第96話 機神覚醒
クラウス王子のもう一方の腕も変形し、手の平からは不気味な光が漏れ始める。
金属と生身が融合したその姿は、もはや人間の域を超えていた。
「離れろ!」
エリザが叫んだ。
次の瞬間、エネルギーの奔流が放出された。
ガレスは大斧を盾に構え、直撃を食らう。
衝撃で彼の巨体は後方へ吹き飛び、城壁に激突。
「ガレス!」
レオンが叫ぶ。
「心配するな……まだ終わってないぜ……」
ガレスは苦しそうに立ち上がり、再び大斧を握りしめ、笑みを浮かべた。
キースは次々と矢を放つ。
1本、また1本と、機械の関節部、エネルギー源と思しき発光部を狙い撃つ。
しかしクラウスの防御は固く、矢のほとんどが表面で弾かれる。
「無駄な抵抗だ」
クラウスの声には、もはや人間の感情はなかった。
冷たい機械音のように響く。
「私はすでに人間を超えている。お前たちのような旧時代の存在に敗れるはずがない」
彼の体からさらにワイヤーが伸び、今度は城塞そのものに食い込み始めた。石壁が軋み、梁がきしむ。城全体が、巨大な機械の一部として動き始めようとしている。
「彼は城ごと機神化しようとしている!」
マルクスが叫んだ。
「これを止めなければ、東嶺全体が彼の支配下に置かれる!」
フリーデリカがレオンの元に駆け寄った。彼女の顔には決意と、わずかな希望の光が宿っていた。
「城の地下には古代の結界があるわ!父が教えてくれたの。強大な力を封じるために使われていたと!」
「どこだ?」
レオンが尋ねた。
「本殿の地下!でも入り口は殿下の真後ろにある!」
レオンは状況を把握した。
彼は仲間たちに視線を送り、無言で合図をした。
長く共に戦ってきた者たちの間に通じる、言葉を要しない了解がそこにあった。
ガレスが再び突撃を開始した。
大斧を振るい、ワイヤーの群れを薙ぎ払いながら、クラウスの注意を引きつける。
その動きは先ほどより鈍いが、意志の力がそれを補っていた。
アーサーは全力で魔法の障壁を展開し、エネルギーの攻撃から仲間を守る。老魔術師の額に汗がにじみ、杖を持つ手が震えているが、その目は一点の曇りもない。
キースは息を整える。
彼は狙いを定め続ける。
1本の矢が、ついにクラウスの片目の脇にある発光部を直撃した。
火花が散り、機械化した王子が初めて痛みらしき反応を示す。
手で傷口を押さえ、うめき声にも似た機械音を上げた。
「この……猟師め……!」




