第72話 霧散の谷
その瞬間、背後で大きな爆発音が響いた。
ガレスの斧が装置の主要部分に深く食い込み、アーサーの魔法が内部の機構を破壊していた。
機神の炉から青白い光が爆発的に放出され、装置全体が歪み始めた。
アーサーの魔力が装置の核心に達し、内部から青白い光が漏れ始める。
歯車の回転が乱れ、金属が軋む不気味な音が高まった。
そして、突然すべての動きが止まった。
霧の巨人が崩れ始めた。
巨大な体が霧へと解け、次第に薄れていった。
谷全体に広がっていた霧も、ゆっくりと晴れ始めている。
指揮官は崩れゆく装置を見つめ、膝をついた。
「まさか……殿下の計画が……」
レオンは剣を下ろし、指揮官を見下ろした。
「帰れ。クラウス殿下に伝えよ。力による支配は、決して永続きしないと。真の秩序は、民の信頼の上にのみ築かれるものだと」
金歯車の傭兵たちは戦意を失い、撤退を始めていた。エリザと東嶺の兵たちが彼らを見送り、装置の周りに集まってきた。
古代装置は最後の火花を散らし、完全に動きを止める。
霧は少しずつ薄れ始め、死者の谷の本来の姿を現し始める。
キースがレオンのそばに駆け寄った。
「大丈夫か?」
レオンはうなずき、崩れゆく機神の炉を見つめた。
古代の技術は確かに驚異的だったが、それを手にした者の意図が間違っていれば、これほどの破壊をもたらす。
「これで、霧の巨人の脅威は去った。だが……クラウス殿下の野望は、まだ終わっていない」




