第49話 廃鉱山へ突入
一行は城塞を後にし、険しい山道を廃鉱山へと向かった。
道中、キースの鋭い観察眼とアーサーの探知魔法が何度も役立った。
巧妙に隠された落とし穴、木の陰に仕掛けられた警報の細い糸、遠方から監視しているらしい気配……金歯車傭兵団は、確かに尋常ならざる訓練を受けた集団だった。
廃鉱山の入口は、山腹にぽっかりと口を開けた暗い穴のように見えた。
崩れかけた支柱が、かつての採掘の歴史を物語っている。
キースが手を挙げて止まった。
彼は地面に蹲り、土を指でつまんだ。
「……最近の足跡。10人以上。中に入ったきり、出てきていない。」
グスタフ男爵が戦槌を構えた。
「我が兵は入口を封鎖し、逃げる鼠を捕らえる。お前たち4人と我で、中へ突入する。問題あるか?」
レオンは仲間たちの顔を見た。
ガレスは獰猛な笑みを浮かべ、アーサーは静かに目を閉じて集中を高め、キースはすでに矢を弦に番えていた。
「問題ありません」
レオンが剣を抜いた。
「民衆勇者、突入します。」
鉱山の内部は、思った以上に広かった。
坑道はいくつにも分岐し、ところどころに掘り残された鉱脈が不気味な光を放っていた。
彼らが慎重に進むと、突然、前方から話し声が聞こえてきた。
「……次の『納品』はいつだ?」
「あと3日後だ。だが、あの『歯車』の調子が悪い。無理やり動かせば、また『暴走』するぞ。」
「ふん、ここの鉱石で補修しろ。殿下は待っておられん。」
殿下? レオンの耳が研ぎ澄まされた。
財務卿のさらに上か?
その時、アーサーが杖を強く握りしめた。
「レオン! 前方、大量の生命反応! しかも……人間だけではない! 何か、歪なものが混じっている!」
アーサーの警告と同時に、坑道の奥から、重く不規則な金属音が響いてきた。
カチャ……ガシャ……カチャ……それは、人間の足音とも、機械の音ともつかない、不気味なリズムだった。
グスタフ男爵の顔が強張った。
「……来たな。金歯車の『駒』だ。」
次の瞬間、坑道の曲がり角から、それは現れた。
人間の兵士たち――金歯車からの傭兵たちだ。
しかし、彼らの前に立つのは、普通の兵士ではなかった。
鎧をまとってはいるが、その動きはぎこちなく、関節からは蒸気のような白い噴気が漏れている。
そして、その顔……ヘルメットの隙間から覗く目は、虚ろで、焦点が合っていない。
まるで、操り人形のようだった。
その「兵士」たちの胸には、焼け跡の村で見たものと同じ、歯車と双頭の鷲の紋章が刻まれていた。
「あれは……」
レオンの声が詰まった。
グスタフ男爵が、怒りと苦渋に満ちた声で言った。
「……わしが、まだ語らなかった『真実』の一端だ。金歯車傭兵団は、単なる傭兵ではない。奴らは、生身の兵士と、この……『機造兵』を混成させている。あの紋章は、王都のとある『工房』のものだ」
機造兵が、ぎくしゃくと剣を構えた。
その背後で、普通の傭兵たちが嘲笑う。
「見ろよ、山の野蛮人どもが、おもちゃに驚いてるぜ!」
「さあ、鉄槌のグスタフ! 今日こそ、お前の城を我々の『工房』にしてみせる!」




