第80話 機神の覚醒
銀色の糸が集まり、十体、二十体の「何か」が形作られていく。
それらは完全な巨人ではなく、様々な大きさと形をしていたが、すべてが同じ銀色の糸で構成され、中心に微かに光る水晶を宿している
エリザが息を呑む。
「東嶺で目撃された……金歯車に『似た』者たち……」
「彼らは金歯車兵団ではない」
アルフォンスが説明する。
「彼らは、機神術による新たな人類……『機神兵』だ。完全なる忠誠、絶対的な服従、そして不死に近い耐久性を持つ」
レオンは仲間たちを見渡した。
ガレスは既に大斧を構え、戦闘態勢を整えている。
アーサーは杖を握りしめ、防御の魔術を展開しようとしている。
キースは谷の奥、機械構造の深部を鋭く見据え、弱点を探っている。
エリザと東嶺の精鋭たちも、それぞれの武器を手に、決意に満ちた表情で待機している。
戦いは避けられない。
「ガレス、前衛を頼む。アーサー、支援と防御。キース、あの機械構造の弱点を探れ。エリザ、仲間たちを指揮して側面から」
レオンの指示は冷静だった。
心臓は激しく鼓動しているが、頭は冷めていた。
これが民衆勇者の旅の終着点かもしれない。
あるいは、新たな戦いの始まりかもしれない。
「アルフォンス大司教」
レオンが再び声をかけた。
「あなたの目指す世界に、人々の笑顔はあるのか? 自由な選択はあるのか? 愛する者と過ごす、何の変哲もない一日はあるのか?」
アルフォンスは一瞬、言葉を失ったように見えた。しかしすぐに、冷たい表情を取り戻す。
「感情など、進化の過程で捨て去るべき未熟な要素だ。完全な理性こそが、真の平和をもたらす」
「それでは、人間ではない」
レオンが剣を構え直した。
銀色の糸で作られた軍勢が、一斉に動き出した。それらは音もなく滑るように進み、無機質でありながら、どこか生々しい動きを見せている。
「我々は人間として戦う。不完全で、矛盾だらけで、時には愚かな選択をする、それでも前に進み続ける人間として」
レオンの言葉を合図に、戦いが始まった。
アルフォンスが高らかに宣言する。
「ここで歴史は変わる! 古き人類の時代は終わり、新たな機神の時代が始まるのだ!」




