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勇者が勇者パーティから追放されました ー王国の勇者から民衆の勇者として旅をしますー  作者: ぶっくん


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第85話  霧の谷の夜明け

アルフォンスは壁際に倒れ、かすかに息をしている。


レオンが彼のそばに駆け寄った。

「殿下の計画は終わった。王国の真実を明らかにする」


アルフォンスはかすかな笑みを浮かべた。

「……終わった? ふふ……まだ……始まりも……していないのだ……殿下は……もっと深い計画を……」


彼の言葉が途絶え、息が止まった。


レオンが手にした水晶は、もはや震えていなかった。ただ、ほのかな温もりだけが、彼の掌に宿っている。


「終わったのか……」


ガレスが呟いた声に、アーサーがゆっくりとうなずく。


「ああ、終わった」


彼の目には、長い戦いの終わりを認める安堵と、失われた古代の知恵への深い畏敬の念が宿っていた。


「我々は……ただの武器ではなかったものを、正しく使うことができた」


レオンは深く息を吸い、仲間たちの元に戻った。

ガレスは傷を負いながらも立ち、アーサーはキースに支えられていた。

エリザと東嶺の兵士たちも、多くの傷を負いながらも生き残っていた。


ガレスが大斧を肩に担いだ。


「次はどこへ行く?」


「東嶺に戻り、フリーデリカ子爵にすべてを報告する」

レオンが答えた。

「そして、殿下の次の手を探る」


朝日が霧の谷を優しく照らし、夜明けの光が戦いの傷跡を包み込んだ。


レオンは振り返り、地下への入り口を見つめた。

あの暗い穴には、人間の傲慢と技術の危険性が埋められていた。

そして、それに立ち向かう勇気と絆も。


エリザは深々と頭を下げた。

「民衆勇者たちの力なくしては、この勝利はありえませんでした。東嶺を代表して、感謝申し上げます」


「我々の戦いはまだ終わっていない」

レオンが言った。

「殿下の計画の全容はまだ明らかになっていない。アルフォンスが言ったように、これはほんの始まりに過ぎないかもしれない」


彼は崩れかけた地下空洞を見上げた。

「だが、今日我々は勝った。人間としての誇りを守り、仲間を守り、王国の未来を守るために戦えることを証明した」


一行は傷ついた者を支え合い、死者の谷を後にした。霧見の水晶の光は次第に弱まり、朝日が山肌を黄金色に染め始めていた。


足取りは重く、戦いの疲れが全員の顔に刻まれていたが、その目には確かな決意が宿っていた。


エリザが先頭に立ち、霧の残る山道を確実に進む。

彼女の長い金髪は朝露に濡れ、時に金色の光を放った。


「あの機神兵たち……」

ガレスが背中の大斧の柄に手をやりながら呟いた。

「あれが殿下の目指す未来か。人間のいらない世界だなんて、冗談じゃない」


アーサーは息を整えながら頷いた。

「古代の技術をここまで復元したとは……クラウス殿下の才覚は本物だが、その方向性が完全に誤っている。人間の魂を機械に封じ込めるなど、もはや技術の冒涜だ」


キースは無言で後方を警戒しながら歩いていた。

彼の鋭い目は常に周囲を探り、わずかな物音にも反応した。


レオンは胸の革の筒に手を当てた。

中には、機神炉心の設計図の断片と、アルフォンスが残した記録が入っている。

これが、殿下の計画を暴く決定的な証拠となる。


「フリーデリカ子爵にはすべてを伝えなければ」

レオンが言った。

「殿下が東嶺を訪れるという。その前に真実を知ってもらう必要がある」


東嶺の城塞に到着したのは、その日の夕刻だった。

門の衛兵たちは、疲れ切った一行を見て驚いたが、エリザが手を挙げるとすぐに道を開けた。


城の広間では、フリーデリカ子爵が待っていた。

彼女の傍らには、グスタフ男爵からの伝令も到着しており、西山の状況を報告していた。


「生きて戻られたのですね」

フリーデリカが立ち上がり、一行を迎えた。

その目には安堵の色が浮かんでいたが、すぐに険しい表情に変わった。

「しかし、おそらく良い報告ではないのでしょう」


レオンは一歩前に出て、深々と頭を下げた。

「子爵閣下、我々は『死者の谷』で恐るべき真実を目にしました」

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