第74話 機神の炉と霧の巨人
巨大な門が完全に開き、一行はその奥へと足を踏み入れた。
地下空間は彼らの想像をはるかに超えていた。
天井は高く、無数の光る石が星空のように輝き、青白い光が古代の工房跡を照らし出していた。
床には複雑な配管や導線が張り巡らされ、ところどころに巨大な機械装置が設置されている。
それらはすべて、古代の技術で作られたものだが、ところどころに新しい部品が接ぎ木されている。
最近になって誰かがこれらの装置を修復し、動かそうとしている痕跡だ。
空間の中央には、特に巨大な装置がある。
それは巨大な炉のような形状で、内部では何かが発光している。
炉の周囲には、無数の作業台や計器類が配置され、そこには書類や設計図が散乱している。
「ここが……『機神の炉』……」
アーサーが息をのむ。
彼の目は、古代の技術の粋を集めたこの空間に釘付けになっていた。
「信じられない……古代王国は、ここまで高度な技術を……」
エリザが書類の1つを拾い上げる。
「これは……現代の王国語で書かれています」
『第3起動実験』
『魔力増幅率、予想の120%』
『制御不能の危険性あり』
レオンが別の書類を見る。
「『殿下への報告書』
『機神起動に必要な魔力供給源として、北境の地脈を利用する計画』
『地脈の過剰抽出は、周辺地域の魔力枯渇を招く危険性があるが、殿下の御意思により実行可』」
「北境の魔力枯渇……」
レオンが革の筒を握りしめる手に力を込める。
「つまり、北境の飢饉と貧困は……偶然ではない」
霧見の水晶が放つ青白い光が、濃密な霧をかき分ける。
その光輪の中に、民衆勇者たちと東嶺の精鋭たちの姿が浮かび上がっていた。
エリザ、長い金髪を霧の湿気でまとわせた女性騎士が、剣を構えて前方を見据える。
「あれが……『死者の谷』の守護者か」
霧の巨人は、霧そのものが形を成したような存在だった。
その巨体は谷の幅いっぱいに広がり、不定形ながらも鎧のような質感を持ち、顔と呼べる部分には二つの深い窪みが赤く光っていた。
巨人が踏み出す一歩ごとに、地面が震え、岩が砕ける音が谷に響き渡る。




