第33話 ウォーグとの戦い
彼の言葉が終わらないうちに、突然、闇から低いうなり声が響いた。
鎖につながれた2頭の影が、坑道の角から現れた。
それは、ウォーグ(人狼)のようだが、どこか歪んでいる。
目は狂気に染まり、よだれを垂らし、肋骨が浮き出た痩せこけた体に、無理やり鎧のような金属板が打ち付けられていた。
魔物でありながら、明らかに「飼い慣らされ」、「改造され」ていた。
「警備獣だ!」
キースが叫び、弓を引き絞った。
しかし、その矢が放たれる前に、改造ウォーグの1頭が咆哮をあげて突進してきた。
その動きは、飢えと苦痛で狂っているが、尋常ではない速さだった。
ガレスが盾を前に突き出し、衝撃を受け止めた。
金属と爪の軋む音が坑道に響き渡る。
彼の足は雪の上を後ろに滑ったが、かつてのエリート騎士の頑強な体勢は崩れなかった。
「こいつら……ただの魔物じゃない!人為的に戦闘能力を増強されている!」
レオンがガレスの横腹をすり抜け、剣を閃かせた。
剣先がウォーグの肩をかすめ、黒い血が飛び散る。
しかし、怪物は痛みすら感じていないかのように、
さらに狂暴に襲いかかる。
アーサーが杖を高く掲げた。
「我が手に、静寂の氷を!」
彼の詠唱は短く、力強い。
宮廷魔術師時代の長大な詠唱とは異なる、実戦で鍛え上げられた即応呪文だ。
杖の先から吹き出した冷気が、もう1頭のウォーグの足元を覆い、瞬間的に氷結させた。
キースの放った矢が、その隙を突いて、最初のウォーグの片目に深く突き刺さった。
怪物が悲鳴をあげてよろめく。その瞬間、レオンとガレスが同時に動いた。
レオンの剣が喉元を、ガレスの盾の縁が側頭部を打ち据えた。
鈍い音と共に、怪物は崩れ落ちた。
もう1頭のウォーグは、足の氷を砕いて這い出そうとしていたが、アーサーの二の矢となる氷の槍がその胸を貫いた。




