第108話 キースと5人の偵察隊
城壁の影を、キースが猫のように滑るように移動していた。
片目の視界は、残った目が並外れて鋭いことで補われ、暗闇の中でも機神兵の配置を見逃さない。
彼の後ろには、5人の偵察隊が続く。
全員が息を潜め、足音を消す訓練を受けた者たちだ。
「……10体1組で、4組が城壁を巡回。門の内側には、少なくとも30体が待機しているようだ」
キースが手信号で伝える。
指先のわずかな動きが、距離と数を暗号のように伝えた。
彼らの目的は、機神兵の集積場所、あるいは制御装置のありかを探ることだ。
「あの塔だ」
キースが、城壁から少し離れた、窓の少ない石造りの塔を指さした。
かつては時計塔だったが、今は針も音も止まり、不気味な静寂に包まれている。
「兵士の出入りはないが、魔力的な『脈動』が感じられる。あそこに何かある」
偵察隊は、排水口や石の凹凸を利用して、塔へと近づいていった。
キースの心には、かつて王国の猟師として、この城の裏道を何度も通った記憶がよみがえった。
その知識が今、役に立っている。
塔の基部にたどり着くと、彼は手を挙げて停止を命じた。
石壁に耳を当てると、かすかな機械音が聞こえる。歯車の回転か、それとも蒸気の噴出か。
夜明け前の闇が帝都を覆う中、3つの部隊がそれぞれの使命に向かって動き出した。
廃墟と化した旧市街の井戸から地下へ消えるアーサーたちの足音は、湿った石の通路に吸い込まれていった。




