第54話 プロジェクト:アンデッド・ソルジャー
その時、採掘場の反対側から、黒い鎧をまとった金歯車傭兵団が現れた。
その先頭に立つ指揮官は、顔の右半分を無機質な金属仮面で覆った男だった。
仮面の隙間からの目に感情はない。
「グスタフ男爵、ようこそ」
仮面の男の声は、不自然に平坦で、感情の揺らぎがない。
「クラウス殿下は、あなたの協力を最後まで期待していた。辺境の雄であるあなたの武力と、この地の知識があれば、『プロジェクト:アンデッド・ソルジャー』は完成していた」
男爵が怒りの声を張り上げる。
「この蛮行をやめろ! お前たちが冒しているのは、人間の領域ではない!」
「人間?」
指揮官が冷たく笑った。仮面が歪む音だけが響く。
「新しい時代には、新しい神が必要だ。感情に左右されず、疲れを知らず、完全に忠実な兵士たちが王国を守る時代が来る」
彼が手を挙げると、周囲の影から、10体以上の「改造兵士」が現れた。
その動きは滑らかだが不自然で、目には生気がない。
「残念だが、ここでお前たちを『サンプル』とさせてもらう。特に……」
指揮官の仮面の隙間からの視線がレオンに向く。
「かつての王国の勇者。あなたの身体データは、極めて貴重だ」
ガレスが大斧を振りかざした。
「気色の悪い人形共が……かかって来い!」
アーサーが杖を地面に立てる。
「魔導回路なら、エネルギー流を乱せばいい。だが中央の彼には届かない。」
キースは無言で弓に矢を構えた。
彼の片目は、改造兵士たちの動きの「癖」をすでに見抜こうとしている。
レオンは剣を抜きながら、グスタフ男爵に問うた。
「あの兵士は……まだ助けられますか?」
男爵の顔が歪む。
悔恨と怒りが入り混じった表情だ。
「レオン……」
男爵の声はかすれていた。
「ノアは……もう戻れん。だが、少なくとも苦しみから解放してやらねばならん」
男爵は拳を握りしめた。
「これが……かつての部下にできる最後の務めだ」




