第86話 フリーデリカへの報告
彼は革の筒から書類を取り出し、机の上に広げた。
機神兵の設計図、古代文字で書かれた記録、そしてアルフォンスの最後の言葉を書き留めたメモ。
フリーデリカはそれらを一つ一つ仔細に検討した。
彼女の表情は次第に青ざめ、最後には机に手をついて深く息を吸い込んだ。
「これは……まさか」彼女の声は震えていた。
「クラウス殿下が、ここまでやっていたとは。機神兵による人間の置き換え……そんなことが本当に可能なのか?」
「可能です」
アーサーが重々しく言った。
「我々が目撃しました。あの機神兵たちは、単なる機械ではありません。かつてそこに人間がいた……その痕跡を感じました」
エリザが補足した。
「殿下は3日後に東嶺を訪れるとのこと。おそらく、『機神の炉』の完成を確認し、次の段階に移るためでしょう」
広間の空気が張り詰めた。
外では夕闇が迫り、部屋には燭台の灯りだけが揺れていた。
フリーデリカはゆっくりと顔を上げた。
「では、我々には3日しかない。殿下の計画を阻止し、この真実を王国全体に知らしめなければ」
「しかし、殿下を直接告発する証拠はまだ不十分です」
レオンが指摘した。
「機神兵の存在と殿下の関与を証明するには、さらなる証拠が必要です」
その時、キースが窓辺に歩み寄った。
「何か来る」
皆が窓の外を見た。
闇の中を、一つの光がゆっくりと近づいてきた。
それは提灯の明かりで、それを掲げて城門に向かう人影が1人。
門の警備兵が声をかけるのが聞こえた。
「そこを止まれ! 夜間の通行は禁止されている!」
「急ぎの用件だ!」
返ってきた声は若く、切迫していた。
「北境侯ルドルフ閣下からの使者だ! フリーデリカ子爵と民衆勇者たちに会わなければ!」
レオンとフリーデリカが顔を見合わせた。
「ルドルフ侯からの使者?」
フリーデリカが眉をひそめた。
「すぐに通すように」
数分後、広間には泥と汗にまみれた若い使者が連れて来られた。
彼は20歳前後で、旅装束はぼろぼろだったが、その目には確かな意志が光っていた。
「フリーデリカ子爵、そしてレオン様」
使者は深く頭を下げた。
「私は北境侯ルドルフ閣下の家臣、マルクスと申します。侯より、重大な情報を持参しました」




