第81話 死者の谷の最終決戦
アルフォンスの宣言が地下空洞に響き渡る中、レオンは剣を握りしめた手に力を込めた。
霧見の水晶が彼の左手で微かな青白い光を放ち、銀色の糸をたなびかせる無数の機神兵たちの輪郭を浮かび上がらせていた。
無機質な銀の糸が無数に絡み合い、人間の形を模しながらも、どこか生命のぬくもりを欠いた存在が50体以上も立ち並んでいる。
「陣形を組め!」
エリザの鋭い号令が空洞に反響した。
東嶺の精鋭20名が素早く動き、盾を前面に構えた防御陣形を形成する。
彼らの動きには、長年の共同訓練によって培われた完璧な連携があった。
ガレスが背中の大斧を引き抜き、低く唸った。
「ちっ、数が多すぎる。だが、これまでだって楽な戦いばかりじゃなかったさ」
「数では負けているが、信念では負けぬ」
アーサーが古びた杖を掲げ、複雑な詠唱を始め
た。
彼の声は低く、しかし確かに空間を満たす。杖の先端から淡い光の粒子が漂い始め、蝶のように舞いながら仲間たちの武器や鎧に付着していく。
剣には鋭さの輝きが、盾には堅牢さの重みが、鎧には守護の温もりが加わっていく。
「強化の術を授けよう。短時間だが、諸君の刃はより鋭く、鎧はより堅牢になろう」
キースは片目を細め、機神兵たちの動きを観察していた。
「規則的な動き……集団として連動している。だが、個々の判断はない。中央の制御に依存しているはずだ」
「ならば、あの男を狙うしかない」
レオンがアルフォンスを見据えた。
アルフォンスは嘲笑を浮かべていた。
「無駄な抵抗だ。我が機神兵は、人間の限界を超越している。疲れを知らず、恐怖せず、絶対的な服従を旨とする。見よ、これが新時代の軍隊だ!」
アルフォンスが手を振ると、機神兵の第一波が動き出した。
銀色の糸が無数に伸び、鋭い切断音を立てながら空中を蛇行する。その動きは有機的でありながら、機械的な正確さを兼ね備えていた。
「盾!」
エリザの叫びと同時に、東嶺の兵士たちが盾を高く掲げた。
強化術の効果か、盾の表面にはかすかな光の膜が張られている。
銀色の糸が盾にぶつかり、金属を切り裂くような鋭い音が響き渡る。
いくつかの盾に深い傷が入ったが、なんとか第一波を防ぎきった。
「反撃だ!」
レオンが先頭に立ち、剣を振るった。
彼の動きは流れるような一連の動作だった。
盾の隙間から飛び出し、地面を蹴り、最も近い機神兵へと斬撃を浴びせる。
剣が機神兵の胸部を直撃する。
金属の衝撃音が鳴り響き、機神兵はよろめいたが、倒れはしなかった。
傷口からは銀色の液体のようなものが滴り落ち、その下には複雑な歯車と導管が覗いている。
「硬い!」
レオンが叫ぶ。
彼の剣には、機神兵の外殻にできた浅い傷跡だけが残っていた。
「弱点を探れ!」
キースが弓を引き、機神兵の関節部分を狙い撃った。
矢が正確に膝の継ぎ目に命中し、機神兵は片膝をついた。
「関節が弱点だ!」




