第31話 鉱山の闇
老魔術師アーサーは、杖の先で地面に複雑な模様を描きながら、低く唸るような声で言った。
「鉱山の構造は、我々が潜入した上層部よりも複雑だ。古い坑道と、新しく掘られた魔術的区画が入り組んでいる。ここにあるのは、単なるレアメタル鉱山ではない」
彼が描いたのは、鉱山の推定図だった。
そこには、労働区域の他に、魔術的に隔離された広大な空間が示されていた。
片目の猟師キースが、洞窟の入口から吹き込む風の音に耳を傾けながら言う。
「魔物の気配がする。だが、普通の魔物ではない……檻の中に閉じ込められ、飢えさせられたような、歪んだ気配だ。あの鉱山で『警備』として使われているに違いない」
ガレスが、傷だらけの鎧の胸当てを叩き、冷たい金属音を響かせた。
「かつての騎士団でも、囚人を使った危険な作業はあった。だが、あの規模は違う。まるで……」
怒りの色がよぎる。
「まるで、民衆を消耗品のように扱っている」
う
外の風の音が、突然、うなりをあげた。
嵐が頂点に達したのだ。
キースの口元が、わずかに緩んだ。
「今だ。これほどの嵐なら、どんなに優れた見張りも、その目と耳は半ば潰されている」
4人は互いにうなずく。
「行こう」
彼の声は、嵐の咆哮にかき消されそうだったが、確かに仲間たちに届いた。
彼らは洞窟を出た。
吹きさらしの風と氷片は、まるで無数の針のように肌を刺した。
視界は真っ白に塗りつぶされ、数歩先さえ見通せない。
しかし、キースが先頭に立つ。
彼は目ではなく、風のわずかな変化、足元の雪の積もり方、そしてあの「歪んだ魔物の気配」を羅針盤として進んだ。
アーサーは、杖をかすかに振る。
派手な光や音を立てる魔術ではなく、彼ら4人の周りの空気の流れをわずかに整え、足跡がすぐに消えるように細雪を操る、極めて控えめな支援魔法だ。
かつて宮廷で披露した華麗な炎や雷の魔術とは対極の、実用的で地味な技であった。




