第48話 廃鉱山への道
翌朝、彼らは中庭でグスタフ男爵と落ち合った。
男爵は軽い革鎧をまとい、腰には「鉄槌」の異名の由来となった、短柄だが巨大な頭部を持つ戦槌をぶら下げていた。
その傍らには、10名ほどの屈強な私兵が整列している。
彼らの鎧には、グスタフ家の紋章である山と槌が刻まれていたが、どこか無機質で、一糸乱れぬ規律を感じさせた。
「よく眠れたか?」
男爵の声は、朝の冷気の中で白い息を吐いた。
「我が配下の精鋭20名と、お前たち4人。これで、『金歯車傭兵団』の野郎どもが巣食うという廃鉱山の掃討には十分だろう。」
レオンは一礼した。
「ご準備、感謝します。しかし閣下、一つお聞きしたい。この『金歯車傭兵団』……彼らは、我々が見た廃村の略奪も行ったのでしょうか? そして、なぜ彼らはこの地に?」
男爵の顔が一瞬、曇った。
それは昨日、歯車の杯を見た時の、あの複雑な表情に似ていた。
「……あの村はな」
男爵は低く唸るように言った。
「金歯車の仕業ではない。時期が合わぬ。彼らがこの地に現れたのは、つい半月前だ。村が焼かれたのは、それより以前のこと」
男爵は言葉を切ると、遠くの廃鉱山の方角を見つめた。
「金歯車は、ただの野盗ではない。装備が良すぎる。動きが統制されすぎている。誰かが資金を出し、この西山に送り込んだ。お前たちの持つ証拠文書に名前の出る、あの『財務卿』の手先である可能性が高い」
アーサーが杖をつき、一歩前に出た。
「では閣下、村を焼いたのは誰か? そして、あの紋章は?」
男爵は深く息を吸い込み、そして吐いた。その吐息には、重い決意が込められていた。
「……それは、今回の掃討が終わり、お前たちが東嶺のフリーデリカのもとへ向かう時に話そう。1つずつ片付けていくのがよい。今は、目の前の敵に集中せよ。」
レオンは男爵の目をじっと見た。
そこには、嘘はなかった。
しかし、完全な真実もなかった。
彼はうなずいた。
「わかりました。では、まず金歯車傭兵団を」
「よし」
男爵が戦槌を肩に担いだ。
「鉱山道は複雑で、罠も多い。猟師よ、お前が先導し、道を探れ。魔術師は、隠れた気配を探知してくれ。戦士は我と共に前衛を務めよ。そして勇者……お前は、全体を見渡し、指揮を執れ。我は我の兵を率いるが、お前たちの動きには干渉しない」
キースは微かにうなずき、弓を手にし、アーサーは杖の先に微かな魔力を灯した。
ガレスは大斧を握りしめ、男爵の横に立った。
レオンは革の筒を胸の内ポケットにしまい、代わりに剣の柄に手をかけた。




