第59話 東嶺への道
レオンは老人から詳細を聞きながら、心の中で状況を整理していた。
金歯車傭兵団あるいはその類似組織が東嶺で活動している。
彼らは古い知識や技術を求め、時に略奪や拉致まで行う。
そして、その背後にはクラウス殿下がいる。
殿下が自ら東嶺に向かうという情報は、この活動が最終段階に入ったことを示しているのかもしれない。
「フリーデリカ子爵はこのことをご存知か?」
レオンが尋ねた。
老人はうなずいた。
「襲われた直後に使者を送りました。子爵様は直ちに兵を派遣してくださり、我々をここまで避難させてくれました。ですが、武装集団は山深くに逃げ込み、追跡は難航しているとのこと……」
その時、遠くから馬の蹄の音が響いてきた。
一行が警戒する中、東嶺の紋章が刻まれた鎧を着た騎士たちが現れた。
先頭に立つのは、銀の鎧に身を包み、長い金髪を背中になびかせた女性騎士だった。
その顔は若いが、目には経験と知性の光が宿っている。
「グスタフ男爵、そして……レオン様ですか?」
女性騎士が馬から優雅に降り、一礼した。
「私は東嶺子爵フリーデリカの家臣、エリザ・フォン・アイゼンハルトと申します。子爵は諸位の到着を待ちわびておられます。急ぎ城へご案内いたします」
レオンが一歩前に出た。
「ちょうど今、この村の方々から話を聞いているところです。金歯車と思しき集団の襲撃について」
エリザの表情が曇った。
「はい。残念ながら、これは最近増加している事件の11つに過ぎません。東嶺ではここ3ヶ月、6つの村や工房が同様の襲撃を受けています。奪われるのは常に、古い技術書や、伝承を知る古老、特定の鉱石や道具類です」
アーサーが杖を握りしめた。
「ますます、廃鉱山での出来事と符合するな。殿下は、何か特定の『技術』を完成させようとしている」
グスタフが低く唸った。
「あの『試作機』か……」
エリザの目が鋭くなった。
「試作機……? それは何ですか? 子爵も、最近になって『機械仕掛けの怪物』の目撃情報を集めておられます」
レオンはエリザを見つめた。
「我々には、子爵と直接話すべき重大な情報がある。急ぎましょう」




