第50話 機造兵(ギーベンツォイク)との戦い
レオンは剣を握りしめた。
すべてが繋がり始めていた。
財務卿の陰謀、焼け跡の村、歯車の紋章、そしてこの……人間とも機械ともつかない兵士たち。
「ガレス、アーサー、キース!」
レオンが叫んだ。
「奴らを止めろ! 生きて捕らえ、真実を聞き出せ!」
「任せとけ!」
ガレスが咆哮し、大斧を振りかぶった。
アーサーは杖を高く掲げ、坑道内に防御の結界を展開し始めた。
キースは一瞬で狙いを定め、傭兵の指揮官らしき男の足元に矢を放った。
グスタフ男爵は、レオンの横に立ち、「鉄槌」を構えながら、低く呟いた。
「……すまなかったな、勇者。わしの城の地下には、あの『機造兵』の破片と、設計図の一部が隠してある。奴らが探しているものだ。わしは……この技術が世に出るのを恐れ、隠し続けてきた。」
レオンは男爵を見た。
その目には、技術の危険性を知る者としての責任と、隠し続けたことへの後悔が映っていた。
「今は戦いましょう、閣下」
レオンが静かに言った。
「そして後で、すべてを話し合いましょう。民衆を守るためには」
男爵は力強くうなずいた。
「よし! ならば、この鉄槌で、この歪な『おもちゃ』を木端微塵に叩き壊してやる!」
機造兵の群れが、ぎくしゃくと襲いかかってきた。
その動きは速くないが、鎧は分厚く、通常の斬撃では容易に崩せない。
ガレスの大斧が一閃し、一体の機造兵の腕がもぎれ、火花を散らして飛んだ。
しかし、その機造兵は止まらず、反対の腕で殴りかかってくる。
「ちっ、しつこい!」
キースの矢が、機造兵の関節部を正確に貫く。
動きが一瞬鈍る。
「関節が弱点だ!」キースが叫んだ。
アーサーが詠唱を終え、杖の先から氷の結晶が噴き出し、数体の機造兵の足元を凍りつかせた。
「動きを封じよ! レオン!」
「了解!」
レオンが駆け出した。
彼の剣技は、王国随一と言われた「勇者」としてのものだ。
流れるような動きで機造兵の間をすり抜け、剣の峰で関節部を正確に打ち据える。
一撃では壊せなくとも、何度も同じ箇所を叩くことで、軋み音が大きくなり、動きがさらに鈍っていく。
グスタフ男爵の戦槌は、まさに鉄槌そのものだった。一撃で機造兵の胸甲を大きく凹ませ、中の複雑な歯車機構を粉砕する。
「これが、生身の戦いだ! この歪な人形ども!」
傭兵たちが動揺し始めた。
彼らの最大の切り札である機造兵が、思ったほど効果を発揮していない。
「くそ! 撤退だ! 殿下に報告する!」
「遅い!」
レオンが、指揮官の男の前に立ちふさがった。
ガレスとキースが退路を断ち、アーサーの結界が坑道の出口を塞いでいる。




