第70話 古代の機械装置
「あの紋章……」
レオンが息をのむ。
その紋章を見た瞬間、レオンの記憶が呼び覚まされた。
「グスタフ男爵の城塞で見た、金歯車傭兵団の徽章に似ている。
「これは……『機神の炉』の紋章だ」レオンが呟く。「霧の巨人は、単なる怪物ではない。誰かがこの地に築き上げた『装置』の一部なんだ」
アーサーが杖を握りしめ、声を震わせた。
「ならば、操っている者が近くにいるはずだ。霧の源を断たねば、巨人は倒せない」
キースが新たな矢をつがえ、霧の奥を指さした。「ワイヤーの反応……あの方向だ。何か大きなものが動いている」
彼は片目を閉じ、残った目で霧の動きを追う。
猟師としての本能が、自然の流れに逆らう不自然な点を探し出す。
「……あそこだ」
キースが矢を放つ。
矢は霧の中へ消え、遠くで何かが砕ける音がした。
同時に、霧の巨人の動きが一瞬、乱れる。
「効果があった!」
エリザが叫ぶ。
「キース様の矢が、何かを破壊しました!」
「全員、霧の源を目指す」
レオンが決断を下す。
「巨人は囮に足止めさせろ。キース、ガレス、お前たちが前衛を務めろ。アーサー、霧をできるだけ払って進路を確保しろ。エリザ、兵士たちに援護を頼む」
「了解です」
エリザが頷く。
「東嶺の兵は、どんな霧の中でも道を見失いません」
ガレスが大斧を肩に担ぎ、笑みを浮かべた。
「やっと本題だな。でかいのをぶっ叩くのは楽しいが、元凶を叩き潰すのはもっと楽しいぜ」
アーサーは杖を地面に突き刺し、より強力な詠唱を始める。
杖から拡がる光の波紋が、霧をかき分け、1つの方向へと道を作り出す。
キースが次々と矢を放ち、霧の奥へと目印をつけていく。
矢の軌道が、霧の中の一点へと収束していく。
「今だ!」
レオンが号令をかける。
ガレスを先頭に、東嶺の精鋭たちが一斉に突撃する。槍の穂先が一斉に光り、霧を切り裂いていく。
霧の巨人は狂ったように腕を振り回し、一行を阻もうとするが、動きは明らかに乱れている。
キースの矢が、操り手の装置を少しずつ破壊しているのだ。
レオンも剣を抜き、突撃に加わる。
彼の剣技は、かつて「王国の勇者」と呼ばれた頃の冴えをまだ留めていた。霧の触手を次々と切り払い、光の道を進んでいく。
そしてついに、霧の奥にそれを見つけた。
岩壁に埋め込まれた、古代の機械装置。
複雑な歯車と導管が絡み合い、中央には先ほど見た紋章と同じ紋様が刻まれている。
装置の周囲には、灰色の鎧をまとった数人の人影がいた。




