第25話 言葉の力
役人リーダーが剣を抜きながら言った。
「お前たちを逮捕する!領主への反抗罪だ!」
その瞬間、レオンは手を挙げて仲間たちを制止した。
そして驚くべきことに、腰の剣にさえ手をかけなかった。
「私たちは戦うために来たのではない」
レオンの声は広場に響き渡った。
「話し合うために来た。あなたたちも命令に従っているだけだろう。だが考えてみてほしい。飢えた民から奪うことが、ほんとうに領主のためになるのか?村が滅びれば、税の収入も永遠に失われる」
役人たちは動揺した。1人が小声で呟いた。
「でも……命令に逆らえば、我々が罰せられる」
「では、別の方法を提案しよう」
レオンは地図を取り出した。
「この地域には放置された鉱山がある。村人たちとともに再開すれば、税を払える収入が生まれる。私たちが最初の投資と保護を提供する」
農民たちがざわめいた。希望が広場に広がり始めた。
役人リーダーは悩んだ表情を浮かべ、剣を鞘に収めた。
「……領主に報告する。だが、それまでの間、税の徴収は停止する」
その夜、4人は村の長屋に招かれた。
小さな食事を分け合いながら、レオンは仲間たちに語りかけた。
「今日のことをどう思う?」
ガレスが大きくうなずいた。
「かつての俺なら、役人たちを叩きのめしていただろう。だが……話し合いで解決した方が、長い目で見れば村のためになる」
アーサーが知恵深い目を細めた。
「力には二種類ある。剣の力と、言葉の力だ。真の勇者は両方を使い分ける者だ」
キースは片目で炎を見つめながら言った。
「俺はこれまで、悪を倒すことだけが正義だと思っていた。でも……悪を善に変えることこそ、もっと大きな勝利かもしれない」
レオンはほほえんだ。
彼らは確かに成長していた。
彼自身も成長していた。
かつての勇者パーティーでは、すべての問題を力で解決していた。
魔王の軍勢を倒し、古代の怪物を討伐し、魔法の遺物を奪還する。
だが民の苦しみ、飢え、貧困、不正それらは剣では解決できない問題だった。
「明日から鉱山の調査を始めよう」
レオンは言った。
「そしてベルガン男爵との交渉の準備だ」




