表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が勇者パーティから追放されました ー王国の勇者から民衆の勇者として旅をしますー  作者: ぶっくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/87

第45話 黄金の歯車

レオンは革の筒を開け、中の文書を取り出した。

その動きと同時に、グスタフ男爵の目が、ほんの一瞬、暖炉の脇の机に置かれた、黄金の歯車の模様が刻まれた杯に移った。


その視線には、複雑な感情。

怒り、諦め、そしてある種の悲哀が混ざっているようにレオンには見えた。

「これが、財務卿が北境の救援物資と税金を横領し、私腹を肥やしている証拠です」


レオンが文書を差し出した。

「中には、西山の鉱山から上がる収益の不当な割合が、王都の彼の私邸の建設費として流用されている記録もあります」


男爵は文書を受け取ると、ざっと目を通した。

彼の眉が次第に険しく寄せられていく。

広間の空気がさらに重くなるのを感じた。


「……ふん。この数字は、わしが王都に報告した額と一致している」

男爵が低く唸った。


「では、財務卿の悪事を暴くために、なぜわしの城へ? ヴァイダー卿なら、直接王に奏上すればよいではないか。」


その時、これまで静観していたアーサーが一歩前に出た。 

「閣下、お尋ねします。我々が来る途中、廃墟と化した山村を通りました。焼け跡には、双頭の鷲の片翼と歯車の紋章が残されていました。これは、いったい何者の所業でしょうか?」


男爵の顔が一瞬、硬直した。

彼の拳が、机の上で微かに震えた。

「……その村の件か」

彼の声には、抑えきれない怒りの響きが込められていた。


「あれは、『金歯車の傭兵団』だ。財務卿が密かに養っている私兵だ。表向きは、『山賊掃討』を名目にこの地に派遣されていた」


ガレスが低くうなった。

「ならば、なぜ閣下はそれを許した? この土地の守護者として、民を見殺しにしたのか?」


「許した?」

男爵の声が突然、雷鳴のように広間に響き渡った。

彼は机を拳で叩き、その上の杯が揺れた。


「わしが許さぬからこそ、あの村は焼かれたのだ! 財務卿からの『協力の申し出』を、わしが拒絶した報復だ! 金歯車どもは、わしに警告するために、最も遠く、最もわしの目が届きにくい村を襲ったのだ!」


広間が水を打ったように静まり返った。

暖炉の炎がぱちりと音を立て、男爵の苦渋に満ちた横顔を照らした。


キースが、静かに口を開いた。

彼の片目が、男爵の表情の微細な変化を捉えている。「では、城門前で聞いた噂は本当ですな。『外敵からは確かに守ってくれる』と。その『外敵』とは、王国の財務卿とその私兵だったのですか」


男爵は深く息を吸い込み、ゆっくりと座り直した。

その姿には、剛毅な武将というより、重すぎる責任に押し潰されそうな領主の疲労が見えた。


「財務卿は、この西山の鉱脈を、完全に手中に収めたいのだ。わしが彼の『提案』に従い、鉱山の利権の大半を差し出せば、村は焼かれず、税も軽減されると言ってきた。だが、それはこの土地の民を、永遠に彼の奴隷とすることを意味する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ