第73話 機神の炉への扉
巨大な岩壁の中央に、人工的な門のようなものが見える。
門の上には、先ほどの紋章……歯車と翼を組み合わせた紋様が大きく刻まれている。
「あれが……『機神の炉』への入口か」
レオンが呟く。
エリザが頷く。
「東嶺の古い記録によれば、死者の谷の最深部には、古代の工房跡があると言われています。しかし、これまで誰もその存在を確認できませんでした。霧に阻まれて」
アーサーがため息をつく。
「殿下は、この霧の防衛機構を利用して、入口を隠していたのだ。我々が装置を破壊したことで、霧が晴れ、真の入口が現れた」
レオンは仲間たちを見渡す。
ガレスは傷だらけになりながらも、まだ戦えるという眼差しでいる。
アーサーは魔力を使い果たし、疲労の色が濃いが、意志の炎は消えていない。
キースは冷静に周囲を警戒し、次の危険に備えている。
エリザと東嶺の精鋭たちも、数人の負傷者を出しながらも、士気は高かった。
「我々はここまで来た」
レオンが言う。
「殿下の計画の核心が、この先にある。引き返すべきか、進むべきか」
ガレスが大斧を肩に担ぐ。
「当然、進むだろ。ここまで来て引き返すか?」
アーサーが弱々しく笑う。
「ふむ……この老いぼれも、もう少し古代の秘密を見てみたいものだ」
キースは無言でうなずく。
エリザは東嶺の兵士たちを見渡し、彼らが一斉にうなずくのを確認する。
「レオン様、我々東嶺の者も、この秘密を暴くために参りました。共に進みましょう」
レオンは深く息を吸い込み、革の筒を胸に押し当てた。
「では、行こう。王国の真実を求めて」
一行は、岩壁の巨大な門へと歩みを進める。
門は巨大な金属製で、表面には複雑な彫刻が施されている。
中央には、鍵穴のような窪みがある。
アーサーが近づき、彫刻を調べる。
「……これは、古代の魔力を鍵とする仕組みのようだ。単純な物理的な鍵ではない」
レオンは霧見の水晶を取り出す。
水晶は門の前で、より強く輝き始める。
「この水晶が……鍵になるのか?」
レオンが水晶を門の中央の窪みに近づける。
すると、水晶が自ら浮かび上がり、窪みに収まる。
ぴたりとはまった。
門が低い唸りを上げて動き始める。
巨大な金属の扉が、ゆっくりと内側へと開いていく。
中からは、冷たい空気と、油と金属の混ざったような古い匂いが漂ってくる。
一行は息を飲み、門の奥へと足を踏み入れる。




