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勇者が勇者パーティから追放されました ー王国の勇者から民衆の勇者として旅をしますー  作者: ぶっくん


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第56話 機械の中の人間性

レオンは剣を構えるが、その時、「試作機」の目が、かすかに動いた。


まるで、わずかな意識が残っているかのように。


そして、声ではない、機械的な音声が、その「もの」の口から漏れる。


「……殺……せ……」


レオンの手が震える。


「お願い……です……」


その言葉は、完全に人間のものだった。


背後から、仮面の指揮官の声が響く。


「おお、興味深い! 末期段階でも自我の残滓(ざんし)を示した! これは貴重なデータだ!」


レオンの背後で、ガレスの怒号と金属の軋む音が混ざり合う。

アーサーの詠唱が空中に魔法陣を描き、キースの矢が風を切る。


採掘場は、人間性を賭けた戦いの坩堝と化していた。


レオンはノアの目を見つめ、剣をゆっくりと構えた。


「安らかに」


レオンの声は静かだったが、戦場の喧騒を一瞬にして切り裂く鋭さを持っていた。


青白い火花が散り、「試作機」の体が痙攣する。そして、最後に、かすかなため息のような声が漏れる。


「……あり……がとう……」


金属の体の動きが完全に止まる。

同時に、周囲をうごめく無数の改造兵士たちの動きが、一瞬、乱れた。まるで糸を切られた人形のように。


「どうやら、こいつが中継点だったらしい」

ガレスが唸るように言った。


「お前! 貴重な実験体を!」

仮面の指揮官が怒りの声を上げる。


その瞬間、キースの放った一本の矢が、虚空を切り裂き、指揮官の仮面を貫いた。


仮面が割れ、砕け散る。

その下から現れたのは驚くほど若い、しかし無表情で、瞳に光のない少年の顔だった。


「あなたも……改造されている?」

レオンが問う。


仮面の指揮官……いや、もはや少年と呼ぶべき彼は、

感情のない声で答えた。


「改造? 違う。これは進化だ。感情という弱点から解放された、完全な兵士への進化だ」


彼が胸のボタンを押した。


突然、採掘場の壁が震え始め、新しい坑道が開く。

その奥から、さらに多くの改造兵士たちが現れ始める。


「十分なデータは収集した。ここは放棄する。だが、お前たちの記憶は……消去させてもらう」


少年指揮官が後退し始める。

改造兵士たちが盾となり、レオン民 たちの前に立ちはだかる。


グスタフ男爵が叫ぶ。

「逃がすな!」


だが、その時、採掘場の天井が崩れ始める。

少年指揮官が、坑道の自爆装置を作動させたのだ。


「全員、退避せよ!」

レオンの叫び声が坑道に響く。


レオンたちと男爵の兵士たちは、慌てて来た道を引き返す。

背後で、岩石が崩れ落ちる轟音と、改造兵士たちが押しつぶされる金属音が響く。


坑道の外へ飛び出し、振り返る。廃鉱山の入口が、巨大な塵煙を上げながら完全に崩落していく。


一同は息を切らしながら、その光景を呆然と見つめる。


グスタフ男爵が膝をつき、拳を地面に叩きつける。

「くそっ……逃がした!」


レオンが男爵の肩に手を置く。

「ですが、彼らが何をしようとしているか、わかりました。クラウス殿下の計画の一端が」


アーサーが杖をつきながら、重い口調で言う。

「あの技術……もし完成すれば、王国はおろか、世界全体が危険にさらされる。感情のない兵士たちの軍隊が、意思を持たぬまま殺戮を繰り返す」


キースが矢筒を揺らし、低い声で付け加えた。

「あの少年……彼の目には、何も映っていなかった。まるで、最初から魂が入っていない器のようだ」


レオンは崩れ落ちた坑道の入口を見つめながら、拳を握りしめた。


あの「試作機」……ノアが最後に発した感謝の言葉。

機械の中に閉じ込められた人間の魂の叫びを、彼は決して忘れない。


「次は絶対に止める」

レオンは静かに誓った。



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