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勇者が勇者パーティから追放されました ー王国の勇者から民衆の勇者として旅をしますー  作者: ぶっくん


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第44話 西山男爵グスタフと対面

そしてついに、彼らは西山男爵グスタフの城塞を眼前にした。


それは、切り立った岩山の頂を削って築かれた、

機能美と威圧感が同居する要塞だった。

王都の優美な城とは異なり、一切の無駄を排した、戦いのための建造物だ。


城門前では、がっしりとした鎧をまとった衛兵たちが、鋭い目つきで通行人を監視している。


レオンは深く息を吸い込んだ。

ここが、真実の証拠を盾に、言葉と信念の刃を試す場だ。彼は仲間たちに視線を送った。


ガレスは無言でうなずき、アーサーは静かに目を閉じて集中を高め、キースは城壁の上の衛兵の配置を一瞥で記憶していた。


「我々は、ヴァイダー卿の使者であり、そして……民衆の声を運ぶ者だ」

レオンが低くつぶや呟き、革の筒を胸にしっかりと押し当てた。


彼は一歩前に踏み出し、鉄の門に向かって声を張り上げた。

「我らは、ヴァイダー卿の命を受け、西山男爵グスタフ閣下に謁見を願う者である! 王国の未来に関わる重大な証拠を携えて参った!」


門の上の衛兵が動き、重厚な鉄の門が軋む音が、山峡に響き渡った。


一瞬の静寂が流れた。


門の上の衛兵が動き、重厚な鉄の門が軋む音が、山峡に響き渡った。


その音は、古びた扉が開く音というよりは、巨大な獣が目を覚ますような不気味な響きだった。


門がゆっくりと開いていく隙間から、城内の様子がのぞいた。

そこには、整然と並んだ兵士たちの列と、その列の先に立つ、背の高い、髭面の男の姿があった。


男は華美な礼服など着ておらず、実用的な革鎧に身を包み、腰には戦槌せんついを下げている。


その目は、山岳地帯を駆ける鷲のように鋭く、レオン一行を一瞥しただけで、彼らが戦士、魔術師、猟師、そしてリーダーであることを見抜いたようだった。


門が全開になり、男爵の副官と思われる人物が近づいてきた。

「グスタフ閣下がお目通りを許された。武器はここで預かれ。ただし」


副官の目が革の筒に止まった。


「その『証拠』は、お持ちいただいて結構」


レオンはうなずき、仲間たちと視線を交わした。

ガレスはしぶしぶ大斧と盾を外し、アーサーは杖を地面に立てたままにし、キースは短剣と弓を静かに差し出した。


4人は、衛兵たちに囲まれるようにして城内へと導かれた。

城塞の中は、外観同様に実用的で無駄がなく、壁には戦利品としての武器や、撃退した野盗団の旗が飾られていた。


しかし、その中に、一つだけ異質なものが目に付いた。


財務卿の家紋である黄金の歯車をあしらった飾り盾が、他の戦利品とは少し離れた場所に、丁寧に拭き込まれてかけられていた。


アーサーがレオンの耳元で囁いた。

「面白い。敵の紋章を戦利品として誇示するのは普通だが、あれは清められ、ほぼ敬意をもって扱われているように見える」


キースが微かにうなずいた。

彼の片目が、城内の兵士たちの様子を細かく観察している。

彼らは規律正しいが、どこか疲れた色を浮かべている。

最近、何度も出動しているのだろう。


やがて、彼らは広間へと通された。

天井が高く、暖炉の火がゆらめくその部屋の奥に、先ほど門前で見た髭面の男、西山男爵グスタフが、簡素な玉座のような椅子に腰かけていた。


彼の傍らには、先ほどの飾り盾と同じ、黄金の歯車の紋章が刻まれた杯が置かれている。


グスタフ男爵は、ゆっくりと立ち上がった。

その身長はガレスにも引けを取らず、長年の戦いでがっしりとした肩幅は、彼が「鉄槌」の異名にふさわしい武力の持ち主であることを物語っていた。


「ヴァイダー卿の使者だと?」

男爵の声は低く、岩を転がすような響きだった。


「その男なら覚えている。王都で数少ない、筋の通った貴族だ。だが、お前たちは……」 


彼の鋭い目が、レオンの顔をじっと見つめた。

「……お前は、レオンではないか。かつての『王国の勇者』が、なぜ追放者の身で、わしの城に?」


レオンは動じず、男爵の目を真っ直ぐに見返した。

「私はもはや、王国の勇者ではありません。ただの民衆勇者です。そして、閣下の元には、王国を蝕む真の敵についての証拠と、この西山の地で起きていることについての疑問を持って参りました。」 


レオンは革の筒を開け、中の文書を取り出した。

その動きと同時に、グスタフ男爵の目が、ほんの一瞬、暖炉の炎に揺れる黄金の歯車の杯に移った。

その視線には、複雑な感情。

怒り、諦め、そしてある種の悲哀が混ざっているようにレオンには見えた。

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