第24話 北の寒村フロストホロウ
「次はどこだ?」
今度はキースが珍しく口を開いた。
レオンは地図を広げ、指でなぞりながら言った。
「北の寒村フロストホロウで、領主が過酷な税を取り立て、民が飢えているという情報がある」
「北の寒村フロストホロウまで3日か」
ガレスが傷だらけの胸当てを叩きながら言った。
アーサーが古びた杖で地面の小石を転がしながら、低い声で呟いた。
「ベルガン男爵か……あの男の噂は聞いたことがある。領地経営に失敗し、不足分を民から搾り取る愚か者だ」
キースは片目の視界で周囲を見渡し、弓の弦を軽く引いて張りを確かめた。
「税を取り立てる役人たちは武装している。先週、この道を通った商人から聞いた。反抗する者は牢屋に入れられるか、更に悪ければ……」
レオンはうなずき、地図を巻きながら言った。
「だからこそ慎重に行動しなければならない。我々は正義の執行者ではない。民の声を代弁する者だ」
2日目の夕暮れ、4人は寒村の外れにたどり着いた。
村は名前の通り、冷たい風が吹き抜ける貧しい集落だった。
茅葺き屋根の家々は傾き、畑は荒れ果て、人々の目には疲労と絶望が刻まれていた。
村の入り口で、痩せた老人が薪を束ねていた。
レオンが近づき、声をかけると、老人は怯えたように後ずさった。
「心配しないでください」
レオンは腰をかがめて、視線を老人の高さに合わせた。
「私たちは旅人です。この村のことを聞きました……助けが必要なのではないかと」
老人の目に一瞬の希望が灯り、すぐに消えた。
「役人たちが見つけたら、あなた方も危険にさらされます。去った方がいい」
その時、村の中心から怒鳴り声が聞こえてきた。
4人は視線を交わし、慎重に声の方向へ向かった。
広場では、鎧を着た3人の役人が農民たちを囲んでいた。
中心に立つ痩せた男が、震える声で訴えていた。
「もう納めるものはありません!最後の小麦も、最後の鶏も取り上げられました。子供たちが飢えています!」
役人のリーダー格の男が冷笑した。
「領主様の税は聖なる義務だ。払えないなら、お前の土地を没収する。それでも足りなければ……」
「それでも足りなければどうする?」
全員が振り返った。
レオンが広場に立ち、平静な表情で役人たちを見つめていた。
役人たちは一瞬驚いたが、レオンの質素な装いを見てすぐに傲慢な笑みを浮かべた。
「余計な口出しをするな、旅人。これは領主ベルガン男爵の公務だ」
レオンは一歩前に出た。
「公務とは民から最後の食料を奪うことか?子供を飢えさせることか?」
役人たちの手が武器に伸びた。
ガレスがレオンの横に立ち、傷だらけの鎧が夕日に照らされた。
アーサーは杖を握りしめ、低く呟き始めた。
キースは影に身を潜め、矢を弦に番えた。
緊張が一気に高まった。




