか言えないが何かこう、引っ掛かってんだよ。頭では忘れてるが体は覚えてる、みたいな? 俺の記憶は全くアテにならないが、確実に経験はしてるんだよ」


 「……そうか、ならそっちはお前に任せる」


 「? 何をだ? 何を任せるって?」


 「また行くんだろ? 自然科学部の捜索はお前に任せるって言ってんだ。俺たちは写真で目星を付けた人全員と直接コンタクトを取る」


 「……写真を見る限り可能性は薄そうだが……」


 「写真と実物が全く違うなんてのは良くある話だぜ? 兎に角、全員の顔を拝んでやらないと気がすまねぇ!」


 タケルはやる気満々のようだ。よく分からない事案より、分かりやすい総当りという選択肢を選ぶのがタケルらしいな、とアキトは思っていた。


 「とりあえず、お前の話に乗ってやる。自然科学部については俺が探りを入れるよ。それと、一つ頼みがある。森田ってヤツに話を聞きてぇ。頼めるか?」


 「うーん、まぁ、大丈夫だが、オススメはしないぜ?」


 急に考え込むタケル。頭に手をやり困った顔をしている。


 「何でだよ!」


 「会えば分かる。頼んどいてやるから、今日の放課後、ウチのクラスに来い」


 「……分かった」


 アキトは詳しく聞きたかったのだが、どうも時間切れのようだ。サッカー部の連中がタケルを呼んでいる。そろそろ昼休みも終わろうとしているらしい。タケルを信じて放課後まで待とうと、そう考えた。


 「じゃあな、俺達は一度部室に行く。放課後、今度は直ぐに来いよ」


 「すぐ隣だろ。遅れるワケねぇよ」


 タケルはサッカー部の連中と行ってしまった。


 「さて、俺も教室に戻るか……弁当食べる暇は……無いよなぁ」


 アキトは一人、教室へと戻るのだった。


*******************************


 ――ぐきゅるるるる……


 「流石に持たなかったか……既に限界を超えていやがる。(しず)まれ! 我のストマックバグ!」


 「何を中二病みたいな事言ってんの? バカなの? 腹の虫が鳴った位で騒がないで」


 アキトの痛い独り言に冷めた口調でナナが突っ込む。隣に立つネネは笑いを堪えているようだ。


 「昼飯を食って無いんだよ! 授業の合間に食べようと思ってたんだが腹が痛くてトイレに篭っていたら食べるヒマが無くなっちまった! 誤算だぜ! 水を飲み過ぎちまったようだ!」


 「知らないわよ! そんな事より早くミコっちの所に行ってあげなさいよね!」


 「きっとミコが首を長くして待ってますよー?」


 ナナとネネの双子姉妹が急かしてくる。今日の授業は全て終わり、皆帰宅準備や部活動までの時間潰しの話題で騒然としている。


 「アキト、丸井にお大事にと伝えといてくれ。俺はもう帰るから。じゃあな、お前も移されるなよ。八代姉妹もじゃあね、さようなら」


 ユーリはそう言って鞄を持つと、ヒラヒラと手を振って教室を後にする。


 「うーん、ユーリ君、本当に帰るの早いわね……」


 「もうちょっとユーリ君とお話したかったですぅ……」


 双子姉妹は残念そうにしている。やはりユーリ人気はクラスでも圧倒的なようだ。


 「なんだよ、お前らユーリに気があるのか?」


 アキトは溜め息をついて二人に質問した。


 「そ、そんなんじゃ無いわよ! イケメンと話をするだけで心が洗われるだけよ!」


 「そうですよ、アキト君。アナタと喋っていても何の得にもならないですけど、ユーリ君みたいなイケメンとお話するとお肌がツルツルスベスベになるんですぅ」


 「恐るべし……ユーリは歩くエステかよ……」


 アキトのツイートも全く興味がないようで、二人は姿が見えなくなるまでうっとりした顔でユーリを目で追いながら、いつまでも手を振っていた。きっと尻尾があれば尻尾も振っていただろう。


 「いかん。早く行かないと。また怒られるな」


 ボサッとしている場合ではない。昼休みの二の舞にならぬ様、早くタケルの所に行かなくては、と考えアキトは帰宅準備を始めた。


 「ミコっちに宜しくね! 私達はお邪魔だろうから行かないけど、ちゃんと優しくするのよ!」


 「早くチューして治してあげて下さいね!」


 相変わらず好き放題言ってくる二人に、アキトは苦笑いして挨拶を済ませると、タケルの元へと急いだ。



読んで頂いてありがとうございます。

続きはまた明日です。

1章クライマックスに向けて鋭意執筆中です。

もうちょっとお付き合い下さい。

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