プロローグ
ハイファンタジーです。
主人公シアの成長の物語を、どうぞお楽しみ下さい!
『とある子供の記憶』
今日も私は、偽善者のふりをしなくてはならない。
朝のお祈りの時間、太ったお腹と、ぱんぱんの顔をした院長が、うすら笑いを浮かべながら言う。
「この世界は皆平等よ。さあお祈りをしましょうね。『神に感謝を、孤児院の先生達に感謝を』」
「……感謝を……するわけないでしょう、ここの大人はみんな嘘つき」
毎回、形ばかりのこの“感謝”という言葉で終わる。
嫌すぎて“感謝を”の後は思わず小声で毒づいた。
ここはフェルノート共和国の東方寄りにある、色んな種族の……所謂、理由理由ありで捨てられた子供達がいる孤児院だ。
ここでの生活は、子供には大変だ。一番鶏が鳴く前に起きて掃除や洗濯、奉仕作業をさせられ、へとへとになった頃やっと食事を貰える。食事も固いパンと味のないスープだけ。
お腹いっぱい食べたいなんて贅沢言わないから、ひと口だけ、甘いものが食べてみたい。
院長先生達が時々、甘い香りを漂わせているのを知っている。
大人のお気に入りの子だけが貰える、甘いお菓子。
私は、分けてなんか貰ったことないけど。
「……結局、そんな世界だって分かっているもの」
苦々しく笑いながら自分を納得させる。
大人も子供も皆知っている。この世界の『平等』なんて良い言葉、そんなものは、どこにもないって事を。
今日は勝手に決められた私の誕生日。15歳になるので孤児院を出ていかなくちゃならない。
荷物なんて物はほとんどない。古いペンダントをひとつ、大事に手に取る。
「あなただけは私といつも一緒だね」
そう話しかけ、手に馴染む触り心地を確かめた。
誰の手に渡っても必ず戻ってくるこのペンダント。
おかげで、気味悪がって誰も触れなくなった。
これだけが私の物、私が私であるための唯一の証だと思っている。
孤児院を出る準備があっという間に終わった。
私は院長達に一応挨拶をしたけれど、仕事の斡旋所への紹介状だけを渡され適当にあしらわれた。
なけなしの荷物を持ち、孤児院の外に一歩出た。
広い空の下、一人だと実感し心が萎びれていく感じがする。
「はぁ、これから一人でどうしようかな。まずは仕事……寝る場所……名前も」
あえて独り言で心を奮い立たせようとした。
自分の名前を知らないし、誰にも貰えなかった。空腹だけが今日も生きてるんだって教えてくれている。
でも、心の支えになっている事は、ひとつだけあった。
昔から、同じ人が夢に出てくる。
優しく名前を呼んで、頭を撫でて、抱き締めてくれる。
自分がなんて名前を呼ばれてるかは分からないし、その人の姿形は朧気にしか見えない。
だけど、その人を見ると、胸がぎゅっと押し潰されそうになる。
切なくて、会いたくて、涙が出る。
すごく会いたいと思う人。いつか本当に出会えるといいな。
――その人ならもしかして――
「でも……今の私を、助けてくれる誰かなんているわけない……よね」
そんな願いは叶わないと知りつつ、また言葉にして吐き出した。
◇◇◇◇◇
赤い髪の痩せ細った子供は、まだ薄暗い遥か空の彼方を無気力に見つめた。
「夜明けはまだ先かな。私もいつか……笑って空を見上げるのかな」
そっと呟いた言葉は吹き荒む風の中に消えていく。
その小柄な人影は、小さな町がある東へ、夜明けを求めるように歩きだした――
更新は不定期です。
どうぞ、よろしくお願いいたします(*・ω・)*_ _)ペコリ




