第88話 機神の炉の破壊計画
広間は重い沈黙に包まれた。
燭台の炎が揺れ、壁に巨大な影を投げかけていた。
その影は、集う者たちの決意と不安を、歪みながらも増幅しているようだった
フリーデリカが最初に口を開いた。
「では、我々がすべきことは明らかだ。殿下が東嶺に到着する前に、『機神の炉』を破壊し、すべての証拠を確保する。あの施設が動き続ける限り、この領地の闇は晴れない」
「しかし、炉の防備は堅固です」
エリザが警告した。
「我々が脱出した後、さらに警備が強化されているでしょう」
一瞬の沈黙が流れた、
「ならば、正面からではなく、別の方法で接近するしかない」
キースが静かに言った。
「死者の谷には、まだ我々が知らない経路があるかもしれない」
アーサーがうなずいた。
「古代の施設には、必ず緊急用の脱出路や保守用の通路が設けられている。それを見つけられれば、炉心部に直接潜入できる可能性がある」
レオンが地図を広げた。
燭光が、東嶺の険しい地形を浮かび上がらせる。
「では作戦はこうだ。キースとアーサーが古代通路を探す。2人の知識と勘が頼りだ」
レオンの指が地図上を滑り、次に城塞へと移る。
「ガレス、エリザ、そして私は陽動部隊を率いて正面から注意を引きつける。小競り合いを装い、守備隊の目をそらす。マルクスはここに残り、ルドルフ侯との連絡を維持する。侯爵の支援がなければ、我々は孤立する」
フリーデリカが立ち上がった。
「私は城に留まり、殿下の訪問への準備を整える。宴会を開き、視察の行程を組む。時間を稼ぎ、諸君の行動を可能な限りカモフラージュしよう。殿下が到着すれば、守備隊の注意も城に向かう。それが諸君のチャンスだ」
「しかし、殿下が到着した時、子爵はどうするおつもりですか?」
エリザが心配そうに尋ねた。
彼女の目には、主君への忠誠と不安が入り混じっていた。
フリーデリカはほのかな笑みを浮かべた。
「私は東嶺の領主です。客人を丁重にもてなすくらいはできます。特に、その客人が王国の第一王子であればなおさらです」
彼女の目には、燭台の炎が一点の輝きとして宿り、危険な賭けに出る者の覚悟が、静かに、しかし激しく燃えていた。




