第41話 真実の重み
広間で、ヴァイダー卿は証拠書類を1枚1枚丁寧に検証した。
彼の表情は次第に険しくなり、最後には怒りに震えていた。
老いた手が書類を握りしめ、指の関節が白くなった。
「これが王国の現実か……財務卿め、ここまで腐敗していたとは」
ヴァイダー卿が書類を机に叩きつけた音が、石造りの広間に響き渡った。
「私は長年、辺境の守りを任され、王国のため尽くしてきた。北の蛮族の侵攻から領民を守り、凶暴な魔物から土地を守ってきた。しかし、もしこれが真実なら、私が守ってきたものは腐敗そのものだったことになる」
彼の声には、深い失望と怒りが込められていた。
レオンが再び前に進み出た。
「伯爵閣下、我々は民衆のために正しい王国を築き直したいのです。財務卿の不正を暴き、真実を王国中に知らしめたい」
ヴァイダー卿は4人をじっと見つめた。
その視線は鋭く、彼らの心の底まで見透かすようだった。
「汝らの勇気と信念は本物のようだ。では、どうするつもりだ?」
ガレスが重々しく口を開いた。
「まずはこれらの証拠を他の領主たちにも示し、財務卿の不正を暴く必要があります。しかし、それだけでは不十分です。根本から王国を変えるためには、民衆の支持が必要です」
アーサーがうなずき、杖を軽く床に叩いた。
「そして、民衆に真実を伝えるためには、財務卿の情報統制を打破しなければなりません。彼はすでに王国中の情報網を掌握しています」
キースが付け加えた。
「そのためには、まず財務卿の息のかかっていない地域から始めるべきです。辺境の領主たちは、中央の腐敗に最も憤りを感じているはずです。我々が最初に訪れた村でも、人々はすでに中央の状況に疑念を抱いていました」
ヴァイダー卿は深く考え込んだ。
広間の暖炉の火が彼の顔を照らし、影を作り出していた。
長い沈黙の後、彼はゆっくりとうなずいた。
「よかろう」
四人が息を飲んだ。
「私は汝らを支持する。ただし、一つ条件がある」
レオンが緊張して聞き入った。
「私も共に戦わせてくれ」
四人は驚いて伯爵を見た。
「この年老いた骨に、最後の炎を灯させてほしい」
ヴァイダー卿の目には、長年抑えられてきた怒りと、新たな決意の光が宿っていた。
レオンの目に涙が浮かんだ。これほどの人物の支持を得られるとは思っていなかった。
「伯爵閣下……」
ヴァイダー卿が厳しい表情で言った。
「笑うな。これは温情ではない。王国への忠誠だ——真の王国へのな」
ヴァイダー卿が大きな地図を広げ、指でなぞりながら言った。
「まずは隣接する三つの辺境領から始めよう。北境侯ルドルフ、西山男爵グスタフ、東嶺子爵フリーデリ達を私は彼らを説得する。彼らもまた、中央の腐敗にうんざりしているはずだ」
アーサーがうなずいた。
「3人とも、かつては王国のために戦った勇士たちです。もし彼らが加われば、我々の勢力は大きく広がります」
キースが地図を詳しく見ながら言った。
「この三領地をつなぐ街道には、財務卿の監視が比較的緩いです。魔物の脅威はありますが、それは逆に我々の隠れ蓑にもなります」
ガレスが拳を握りしめた。
「では、早速準備を始めましょう。財務卿が次の手を打つ前に動かなければ」
レオンは4人いや、今や5人を見渡した。
傷ついた戦士、老いた魔術師、片目の猟師、そして辺境の老伯爵。
一見ばらばらなこの集団には、確かな信念があった。真実は必ず光を見出すという信念が。




