第91話 炉心の崩壊
谷の外では、陽動作戦は激化していた。
レオンたちは機神兵の大群に包囲され、撤退の機会を失いつつあった。
「キースたちの合図はまだか!」
ガレスが機神兵を一撃で両断しながら叫んだ。
エリザが周囲を見渡した。
機神兵の数は増え続け、谷の出口は完全に塞がれていた。
「このままでは全滅します! 撤退しましょう!」
レオンは額の汗を拭いながら、谷の奥を睨んだ。
「まだだ……キースたちが成功するまで、ここで持ちこたえる!」
その時、谷の奥から轟音が響いた。
そして、機神兵たちの動きが一斉に止まった。
彼らの銀色の体が崩れ落ち、無力化していく。
目に見えるエネルギーが流れ出し、彼らの動力を支えていた炉心の供給が断たれたのだ。
「成功だ!」
レオンが叫んだ。
「キースたちが炉を止めた!」
部隊は一気に勢いを取り戻し、残った機神兵を蹴散らしながら谷の外へと脱出した。
機神兵はまだ動くものもあったが、その動作は鈍く、もはや脅威ではなかった。
一方、制御室では激しい戦いが繰り広げられていた。アルフォンスのバックアップは、ワイヤーからエネルギーを供給され、驚異的な戦闘能力を発揮していた。
それは人間の戦士とは異なる、機械的な精度と速度を持っていた。
「無駄だ!」
バックアップが叫ぶ。
「炉はすでに殿下の手に渡っている! たとえこの炉が破壊されても、設計データはすべてバックアップされている! 殿下はどこでも新たな炉を建設できる!」
アーサーが強力な魔法を放ち、バックアップのワイヤーを切断した。
青い光の刃がワイヤーを焼き切り、バックアップの動きが瞬間的に鈍った。
「ならば、データもすべて消し去ってみせよう!」
キースが機会を逃さず、制御パネルに爆裂矢を放った。スクリーンが砕け、計器が火花を散らした。
「愚か者め!」
バックアップの体から火花が散り始めた。
「殿下は……殿下の理想は……」
その言葉を最後に、バックアップの体が崩れ落ちた。制御室の灯りが次々と消え、炉心部の水晶が暗くなっていく。
キースとアーサーは急いでデータ記録装置を探した。そして、主要なサーバーを見つけると、物理的に破壊した。
「これで少なくとも、この炉のデータは失われた」
アーサーが息を切らせながら言った。
「しかし、彼の言う通り、殿下はバックアップを持っているかもしれない」
「それでも、時間を稼いだ」
キースが言った。
彼は破壊されたサーバーを見つめ、確信を持って続けた。
「殿下が新たな炉を建設するには、時間がかかる。その間に、私たちは次の手を打つ
「あとはレオンたちに任せよう」
2人は崩れかけた制御室を脱出し、来た道を戻り始めた。
背後では、炉心の最後の光が消え、巨大な施設が静寂に包まれていった。
キースは矢を構えたまま、ゆっくりと呼吸を整えた。アーサーは杖を握りしめ、古代語で防御の呪文を囁き始めた。
バックアップが動いた。
ワイヤーを伝って制御室のエネルギーが彼の体に流れ込み、機械の腕から青白いエネルギーが迸る。
キースの矢が放たれ、アーサーの呪文が紡がれる。
炉心の鼓動が高鳴る制御室で、最後の戦いの幕が上がった。




