第35話 オーガとの戦いと扉の開放
レオンは剣を構え、ヴィドフルと彼の魔物を睨みつけた。
「ガレス、右翼を。キース、左の警備兵を抑えてくれ」
レオンの声は冷静だった。
矢を番えていた。
「警備兵は12人。うち4人は弓兵。最初に始末する」
背後では、アーサーの詠唱が最終段階に入り、鉄の扉の封印が微かに震え始めている。
労働者たちが、ガレスとキースに導かれ、かすかな息遣いで集まり始めていた。
彼らの目には、長く閉ざされていた希望の光が、かすかに灯り始めていた。
ヴィドフルが嘲笑った。
「労働者まで戦力に数えるのか?哀れなものだ。彼らは鉱石を掘る道具に過ぎない。道具が意志を持つなど、笑止千万」
「道具じゃない」
レオンの声が低く響く。
「人間だ。お前たちが踏みにじってきた、この王国の民だ」
オーガが咆哮を上げ、巨斧を振りかぶった。
その動きだけで、坑道の壁から粉塵が舞い落ちる。
「行け」
ヴィドフルの合図と同時に、オーガが突進する。
レオンは踏み込んだ。
彼は巨斧の軌道を読み、間一髪でかわす。
鎧の表面を斧の刃がかすめ、火花を散らす。
「ガレス!」
「承知!」
ガレスが盾でオーガの脇腹を強打する。
オーガがわずかにバランスを崩す。
その瞬間、キースの矢が飛ぶ。
1本、また1本。矢は警備兵の弓兵の腕を、次に足を貫く。狙いは殺傷ではなく、無力化。
「扉が……開く!」
アーサーの叫び。
鉄の扉が軋みながら開き始める。
その向こうには、魔晶石が無造作に積み上げられた広間が見える。
そして、壁に鎖で繋がれた、憔悴しきった数人の労働者たち。
彼らは、特別に「選ばれた」者たちだった。
魔力を直接鉱石から抽出する生贄。
労働者たちの間に動揺が走る。
「あれは……リナの兄さんだ!」
「マルコが……生きていた!」
ヴィドフルの表情が歪む。
「ばかな……封印は宮廷魔術師クラスの者でなければ解けないはず……」
アーサーが疲れた笑みを浮かべる。
「かつての宮廷魔術師が、今ここにいる」




