第92話 クラウス殿下の到着
午後3時、クラウス殿下の一行が東嶺の城門に到着した。
華麗な馬車から降り立つ殿下は、優雅にフリーデリカ子爵に近づいた。
彼女の心は不安でいっぱいだったが、顔には領主としての平静さを保っていた。
「フリーデリカ子爵、久しぶりだ」
殿下の声は滑らかで、どこか冷たさを感じさせた。
「東嶺の空気は相変わらず清らかだ」
「殿下、ようこそお越しくださいました」
フリーデリカが丁寧にお辞儀をした。
「ささやかな城ですが、どうぞごゆっくり」
殿下の目が鋭く光った。
「実は、この訪問には重要な目的がある。東嶺に伝わる古代遺跡について、調査を進めたいのだ」
「古代遺跡でございますか?」
フリーデリカが無知を装った。
「東嶺には多くの伝説がありますが、具体的な遺跡の位置はわかっておりません」
「そうか?」
殿下の口元にほのかな笑みが浮かんだ。
「では、『死者の谷』という場所はご存じないか?」
その時、1人の家臣が慌てて走り寄り、フリーデリカに何か囁いた。
彼女の顔色が一瞬で変わった。
「何があった?」
殿下が尋ねた。
フリーデリカは深く息を吸い込んだ。
「殿下、申し上げにくいことですが……『死者の谷』で大規模な崩落が発生したとの報告が入りました。調査に向かった我が家臣たちの安否が心配です」
殿下の表情にわずかな動揺が走ったが、すぐに平静を取り戻した。
「それは残念だ。では、遺跡調査は延期せざるを得ないな」
しかし、その時、城門の方から騒ぎ声が聞こえてきた。
レオンたちが戻ってきたのだ。
彼らは戦いの傷を負い、服はぼろぼろだったが、その目には確かな勝利の光があった。
殿下がゆっくりと振り返り、レオンを見つめた。
「お前は……レオンではないか。追放された勇者が、なぜここに?」
レオンは一歩前に出た。
彼の目は殿下を直視し、その視線には疲労と決意が混ざっていた。
「殿下、我々は真実を求めてここに来ました。そして、ついに見つけました」
「真実?」
殿下の声にわずかな震えが走った。
「何の真実だ?」
レオンは革の筒を取り出し、中から書類と、炉心部の破片を取り出した。
炉心部の破片は青白く光り、触れると微かに震えている。
書類は古びた羊皮紙と新しい報告書が混ざり、殿下の印章がいくつも押されていた。
「殿下の『新生計画』の真実です。機神兵による人間の置き換え、魂の転写実験、そして『機神の炉』建設の真実を」




